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天使さんと夏

プチ告知です。

50話記念でリクエストにお応えしまして、前回の話『浴衣マジック』のあとがきに小話を載せました。よろしければご覧ください。


さてお久しぶりのあの人たちの登場です。

 今日は麻理さんと由理ちゃんとランチをしにファミレスに来ています。鮫島さんはなぜかなかなか二人と会わせてくれないので、痺れを切らして自ら麻理さんに連絡を取りました。お正月以来に見た由理ちゃんは成長していてもっと天使さんに磨きがかかっていました。ああ、連れて帰りたい(危険人物!?)。


「ラナちゃんが元気そうで安心したわ。悟志さんから話は聞いていたけれど、少し心配だったの」


 バレンタインのときの話みたいです。鮫島さんは設楽さんと麻理さんに相談していたようだ。あの頃は子供みたいに拗ねちゃって、思い出すと恥ずかしい。穴に入りたい。


「ご迷惑をおかけしました……」


 気を取り直して食事を続けます。由理ちゃんのお子さまランチ、おいしそうだなぁ。大人が頼んじゃ駄目なのかな? 駄目だよね。

 ぼんやりそんなことを考えていると麻理さんが話を切り出した。


「ねぇ、ラナちゃん。土曜か日曜、どちらでもいいんだけど時間取れないかしら?」

「はい、大丈夫ですよ。何ですか?」

「知り合いにジャンボ海水プールの入場券を貰ったの。一緒にどう?」


 麻理さんの言葉に由理ちゃんがキラキラした目でわたしを見る。プ、プールかぁ……。少々気が進まない。しかし駄目押しの一言。


「ラナちゃん、いっしょにいこうよ~」


 もう、由理ちゃんのおねだりを拒否できるわけないじゃないですかっ!


「わかりました。行きましょう」

「あ、先輩も一応誘っておいて。もし行かないって言ったらわたしたちと行きましょうね」


 一応ですか。どうでしょうかね。鮫島さん、プールなんて行くのかなぁ? ちょっと想像できない。

 ランチを終えると麻理さんの要望でデパートの水着売り場へ向かう。プールすらほとんど行かないわたしにとって、水着なんてスクール水着以来だ。


「ラナちゃんは若いから、これなんてどう?」


 麻理さんが差し出したのはビキニ。しかもひもパン系。いやいやいや、駄目です。


「無理です。そんな露出度の多い、しかもひもパンなどエロいですよ」

「えーっ、そうかなぁ。普通じゃない?」


 麻理さんは残念そうに呟いた。

 そりゃ麻理さんぐらい出るとこ出ていればエロ水着も着こなせますよ。でもわたしみたいな出て欲しいところ出ずに出なくていいところ出ている人間には無理です、無謀です。

 本当ならウエットスーツにしてほしいでところですよ。でもそれは浮くよね。だからせめてタンキニにしてくださいよ。下は短パン希望です。

 わたしの抵抗に麻理さんが言った。


「先輩もラナちゃんのビキニ姿、見たいと思うけどなぁ」

「……そうですか?」


 そう言われてしまうと挑戦せざるを得なくなります。麻理さんお勧めの水着をキャッキャ言いながら吟味。さすがにひもパンは勘弁してもらう。ついでに試着をしてみる。


「やだ、ラナちゃんかわいいわ。それ、似合っているわよ」

「ラナちゃん、かわいい」

「そうですか?」


 お世辞でも嬉しいです。……ええい、買ってしまえ! 給料入ったばっかりだし。


「もし行くなら先輩にはどんな水着か、当日まで内緒にしましょうね」


 麻理さんにそう言われて頷く。お楽しみってやつですね。


 家に戻ってから鮫島さんに電話でプールの話を聞いてみると、行ってもいいと返事があった。これで行かないなんて言われたらせっかくの水着が泣くよ。






 土曜日になり、プールへ行く日になった。設楽さんの車でプールへ向かう。鮫島さんと駅で待ち合わせをし、そこへ設楽さん達が車で迎えに来てくれた。


「おはようございます。お誘いありがとうございます」

「久しぶりだね、ラナちゃん。元気そうでよかった」


 設楽さんの言葉に恐縮してしまう。ご心配かけました。


「ラナちゃん、おはよう」

「由理ちゃん、おはよう。今日はいっぱい遊ぼうね」


 そう言うと由理ちゃんは満面の笑みを浮かべた。いや~ん、かわゆい。


 運転席に設楽さん、助手席に麻理さん。後部座席に由理ちゃん、わたし、鮫島さんの順で座った。 

 車内でアニメソングを熱唱したり、久々にマジックをしたり由理ちゃんと楽しむ。鮫島さんはひたすら無言でプールに着くまで一言もしゃべらなかった。チラッと顔を見ると何だか不機嫌。もしかしたらプールに来たくなかったのかも。悪いことしちゃったかな?


