ヒーロになる10秒前
ねえねぇ白沢さん〜!
教室に甲高い女子の声が響いた。
……嫌いだ
『やっ…やめっ…て…』
すごく小さな声が、俺の耳には入る
クラスの中心格にいる女子が1番前の窓際の席に座っている
……白沢氷莉亜?
だっけかな…のまわりに集まり、何やらちょっかいをかけている。
『このバック、あそこの店のでしょ?かんわいぃ〜!!私も欲しかったのよ!』
女子達は白沢さんの私物をベタベタと触っている。
彼女は白沢財閥の娘であるらしく、持っているもの、立ち居振る舞いが今の女子高生とはまるで違うものだと
俺の唯一の友達
朱間秋がいっていた。
それはクラス中、いや、学校全体に知れ渡っていた
だいたい、なんでそんな金持ちがこのフツーの高校に在籍してるんだ。
もっと有名な私立校なんて数え切れないほどあるだろう
意味がわからない…
『ふっ、相変わらず、クールだねぇ黎くんは』
お、なんか笑ってきやがったぞ
そうそうこいつが秋。
ぱっと見ジャニーズにでもいそうなイケメンだが、中身が最低最悪。
なんかちょっとオネエ入ってる
『ちょっとー黎くんの無視はないなー怖いよー』
『うっせー、何できた』
『もちろんー!黎くんに会いに来たに決まってるでしょーっ?』
同じ教室だろうが。
ほらきた、ホモっぷり丸出し。
恥ずかしいからマジやめや
『んじゃ、なくて』
急にホモ声からマジメでイケメンな声になった秋を横目で見上げた
少し、いや、かなりかっこいい。
『黎くんもきになる?白沢さんのこと』
『はっ!?なんでだよ、気になるわけ』
『だったら』
その声と同じくらいに
「がっしゃあああああああん!!」
と、机がひっくり返る音が教室中に響き渡る
『だったら、俺たち、ヒーロになろっか!』
秋がおれの腕を引っ張った