2、魔法使いな感じのチート野郎のターン
…眠い。窓から差し込む光が寝起きの私の目に刺さる。
「ヌファァァ~」
自分でも変だと思う欠伸をしながら、今は何時かと考える。と、そのとき、
カチャッ
「失礼いたします。お掃除に参りました」
と、誰かが言いながら入ってきた。…メイドさんか。
ということは12時か…。
この城に来てから、メイドが恐ろしく規則正しいことを知っている。
そんなことを考えているうちにベッドから這い出る。
うぅ、まだ眠い。
自力で着替えるのが面倒なので魔術を使う。もちろん無詠唱だ。
どや。
服がふわっと浮いてくる。あっという間に着替え終えると、扉を開けて客間に出る。
「おはよう。トリシャさん」
すると彼女はクスリと笑い、
「おはようございます、卯月さん」
彼女は、私の目より少し上を見ながら、ニコニコ笑っている。
不思議に思っていると、どうぞと手鏡を手渡してきた。
見ろということなのだろうか。見ると台風の中に突っ込んだみたいなすごい頭になっている私がいた。
「わお。すんごいね」
というと、直してあげますといって、彼女は私を座らせた。
これくらい自分でできるんだけどなぁ、と思っていると、
「ところで卯月さん、さっきからそこにお菓子を持ってニコニコしてるおじさんがいるんですけど…」
…おっさん?…あ。
「ん~そいつはね~、ロムっていう魔物だよ。確か人の意識を読んでその人に取り入りやすい姿になっていろんなことをするんだよ。ふ~ん、君はお菓子が好きなのか~。子供だね」
ガシッ。
心なしか髪をとかす力が強くなった。
「怒った?」
「いえ?」
笑ってるけどなんか怖い…。
「で、なんでそんな魔物がここに?」
「んっとね~、確か昨日召喚して、上下関係思い知らせるためにちょっと色々したら逃げちゃった。てへぺろ?」
「…っててへぺろじゃないですよ!?何してんですか!!てか思い知らせるために何したんですか!?」
「知りたい?」
「いえ…いいです」
「うむ、よろしい。ところで君にけっこう懐いてるね」
「…なんですか?」
「つまるところの…、YOU飼っちゃう!?」
ビシッという私。
「…ッ!?飼いませんよ!?ペット感覚!?」
ビシッとツっ込むトリシャさん。
「だよね」
「そうですよ。はい、できました。今日はちょっと手古摺りました」
「センクス」
「ありがとうです。ところであれ…ロムって言いましたっけ?どうするんですか?」
「飼う気になったの?」
「しつこいです」
「ですよね~。じゃあ…」
フワッと頭に角が生えた和ものな感じの女の子が現れた。
手には紙袋を大量に抱えている。
「なんですか?ご主人様。今買い物中だったんですけど。ていうか今日は…」
「この子の先輩として、今から教育係に君を任命する!!」
「無視!?」
「………。」
「ん、何トリシャさん?」
「いえ、なんでも…。ただ、大変そうだなと…」
「…誰が?」
「…お仕事に戻りますね(ニコッ)」
そういうとトリシャさんはすたこら行ってしまった。
…不思議な人だなぁ~。