痛すぎる思い違い
いやいや、そんなこと教えてしまったらダメだ。
俺にしか頼めないこと。
氷莉亜はそう言ったんだ。
容易く話していいことじゃない。むしろ秘密であるべきだ。
一応、相談ってことで
俺は背中に抱きついた秋から抜け出してチョップを一発かまし
氷莉亜を手招いた
『な、秋達に俺たちがここに住むってこと、秘密…だよな?』
氷莉亜の耳にそっと呟く
秋と咲良子が怪しくこちらを見る。
お前ら、顔が犯罪者だ。こら。
ニヤニヤすんな、気持ち悪い
氷莉亜の口が開く
『私は別に朱間くんや咲良子さんが知っていても構わない』
え?いいの?なんで。衝撃発言だよね?これ?俺勘違いしてる?
『だって、2人とも、好きだから』
ん?それ何?好きってなにさ?話したことないだろうと思われる人をもう好き?もしかして氷莉亜の“好き”は恋愛対象に値するものではない?
うわ。俺恥ずかしい。今一番恥ずかしい
勝手に自分にカノジョができたとか調子乗ってた…!俺、はずい……!!
頭が整理できないまま
氷莉亜は俺から離れ、2人に
『私たち、夏休みからここで一緒に住むことになりました。』
えーーーーーーーー!言っちゃったよ!?言っちゃったよこの子!
驚くのは俺だけではないのに、気づいてはいた
彼らは1分間微動だにせず、口をぽかんと開けて静かに時を過ぎるのを待っていた
『ゔぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁああ』
2人はただ単にこう叫んだ
ま、そうもなるわな
『なっ…ななな何のために??』
もう変顔並み。咲良子が聞く
『私を、変えてくれるって約束をしたんです』
『ふっ…!2人はどんな関係なななななの?』
秋、お前もか、こっちも酷いな
『そうですね…す』
す? 好きな人?
す?すっとこどっこい?
す?酢こんぶ食べたい?
こら下の2人。
それだけは勘弁
もしかしたら、好きな人
って言われたら今日のは告白。
そうじゃなかったらば、それは俺の素晴らしい勘違い
『少なくとも彼氏ではありません』
やっぱりなーーーーー。
『あ、そうなんだ!!だったら、僕達も一緒に住む!!それ、いいとおもわない?』
思うわけーーーーーー
『あー!それいいよ秋!ナイス!ナイスだよ〜!』
え、咲良子、それマジで言ってーーーー
『本当ですか…私、嬉しいです』
嬉しいんだ?いいんだ?
ってか、俺らの関係って一体どうなってんだよ!
友達にすぎなかったのか
あー。なんかちょっと損した気分
しょうがないか…
『わーっ!!なんか楽しくなりそうだねー!って、ちょっと黎くん、どんなかおしてんのー?』
誰のせいだと思ってんだよ
秋が言い出したこと、まさか氷莉亜が賛成するとは…
こいつらが来た時点で警戒するべきだった…!
はぁ…
ふと目を氷莉亜に向けると
ふわっとした笑顔で笑っていた
まあ、氷莉亜がいいなら、いいや
なんだが今年の夏は
妙に騒がしくなりそうだ