14、ラブコメっぽっくなった侍女さんのターン
「トリシャとの関係は?」
その言葉に思わず牛乳を吹き出してしまいそうになる。いや、手元に牛乳がないので吹こうにも吹けないのだが。
どうしよう、暴走しかけてる。こうなった親父さんはいつも以上に面倒なのだ。卯月さん、どうか当たり障りない返答を!
「えーっと、二人で城下を散策する程度の関係ですよ~」
少しの間をおいての卯月さんの返答は、私の期待を大きく裏切った。ほかに言い方はあっただろう。絶対勘違いされる。
「へぇ、デート…交際中か。求婚か。…オレのトリシャに」
案の定だ。しかもかなり飛躍している。オレの、ってどういうことだ。いや、ある種そうだけど違う。そして姫様顔を赤らめるな!
…そろそろ止めないといけない。恥ずかしい。
「ちょ…」
「どこの馬の骨かもわからない奴に、オレのトリシャはやらない」
「アキラくん!?」
人前なので猫をかぶったまま終わらせたかったが、2回目のオレの発言につい声を荒げてしまった。
そして、目を丸くする卯月さんと身をよじらせる姫様を見て、自分の失態に気が付く。
何自分で被害拡大しているんだ私。アキラくんって…。いつも家でそう呼ぶように言われて慣れてるからって、人前でアキラ君って…。更に誤解を招く!
「そういうんじゃなくて、この人はむぐっ」
喋ってる途中にもかかわらず口をふさがれる。モゴモゴする私の肩に手を置くと、親父さんは最後に爆弾を落とした。
「じゃあ、もう家にかえろっか」
ちょ、それ同じ家に住んでいるみたいじゃないか。住んでるけれども。
そう思っているうちに、いるの間にやら私は親父さんと二人で我が家の前に立っていた。思わずふらついた私をやすやすと支え、親父さんは楽しそうに笑った。
「これでしばらく悪い虫はつかないよね」
…ワザとかお前!
きっとすごい勘違いされてる。
「アキラ君」は親父さんの趣味。あれ、変態だね?
姫様の場合「きゃーっ!!」
卵月の場合「へー、意外」
王様…空気だったね。