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まさかの事態

お気に入り登録400件超えでびっくりしております。

ありがとうございます!

エネルギーがみなぎってきました。


ようやくお見合い開始です。

そういえばまだ出てきてないですね、彼の名前。

この話であらすじ達成です(笑)

 おばちゃんに促されて席に着く。わたしは失礼だと思いながらも目の前の男性から目が離せなかった。

 何でこのハイクオリティーな男が見合い!? いくら上司の話でもねぇ……。


「鮫島さん、今日のお見合いなんですが……」


 話を切り出したおばちゃんの語尾を受け継ぎ、話す。


「あの、わたし、今日あなたの見合い相手として来るはずだった樫本沙羅の妹でラナって言います。突然で申し訳ありませんが、姉は見合いできなくなりました。せっかくお越しいただいたのにすみません!」


 一気に言い切り、頭を下げる。しばらく頭を下げ続けたが、何の反応もなかった。不思議に思い、頭を上げると彼と思いきり目があった。相手はジロジロとわたしを見ていた。

 こっちもジロジロ見ていたからあまり強くは言えないけど、それでもやっぱり言わせてくれ。


 あんまりジロジロ見んな!!


 一瞬にして重い空気が部屋を包み込む。おばちゃんが気を利かせて話を続ける。


「そういうことなのよ、鮫島さん。だからこのお見合いはなかったことに……」


 すると沈黙を貫いていた彼が小声で呟いた。


「……なら君でいい」

「……は?」


 い、今、何と!?


「あの、鮫島さん。どういうことかしら?」


 驚いたおばちゃんが彼に訊いた。彼はおばちゃんに言った。


「見合いをしろ、というのが専務の言葉ですので、相手が彼女でも私は構いません」


 低くて色気のある声でそう告げた。声だけ聴いてればうっとりしそうだけど、内容がありえない。


 この人、何言ってんのさ。こっちに非があるんだから、なかったことにすればいいのに、見合い続行ってどうかしてるよ。


「鮫島さんがいいというのならわたしは構わないけど、ラナちゃんは?」


 いやいや、見合いとか絶対無理だから。恋路に興味はありませんし。


 断ろうと口を開きかけて止まる。目の前の男が鬼の形相で睨みつけてきたのだ。


 怖っ!! なんでそこまでこの見合いの続行に固執するのか謎だ。ま、いいか。どうせ続けても向こうから断ってくるか。仕方ない。


 わたしはコクンと頷いた。どうせ暇だし、見合いというものを経験しておくのもいいかもしれないしね。


 わたしが見合いを了承したことで、どうなるのかと心配そうにしていたおばちゃんはほっとしたようだった。おばちゃんからしたら、やはりおじちゃんが設けた席だからと内心ではなんとか見合いをさせたかったみたい。


 二人きりってわけでもないし、おばちゃんがいれば何とか話がもつと楽観視していた。それなのに運ばれてきた料理はおばちゃんの目の前には置かれなかった。

 え? という目でおばちゃんを見ると申し訳なさそうな表情を返された。


「ごめんね、ラナちゃん。わたしこの後用事があるのよ。二人で食べてちょうだい。では鮫島さん、くれぐれもラナちゃんのことをお願いしますね」


 おばちゃんはそう言って部屋を後にした。


 いやいや、『お願いしますね』じゃないよー! 初めから『あとはお若い二人で……』ってする気満々じゃないか。紹介だってしてもらってないんだけど!!


 唯一の頼みの綱を失って、わたしは途方に暮れていた。やっぱりご飯に釣られて来るんじゃなかった。知らない人と気まずいランチより、家でゴロゴロ気ままにカップ麺のほうがきっとおいしい。うん、絶対そう。



 しばらく室内はしーんと静まり返っていた。お互いに無言を貫いていたが、耐えかねて口を開いた。


「あの、とりあえず自己紹介してもらえますか?」


 その言葉に目の前の男は眉をひそめる。


「釣書を見ていないのか」

「それはお互い様でしょう。それにあなたの相手はわたしではないことをお忘れですか」


 彼が釣書も写真も見てないことは簡単に想像がついた。部屋に入って来たとき、わたしの顔を見ても表情を変えなかった。見合いに乗り気なら写真も釣書も見ているはず。ならば彼の方も見合いを望んでいないはずだと予想する。


 すると「それもそうか」と呟き、自己紹介を始めた。


「鮫島慎也。三十五歳、会社員。以上だ。そっちは?」


 それだけ? 短くない?

 そう思いながらも返答する。


「樫本羅那。二十三歳、フリーター。以上」


 わたしの言葉に彼は驚いたようだった。


「意外と若いんだな……」


 その言葉にイラっとする。

 どーせ老け顔ですよ。九歳上の姉の友人と間違えられますよーだ。


 言葉を返すことはせず、無言で食事を始めた。話すと余計にイライラしそうだった。せっかくのご飯がまずくなる。

 無言なわたしを鮫島さんはじっと見ていた。彼はまだ食事に箸を付けていなかった。


「……食べないんですか?」


 するとぞくっとするような低い声で話し始めた。


「君の心情はこうだ。『どうして見ず知らずの男と食事などしなければならない。見合いなんてせずにとっとと帰ればよかったのに』。違う?」


 まるでわたしの心を覗いたような言葉だった。またもやイラっとした。


「わかっているならどうして帰らなかったんですか? こっちがぶち壊したんだから、さっさと帰ればいいのに」

「……料理がもったいないだろ?」


 なんだその返答。事実だけどさ。しかも『もったいない』って言っている割には食べてないじゃん。


「君は思ったことが顔に出るな。気をつけなさい」


 図星を言い当てられて脳みそが沸騰した。わたしは目の前の男を睨みつける。


「……『上司の命令だから仕方なく来たけれど、こんな小娘が相手とは。とにかく上司に顔を立てるために見合いをした事実が必要だ』。……違います?」


 同じように返してやった。すると仏頂面だった彼の口端がかすかに上がった。


「よくわかったな」

「見ていればわかります。わたしが断ろうとしたときに鬼のような顔で睨みつけてきたのは誰ですか」


 その皮肉には無言だった。そのかわりに返ってきたのはまさに厭味だ。


「君は初対面の人間にも遠慮なく言いたいことをずけずけ言うのだな。睨みつけるし。大概の女性は口数少なくなって、この顔に見惚れてくれるのだが」


 こいつ、ムカつく。自慢? 自慢ですか? 見た目よろしくても性格最悪。

 黙っているとさらに厭味を乗せてきた。


「君、男いないだろ?」


 カッチーン。事実だけど初対面の人間にそこまで言うことないでしょうよ。もう頭きたっ。


「ええ、いませんよ。年令イコール彼氏いない歴ですけど何か問題でもあります? そっちこそ、どうせ見た目で寄って来た女とっかえひっかえした挙句『仕事だ』とか言って放置なんでしょう。そんなんだから嫁に逃げられたんじゃないんですかっ!」


 口から出た瞬間にハッとして俯いた。


 もしかしなくても、何かまずいこと言った気がする……。


 部屋は物音ひとつせず静まり返っていた。

 

こんな終わり方でごめんなさい


次回で見合いは終了です。

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