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自業自得の師走

お待たせいたしました。本編再開です。

短めですがご容赦ください。


それにしても季節感が全くと言っていいほど皆無です。

この話を考えていた頃の季節が師走だったもので…

いずれ実際の季節に追いつきたいものです。

「もうすぐクリスマスだっていうのに、あんた沈み過ぎ」

「…………」


 鮫島さんと付き合い始めて一ヶ月以上経った、十二月の中旬。わたしはみちるとお茶をしていた。わたしの目の前に座っているみちるは呆れ顔。対するわたしは机に突っ伏して落ち込んでいた。そんなわたしを一瞥して、みちるは大きなため息をつく。


「ま、仕方ないわよね。自業自得よ。変に聞き分けのいい女ぶるから」


 ごもっともです。反論できません。




 実はもう二週間ぐらい、鮫島さんと会っていない。とはいえ、別に喧嘩したわけではない。


 十一月の下旬、鮫島さんからこう言われた。


「ごめんラナ。クリスマス過ぎるまで仕事が立て込んでいて残業も多くなるし、休日出勤も増える。あまり会えないかもしれない。でもなんとか時間作るから」


 忙しいのに時間作ってくれるんだ……、と嬉しくなった。でもそんな激務の中でわたしと会う時間を作るなら、ちゃんと身体を休めて欲しかった。だから言った。


「そうですか。でも無理しないでください。休めるときはちゃんと休息を取ってください。わたしのことは気にしなくて大丈夫ですよ。師走はわたしもバイト忙しいんです。シフトたくさん入らなきゃいけないし。会いたいけど、我慢します」


 鮫島さんは少しだけ寂しそうな顔をした。そんな顔しないでくださいよ! こっちだって寂しいんですから!


「本当にいいの?」

「はい。でもメールはください。あと三食ご飯を食べるときだけでいいですから、わたしのこと思い出してくださいね」


 彼は少しだけ笑った。


「三食……ね。ラナらしい。わかった。できるだけ毎日メールする。時間があいたら電話する」

「はい。お仕事頑張ってくださいね」


 それから本当に会えなかった。鮫島さんはかなり忙しいらしく、この二週間で電話は二回だけ。付き合い始めてから週二回は必ず会っていたから寂しくて仕方ない。


 その寂しさを紛らわすためにバイトを入れまくった。カフェと和食料理店、短期のバイトなどなど。仕事をしていれば時間はあっという間に過ぎるからね。余計なこと考えなくていいし、財布はポカポカになるし。



 でもそろそろ限界が近い。クリスマスが終わるまであと一週間の我慢。だけど……。


「ううっ。鮫島さんに会いたい……」

「本当に馬鹿な子。初めから素直に『会えるときは会いたいです』って言っておけばよかったのに。“クリスマス終わるまで会いません”宣言するなんて。今が一番ラブラブな時期なのに」


 もう言わないで。わかってるもん。自業自得ってことぐらいさ。


「で、クリスマス過ぎるまでってことは、クリスマスは会えないんだ?」

「多分……。というよりその時期バイトぎっしりだし……」


 特にカフェの方はクリスマスとイブは早朝から夜まで働くことになっている。恋人がいるバイト仲間がこぞって休みを入れるから人手が足りない。去年は『残業代つくし、余ったケーキやチキン貰えてラッキー!』って嬉々として働いてたけど、今年はカップルを見かけたら睨みつけそうだ。『こっちは彼氏に会えず寒空の下バイトだっていうのに、いちゃつきやがって……』みたいにね。


 初めての彼氏がいるクリスマスはさよ~なら~(涙)。後悔しても遅いけど、へこむ。


「みちるはさ、菊池くんとデート? クリスマスは休み取れるの?」


 気になって訊いてみると、顔色も変えずにさらっと答えた。


「まあね。うちの業界は年末暇だし。クリスマスが休み。会社の人が気をつかってくれたみたい。金曜だし、クリスマスだろうが平日休みってことには変わらないもの」


 何さ。一番いい日に休みなのかよ! 腹立つな!


「みちるさ、彼と過ごす甘いクリスマスの予定を口にするなら、もうちょっと嬉しそうに話せば? 表情なさ過ぎて楽しみじゃないみたい」

「楽しいわけないじゃない。あいつ、ずっとベッタリよ。鬱陶しいったらないわ」

「……それでも好きなくせに」


 ボソッと呟くとほんの少しだけ顔を赤くした。全く素直じゃないんだから。




 みちると夕方に別れて、そのまま和食料理店に直行する。最近毎日何かしらのバイトを入れている。クリスマスまでガッチリ働いて、年末年始は日数減らしてやるんだ。そんでもって鮫島さんとデートするんだもん!


 和食料理店はかなり混む時期。忘年会があるからね。てんてこ舞いで目が回るほど忙しい。でも忙しい方が今のわたしにはピッタリ。




 日付が変わりそうになった頃、帰宅した。携帯を見ると鮫島さんからメールが来ていた。




『 ラナへ


 ようやくあと一週間でこの忙しさから解放されるよ。

 そうしたら色々なところへ行こう。

 早くラナに会いたい。 』




 うわぁ、嬉しい。バイトの疲れも吹っ飛びそう。すぐに返信する。




『 鮫島さんへ


 メールありがとうございます。

 わたしのバイトの忙しさはこれからがピークです。

 鮫島さんに会うことを励みに乗り切ります!

 わたしも早く会いたいです。


  ラナ 』




 よっしゃあ! あと一週間、何とか乗り切って見せる!! お互い忙しくて会えないなんて障害に負けてなるものか!




次回はクリスマスでございます。本当に季節感がない…

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