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季節と気持ちは連動する?

ちょっと早い気がしますががっつり時期ものです。

内容がアホっぽいかも知れません(汗)

「うわぁ~、今日も雨かぁ……。じめじめするなぁ」


 カフェから外を眺めてボソッと呟く。


 梅雨です。髪の毛のうねり、広がりと格闘するこの季節。

 縮毛矯正が取れてしまったわたしの髪は日々爆発。それでも少し伸びたおかげで結ぶことができた。暇を見つけて美容院へ行かなければと思うけど、なかなか時間が取れない。

 なぜなら最近バイトのシフトに入ることがすごく増えたせい。バイトが一人辞めたからだ。

 店長は何とか求人を出さずにやり過ごしたいらしく、必然的にフリーターなわたしにしわ寄せがきた。大学に入ってからずっとここで働いているせいか、もうベテランの域かも。もう六年目だ。


 お料理教室も週二回に減らした。料理の腕も大分上達してきたと思う。料理教室で習ってから家で作って家族の審査を通過した料理だけ、鮫島さんに作ってもいいというお許しが出た。披露した料理をとてもおいしそうに食べてくれる鮫島さん。もうわたし達に向かうところ敵なし! みたいな感じだった。


 でも最近鮫島さんの様子がちょっとおかしい。ほぼ毎週末を一緒に過ごしていたのに、最近はお泊りしていない。バイト帰りに彼の家に行っても、妙に早く家に帰そうとする節がある。わたしのバイトが増えたから気づかってくれているのかと思ったけど、どうもそういうわけでもないみたい。

 一緒にいても何だかぼんやりしていて、心ここにあらず状態。かといって家に行ってすぐにエロスが駄々漏れたりもする。玄関で迫られたときにはどうしようかと思った。

 「どうかしたんですか?」と訊いても「何でもない」と言うだけ。もう何が何だかわからない。


 自分で考えるには限界で各方面に相談した。








 まずは愛しき親友サマ。時間を見つけてお茶に誘って悩みを打ち明けた。すると返ってきた答えは思ってもいないものだった。


「ふぅん。倦怠期かしらね」

「倦怠期? それってわたしに飽きちゃったってこと?」

「飽きるというか、週末はずっと一緒だったんでしょ? 一人の時間が欲しくなったとか、あんたが何かやらかしたとか」


 何かやらかした? 身に覚えは全くない。前はいろいろやらかしたけど、最近は大人しいよ?


「もしくは浮気」

「浮気!? ないよ、それは絶対」

「本当にそう言い切れる?」


 そう言われると自信ない。疑いたくないし信じてる。ちゃんと大事にしてもらってるって思うし。


「みちるはあった? 倦怠期」

「日々倦怠期」


 そう言ったみちるを後ろから抱き締める人物が情けない声を上げる。


「ひどいよぉ、みちるちゃんっ」


 みちるの彼氏、菊池くんだった。みちるは彼の出現にチッと舌打ちをした。


「どうしてあんたがここにいるのよ」

「その辺をぶらついてたら、みちるちゃんを発見したから。これも運命だね!」

「…………」


 みちるは菊池くんの言葉を無視した。こんな態度を取ってもちゃんと好きだってお互いわかってるんだとひしひしと伝わる。

 ちゃっかりみちるの隣に腰かけた菊池くんが話しかけてきた。


「で、倦怠期の話してたの? ラナちゃんのとこ、ヤバいんだ?」


 相変わらず気をつかってくれないね、菊池くんよ。もうちょっとオブラートに包むとかあるじゃん。


「最近彼氏の様子がおかしいだけ」

「それ、完璧浮気でしょ」

「違う、絶対違う」


 菊池くんにも今の状況を説明するが、それでも意見は変わらない。


「早く追い返そうとするとか、泊まらせないとか、絶対クロだね。家に女連れ込んでるよ」

「でもちゃんとエッチしてるよ? 浮気してるなら、わたしとしなくない?」

「わかってないな、ラナちゃん。罪悪感から抱いてるだけかもしれないよ。それに男は好きでもない相手でも、抱こうと思ったら抱けるよ」


 その意見が納得できるほど真っ当に思えて落ち込む。わたしとエッチするのは罪悪感で? ヒドイよ、それ。


「……ふぅん、男ってそうなの……。よぉ~く、わかったわ……」


 地の底から出たようなみちるの絶対零度の低い声が、この空間に響き渡る。その瞬間、菊池くんの顔が真っ青になった。


「いや、あのね、みちるちゃん。これはあくまで一般論で……」

「その一般論を言い連ねるってことは、普段からそう思っているのね、あんたは」


 みちるが久々にマジ切れだ。普段から口調はきついけど、こんなに怒るのはめったにない。これは菊池くん、ピンチ!!

