隣人
あー。あぢぃ
ついにきました夏休み
殺す気かよと生徒全員が口を合わせて言った、大量の課題をお土産に絶望しつつも、どこか解放感を感じていた
今から荷物を持って氷莉亜の家に行くのだが
初日で既に夏バテかも…
俺がこんな暑い日に外に出たことなんてない。だって俺、ニート生活だもん。いつも、夏休みなんてフツーに外出ない
あ、週に一回なら、図書館と本屋までなら我慢するね
あぢぃいいいい
といってるとぶっ倒れる前に氷莉亜の家に着いた
おっきい門の横にあるインターホンをやや緊張気味に押す
氷莉亜の透き通った声が聞こえた
あー涼しいなぁ
風鈴のようだ
『黎人くん?今開けるね』
ウィーンと音を立てながら開く門を眺めながら額にびっしりとかいた汗を、荷物で塞がれた手をなんとか広げて拭く
初女子の家
この俺が緊張しないわけがない
門が完全に開くと氷莉亜が入っていいと言った
ゆっくり白沢家に足を踏み入れる
わぁ、すっげぇ
噴水だ。花も植えてある。緑鮮やかで外国に来た気分だ
進んで行くと、ドアから氷莉亜の姿が目に映る
あ、氷莉亜私服だ
遠目でもわかる、真っ白のワンピース胸元の花柄のレース
かわいいなぁ…素直にそう思う
にっこり笑ってこっちを見る。
暑いのに、外に出て待ってなくても…
氷莉亜の優しさが感じられた
『お疲れ様です、黎人くん!』
ああ、爽やかだ
汗が一瞬で乾く
ドアを開け中へと進む
『なっ…なんだこれ…!!』
シャンデリアっていうヤツだ!テレビでしか見たことない
きらきら光っていて魅力的だ
ここ玄関だよね?
何もない…ってか、清潔感あふれる感じ、それがまた美しい
まず、荷物を置こうと言う事で、2階の階段を上がる
『持ちますね?これ』
あっ…なんかすまないなぁ
『ありがとう…』
いいえ、と笑う
2階も数え切れないくらいの部屋があった
一番奥の部屋に荷物を置いた
ベッドも俺の寝てたのとは比べ物にならないほどふかふかだ
…こんないい生活して、氷莉亜が心の奥底で悩んでることってなんだろう
階段を下がりリビングへと向かう
『あー!れいくんおっそーい!!』
咲良子と秋がでっかいソファーに腰かけて、テンションがMAXなのが一瞬でわかる
咲良子、声でかい
『凄いい家だよね〜僕たちが住むのにもったいない気がして、ソワソワしちゃうね』
なんかお前が言うと全部変態に聞こえる。なにがソワソワしちゃうねだ。
ゾクゾクだったら氷莉亜がドン引きだぞ
『やっぱり、皆さんがいてくれるので楽しいですね』
氷莉亜が微笑む
そっか、氷莉亜はそばにいてくれる人が欲しかったのかな
一緒に笑える人が欲しかったのかな
彼氏とかじゃなくて、もっともっと特別な…家族?みたいな存在が欲しいんじゃないかな
俺と、変わんない
俺だって仲間とかそういう存在…憧れてた
本でしか見たことないから
友達は本しかいなかった
でも
高校生になったばっかりの
入学式初日
秋との出会い。