5、チート野郎のターン~チート野郎、迷子る~
ゴロゴロ。目の前にいる猫は目を細めて、甘えてくる。
相変わらず猫はかわいい。
「外国猫さんはおしゃまさんだね~」
ゴロニャーン。
「ところでここどこ?」
ニャーン?
「うん。君を見つけて追いかけてたら迷子った」
…ニャー…。
「君が悪いんじゃないよ。悪いのはこの国の国王だ。似たような建物ばっか立てやがって。ムカつくね」
ニャ、ニャーン…。
「う~ん。もふもふしつくしたからもう僕は帰るね。トリシャさんと一緒に来たけど…彼女はもう帰ってるよね。ま、そうじゃなかったとしてもいいけど。う~ん。おなか減った~。ということで、じゃ」
ニャーン。
城の位置は町のどこにいたってわかる。ん~、大体あそこらたへんでいいかな~。城の最上階らたへんに覗く豪華そうな窓に狙いを定める。いっせーのーで、ドン!
…ところ変わって再び、ここはどこだ?う~ん、とりあえず窓から…。
「だれ?」
ゆーっくり振り返るあちゃ~…。そこには―噂のハイパー・イン・ザボックスガール、すなわち―第一王女がいた。
「こんにちわ(ニコッ)」
といったと同時に窓から脱出を図る。ガシッ。
見るとそこには、私の腕にがっちりしがみついている姫さんが。
「あなたはだれ?…見慣れない人。この国の人ではないわね。…もしかしてあなた、最近来たっていう魔術師?」
息継ぎもせず、次々に質問を重ねる。何?この子、超必死。
「チガウヨ?ボクハコノシロノヨウセイサンダヨ?(卯月裏声)」
なんか必死すぎでて怖いので煙に巻いてみる。
「私、人恋しすぎて頭が変になったのかしら…」
なんだかものすごく落ち込み始めた。なんか可哀想…。
「もう、なんでもいいわ。名前は何というの?」
そして恥ずかしそうに顔を伏せながら、
「…っと、友達になってほしいの!!」
ふむ、お姫様の秘密の友達か…。面白そうだな…。
とかと考えながら姫さんの腕を振り離す。
「キャッ、まっ待って、行かないで!妖精さん!!」
本気で信じるんだ…。これは本物だな~。窓口に足をかけて、スクッと立つ。そして振り返って姫さんを見下ろす形になる。
「姫さん、じゃなくてお姫サマ。僕は妖精じゃなくて精霊だよ?それから…」
私の姿が少しだけ歪む。髪は銀色、目は金色になり、顔の形も変わった。もちろん本当の姿ではない。姫様はぽかんと見てる。
「男でもないよ。あ、でも男かもしれないね~。姫さんの想像に任せる。それから~、名前はユノっていうんだ~。気軽にユノさんって呼んでいいよ~。姫様がどうしても、いや、お友達になってくれなきゃ死んじゃ…」
「…じゃない」
「う?」
「私の名前は姫様じゃない。ソフィ=ルツ・メルネステルよ」
…ど、どこが名前で、どこが苗字?…ソフィかな?
「…そう、じゃー、ソ、ソフィ?これから僕たちは秘密の友達ということでいい?」
目をキラキラ輝かせながら「うん」と大きく首を振った。
「じゃあ僕、精霊界に帰らなきゃ。んじゃバイバイ」
そういうと窓から飛び降りた。フヮ…ストン。無事着地すると窓を見上げた。姫さんのフワフワの髪が一瞬見えた気がした。う~ん。さて、私の部屋はどこかなぁ~?