-The past of two people.2-
二人は、比較的人通りが少なく、静かな場所に建っている一軒の家屋の前にいた。
孤児院である。
普通のそれより二回りほど大きく、外観からは保育園を連想させられる。その外の広場には十数人の子供たちと遊んでいる5,6人の保母がいた。ある保母に事情を伝えると、他には何も聞かずに、二人を受け入れた。国の公共事業らしく、食費はもちろん、日用品や学費も負担してくれるようだ。豊かな国でなければこうはいかないだろう。
少年は自分の母親の遺産の入った通帳を見せなかった。今は優しそうな保母たちが、目の色を変えるに違いないと思っていたからだった。
その孤児院で少女は他の女の子と打ち解け一緒に遊んでいたりしていたが、少年は他の子供たちと深く付き合うことはなく、一人で本を読むのが常だった。少女はそのことを心配に思っていた。
そしてそのまま少年が友達をつくることもなく、数日後に二人の小学校への入学が決まった。
孤児院から徒歩15分ほどの場所に建てられている、少しばかり古びた学校。そこに転校生として入学することになった。
「私たち同い年だったんですね」
「そうみたいだな」
少年の机に近づいて話しかけてくる少女に対して、素っ気無く答える少年。少女のことではないし、振られた話題に全く興味がないというわけではない。ただ基本的に少しめんどくさがり屋なだけなのだろうと、少女は思っていた。
「ああそういえば、敬語は使わなくてもいいぞ。同い年だからな」
「う、うん」
だから少女は、そんな少年のたまの気遣いが嬉しかった。
「そうそうその感じ。それに今更だけど、俺たちお互いに名前知らないな」
「じゃあ自己紹介しましょう! 私はエンゼル・ローゼンシュヴェルト、です」
「俺は―――」