 菊池くんは何とかみちるの機嫌を直そうと必死に言い訳をする。


「ぼ、僕はみちるちゃん一筋で……」

「へぇ……。わたし一筋って言っているその口で、『男は好きでもない女抱ける』って言うのね。それは随分実感のこもったお話ですこと」


 みちるの容赦ない態度に、菊池くんは早々にギブアップした。


「みちるちゃん、ごめんなさい! 男は好きな女じゃなきゃ抱きたくありません!」


 尻に敷かれてるよね、本当に。

 結局、わたしの相談はこの喧嘩によりどこかへ飛んで行ってしまった。それでも一応二人はアドバイスをくれた。一応……ね。








 次はもはや際どいことを知りつくしている師匠クラスのお方に相談です。


「お兄さんの様子がおかしいって? そりゃアンタ、完全に飽きられたわね。私にチャンスが巡ってきたわ」

「ちょっと! 万が一本当に飽きられていたとしても、ひろみ先生にはチャンスはないですから」


 料理教室の合間に相談したらこうなりました。ひろみ先生、ひどいです。


「だから言ったでしょ? 『三ヶ月で飽きられる』って。私の予想通り。すごいわぁ、私。美しいだけじゃなくて頭もいいなんて」


 自画自賛ですか。別にいいですけどね。

 ガックリ肩を落とすと、そこまで本気で落ち込んだわたしに先生は戸惑いながら声をかけた。


「やぁね、そこまで本気で落ち込まれると私、悪者みたいじゃない。……もう! 本当に世話の焼ける子ね。私がいい解決法を伝授してあげるわよ!」


 何だかんだ言ってひろみ先生は優しい、面倒見のいいおネエだ。


「まず、その髪の毛、何とかしなさい!」

「髪の毛?」

「そうよ。無造作に伸びきっていて、ひとくくりって面倒くさがりにもほどがあるわ。もっと女らしく、美しくありなさい。そうすればあんたレベルでも何とか見れるわよ」


 『あんたレベル』って……。本当に毒舌。まぁ、お世辞にも美人とかかわいいとは言い難いですけど。


「最近忙しくて、なかなか美容院に行けなかったんですよ」

「おだまり! 言い訳無用! 美の追求に言い訳など不要よ」


 ……すみません。気をつけます。


「胃袋掴みの方は私の教えにより着々と進んでいるし……。あとはアッチの方ね」

「それは無理です。前も言いましたけど、わたしと鮫島さんでは経験値が……」

「だから、趣味の問題よ。アンタ、お兄さんの部屋でそういう本とかDVD、見たことないの?」

「ないです。持ってるんですか?」


 信じられないな。そういうの、見てるのかな? 先生はその言葉に呆れた。


「馬鹿ね。持っているに決まっているでしょ。うまく隠しているのよ」

「ひろみ先生も持ってるんですか?」

「当り前じゃない! あ、もちろん男×男よ」


 うわ、見たくないし、恐ろしい。先生ならすごくハードなやつっぽい気がするし。


「家捜しでもして、お兄さんの趣味嗜好をリサーチしてみたら? そういうのに近づいていったらマンネリもなくなるかも」

「いや、マンネリしているわけでは……」

「いいから見つけなさい! 気になるわぁ……、お兄さんの趣味」


 それってひろみ先生の興味なだけじゃないですか! 









 後日、きちんと美容院に行って縮毛矯正をかけて、さら艶ストレートヘアを手に入れた。


 そして金曜のバイト帰りに鮫島さんの家に向かい、アドバイスされたことを実行するときが来た。彼が帰ってくるまでに、さっさと終わらせないと。


 みちると菊池くんにアドバイスされたのは、『女の髪の毛が落ちていないかを掃除して調べろ』。

 でも鮫島さんって綺麗好きで几帳面だから、いつ見ても塵ひとつないんだよね。お風呂の排水溝も髪の毛一本ない。これは調べても無理だな。次にいこうっと。


 次はエッチな本やDVDを探すこと。定番はベッドの下なんだけどな……。屈んで覗いても暗くてわからない。手探りで探してみるけどそれらしいものはなかった。本棚かな、と見るけど、やっぱりない。