 そんな気がかりがありながらも無事到着。着替えのために鮫島さんと設楽さんと別れ、更衣室に入って着替える。麻理さんはやはりナイスバディ。白のビキニがお似合いです。設楽さん、あなた面食いですね。由理ちゃんはフリルのついたかわいらしいピンクの水着。わたしはというと青色ビキニ、下は短パン。派手色はちょっと躊躇してしまった。


 着替えが終わり、いざプールへ。すると二人はもう来ていた。ううっ、さすがプールでも美しい上半身。もう周囲の視線独占状態。また逆ナンされそうで心配。設楽さんもなかなか鍛えていますね。レベルの高い二人ですよ。


 鮫島さんはわたしの姿を見て呆然としていた。もしかして似合っていない? メリハリのない身体でビキニ着るなって思ってる? どうしよう。今日やることなすこと裏目に出そうで怖い。


「鮫島、何を固まってるんだよ」


 設楽さんの声に我に返った鮫島さんは「何でもない」と不愛想に言った。まずい、本当に不機嫌そう。


「じゃあ流れるプールにでも行きます?」


 由理ちゃん用の浮き輪をレンタルした後、麻里さんが切り出した。しかしわたしはとあることを申し出た。


「あの、わたし由理ちゃんとキッズエリアにいますから、みなさんで行ってください」

「いや、でも……」


 設楽さんの戸惑いをスルーして、わたしは屈んで由理ちゃんに向かって言った。


「由理ちゃん。わたしと一緒じゃ嫌かな?」


 そう言うと由理ちゃんはわたしに抱きついて来た。


「ゆり、ラナちゃんといっしょがいい」

「と、いうことなので行ってきます。いいころあいで迎えに来てください」


 そう言ってさっさと由理ちゃんの手を引いてキッズエリアに向かった。三人の方は決して振り向かずに。振り向いたら多分魔王降臨中でしょうし。


 由理ちゃんとさっさとキッズエリアへ行ったのにはわけがある。実はわたし、泳げないのだ。頑張っても十メートル。しかも溺れているように見える泳ぎ方限定。だからわたしが泳ぐと勘違いされるのだ。できることなら泳ぎたくない。

 体育の授業はなんとか誤魔化していた。サボってレポートで済ませるという裏技も使った。プール自体は嫌いじゃないけど、流れるプールって怖い。だって止まっていられないでしょう。足がつかないほど深いプールもあるみたいだし。それに浮き輪するのも格好がつかない。だから子供用プールぐらいがちょうどいいのだ。


 キッズエリアは噴水が出たり、滑り台があったりと楽しそう。とはいってもわたしは見ているだけしかできないけど。それでも由理ちゃんが「ラナちゃん、みてぇ~」と喜んでいるからいいや。できることならキッズエリアで一日を終えたい。いっそ迎えに来ないでください!

 しばらく由理ちゃんと水のかけ合いっこをしていると、若い男の人たちに声をかけられた。


「君、かわいいね。よかったら俺たちと一緒に泳がない?」


 こ、これは……、由理ちゃん狙いか!? こんなにかわいい天使さんの由理ちゃんを狙っているのだな。誘拐目的なのかも。いかん、わたしが由理ちゃんを守らなければ!


「お断りします」


 はっきり言い切るけどしつこい。由理ちゃんが不安そうな顔でわたしを見上げる。

 大丈夫だよ、由理ちゃん。わたしが守るよ、マイ・エンジェル。


「いいじゃん、行こうよ」


 そう言った男がわたしの肩に手を置こうとする。が、その瞬間その手を振り払って、わたしの前に広い背中が現れた。


「私の連れに何か御用でも?」


 鮫島さん……、いや、今は魔王様だ。この声、ザ・不機嫌。その威圧感に退散する男の人たち。わたしは大きく息をつき、安堵した。いや、安心するのは早いかもだけど。


「ありがとうございます、鮫島さん。ちょっとしつこくて困ってました」


 そう声をかけると振り向いた彼はやっぱり怒っていた。ぎろりと睨みつけられる。


「もう少し警戒心を持ちなさい」


 また父より父親っぽいことを……。つい反抗したくなる。


「わかってますよっ。でも由理ちゃんは守りました」

「……は?」


 わたしの言葉に眉をひそめる彼。


「だから由理ちゃんみたいなかわいい天使さんが誘拐されかかって危なかったですけど、ちゃんと守り切りました」


 鮫島さんが無言でわたしを見据える。その視線、何ですか? 首をかしげるも、結局わからず仕舞い。

 そうこうしているうちに設楽さんと麻理さんがやって来た。そこで思いもよらぬことを言われた。


「ラナちゃん、由理の面倒見てくれてありがとう。でもそろそろ鮫島と二人で泳いできなよ」

「そうそう。ウォータースライダーもあるし、きっと楽しいわよ」


 いやいや、今鮫島さんと二人きりって気まずいことこの上ないんですけど。

 二人の言葉に彼は無言でわたしの手を掴み、ずんずんと歩き始めた。わたしは三人の方を振り返りながら視線で助けを求めるが、設楽さんに合掌された。うわ、魔王様の生贄ですか? わたし、生きて帰れるんですかね?





次回もプールです。

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