11、浮世離れしている姫のターン
(とっ、とうとう言ってしまいました~っ!)
目の前の、恐らくはユノさんと知り合いのトリシャさんは、きょとんとして、「…ユノさん?」と答えてくれた。
…あれ、ユノさんのこと知らないのでしょうか…?
……しばらくの沈黙の中、最初に口を開いたトリシャさん。
「…あの、ユノさんって、どちら様でしょうか…?この城の物のことですか…?」
「えっ!?ユノさんって、このお城に住んでいる精霊さんなんですよ!?あっ、もしかして、神隠しにあったときにユノさんの記憶さえもなくなってしまったとか!!」
「え、え~と…、私は、精霊なんて…はっ!」
トリシャさんは何かを思い出したかのように目を大きく開き、そして、放心しているかのように、天井を見つめた後、私の顔をまじまじと見てきた。
「……?どうかしたんですか?」
トリシャさんはとても緊張しているようだ。
「あの、その『お城に住む精霊』の外見は?」
「えっと…、それははっきりとは決められないんですけど…。よく変わるんですよっ!男の人か女の人かもわからないんですよっ!出会ったときは、黒髪なのに、銀色に変わっちゃうんですよっ!!」
言うだけ言って、気づいた…。トリシャさんが少しはにかんだように笑っていることを…。
「ご…っ、ごめんなさい!少し、喋り過ぎですよね…」
「い…、いえ、少し確信ができたような気がして…」
逆に気が引けてしまっているトリシャさん…。
「あの…、私こんなににぎやかに誰かとしゃべったことないんです…。ユノさんも、すぐにどこかに行っちゃいましたし…。だから、ついついうれしくなっちゃいました…。うるさくて、すみません」
謝っておきながら、自分の事情をつらつらと…。
申し訳なく思いながら、トリシャさんをちらりと見た。
トリシャさんは少し微笑みながら、私を見ていた。
…なんて、優しい目なんでしょう…。
私は、最近飲んだあの、優しく香り高いアフタヌーンティーを思い出した。