「どこにあるのかなぁ?」


 独り言のように呟くと後ろから声をかけられた。


「何を探しているの?」


 反射的に振り返ると鮫島さんが立っていた。

 早っ! もう帰ってきたんですか!? まさか『エッチな本とかDVDを探していました』なんて言うわけにはいかない。どうやって誤魔化そうか、焦る。


「えっと、あの、これはですね……。そう! ちょっと落とし物をしてしまいまして」

「ふぅん、何落としたの? 一緒に探してあげるよ」


 ヤバイ。これって嘘ついてるのがばれてるっぽい。鮫島さんが笑顔だけど目が笑ってない顔で見てくる。


「ラナは嘘がつけないね。さっさと白状したら?」


 くそう。これ以上誤魔化すのは無理か……。諦めよう。

 わたしは素直に全てを説明した。


「鮫島さんの様子が最近おかしいから、みんなに相談したんです。そうしたら『浮気してる』とか『飽きられた』とか言われちゃって。だからこの状況を何とか打破しようと……」


 鮫島さんの顔を見ると、ザ・不機嫌。そりゃそうだよね。勝手に家捜しされて、疑われたんだもん。


「わたし、何かしましたか? 鮫島さんの不快になること。言ってください。直しますから。だから、別れるなんて言わないでください!」


 そうはっきりと言い切った。嫌われたくない、幻滅されたくない。

 しばし無言だったので恐る恐るうかがうと、彼は驚いたような、戸惑っているような、よくわからない顔をしていた。


「ラナ、どうして『別れる』に話が飛ぶわけ?」

「だって最近泊めてくれないし、早く家に帰そうとするし、ボーっとしてるし。そうかと思えば玄関で迫ってくるし。ちょっとおかしいですよ。わたしが何かしたから、嫌がらせですか?」


 そう訊くと、突然鮫島さんがプッと噴き出した。

 こっちは真剣なのに、どうして笑うんですか! その態度に苛立つ。


「何がおかしいんですか!」

「ごめん、ラナが悪いんじゃない。理由を説明しづらいんだけど……。要は俺がラナに襲いかかりそうだから用心してるってところかな」


 ……はい? どういう意味ですか?


「一緒にいたらラナを離したくないし、腕の中に閉じ込めたい。俺だけ見て欲しいし、束縛したくなる。だから泊めるのが怖かった。無茶苦茶なことしそうで」


 思ってもいないことを言われてびっくりなんですけど。


「ボーっとしていたのは多分疲れていたから。最近仕事立て込んでいて。玄関のは、……理性が切れかけた」


 何ということだ。浮気でもないし、飽きられてもいなかった。ただの被害妄想かい! 何やってるんだよ、わたし!

 うなだれるわたしに鮫島さんはあらためて質問する。


「で、ラナはここで何していたの?」

「う……、それは……」

「俺は正直に言ったよ。だからラナもちゃんと言って」


 恥ずかしいんですけど。気まずいんですけど。ええい、言っちゃえ!


「エッチな本やDVDを探していましたっ」

「……は?」


 すごく呆れている。そりゃそうだ。


「実はひろみ先生に『もし飽きられていたとして、趣味嗜好がわかったらマンネリがなくなる』と言われまして……」


 うぅっ、こんなことを白状するなんて……。恥だ。

 鮫島さんは「あの人は本当にロクでもないことを……」と小声で呟いた後、わたしにニッコリ笑いかけた。その笑顔、怖いんですけど。


「ということは、ラナは俺が欲しくて、欲しくて堪らないんだね」

「え、えっと、別にそういうわけでは……」


 流れがおかしな方向に流れていますけど?

 鮫島さんはわたしの腕をガッチリ掴んでベッドまで引きずる。呆気なくベッドに組み敷かれてしまった。見上げる鮫島さんの顔は笑みを崩さず、大きな手はわたしの髪を撫でる。


「髪の毛、サラサラになったね。……じゃあ希望通り、ラナが欲しいだけ俺をあげる」


 端正なお顔が近づいていく。ひぇえええ! そういうつもりではなかったんですけどー!

 

 次の日の昼までわたしはベッドから出られませんでした。ぐったりするわたしに鮫島さんが一言。


「もうちょっと体力つけた方がいいね」


 あなたはもっと他のことで体力使ってください!! 身体がもちませんっ!






どうもすみません(ペコリ)

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