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VS自称・婚約者 後編

前回の反省にご意見いただきました。ありがとうございました。

それを受けて一部加筆修正しました。


いつの間にかお気に入り登録2000件突破!

いつもお読みくださる皆様のおかげです。

大・大・大感謝でございます!!

 怒り心頭で山本親子に対峙する。久々にこんなに頭にきた。むしろ手が出なかったことを誰かに褒めて欲しいぐらいだ。


「……あんた達、何様? 鮫島さんの何を知ってるって言うわけ?」


 山本さんは勝ち誇った表情でわたしをあざ笑う。


「もちろん知っているわよ。仕事が出来て、かっこよくて優しい、欠点なんてない……」


 わたしは鼻で笑った。ちゃんちゃらおかしかった。


「欠点がない? 欠点だらけだっつーの。初対面で威嚇するし、失礼な発言連発するし、変な笑いのツボで人のこと笑い者にするし。顔に意地悪さがにじみ出てムカつくし」


 わたしの言葉に『何言い出すの、この子』と困惑したような表情で見下ろしてくる二人。まだまだ言い足りないから、とにかく黙って聞いてろ!


「確かにあの人仕事できるだろうし、出世もするでしょうよ。でもそんなことじゃなく、あんた、ありのままのあの人見たことある? 顔とか肩書きとかじゃないあの人を知ろうとした? あの人が欠点ないなんて言えるってことは仕事モードの彼しか見てないじゃん!」


 ああ、止まらない。後から土下座でも何でもしていっぱい謝ろう。だから今は全部言っちゃえ! ヤケクソだっ!


「あんたが彼と結婚したい理由は顔? 肩書き? 出世するから? わたしはたとえ彼が小さなラーメン屋の店主だろうが、出世の見込みのない平のサラリーマンだろうが、最悪一文無しでもいい。大好きなの! たとえ出会いが見合いだったとしても、今はちゃんと彼に恋してる。あんた彼の何を見て自分がふさわしいなんて言えんのよ。外面しか見てないくせに! そもそも権力でどうにかなると思ってるあんたこそ彼にふさわしくない!」


 言うだけ言ってやった! もうどうにでもなれ!!


 わたしの啖呵に、怒りで顔を真っ赤にしている山本さん。部長さんが呆れたように言った。


「見合いねぇ。一体どこのどいつがこんな小娘を鮫島君に紹介したんだ」


 ここで知った低い声が耳に入って来た。


「私だが」


 声のする方に顔を向ければ、鮫島さんと竹田のおじちゃんがそばに立っていた。鮫島さんの表情が見たことないほど怖い。


 それを見て一瞬にして血の気が引いた。ヤバイよね? めっちゃ怒ってる。そりゃそうだ。会社のお偉いさんにいろいろ言っちゃったもんね。謝らなきゃ……。


 人事部長にでかい口叩いてごめんなさい? いや、悪口言ってすみませんでした? それとも他人の前で告白まがいのことをしてごめんなさい?


 ……告白? そうじゃん! 鮫島さん本人にまだはっきりとわたしの”好き“って気持ち伝えてないのに、先に赤の他人に言っちゃった。うわー、何てことを! 順番間違えたし。


 謝る機会をうかがうも今は無理! 軽い殺気のような冷ややかな空気が流れている。


 鮫島さんの様子を見て軽いパニックを起こしているわたしをよそに、おじちゃんが話を進めていた。


 

「彼女は私の友人の娘でね。鮫島君にピッタリだと思って紹介したのだが、何か問題でも?」


 さすがに専務相手には弱腰の山本親子。特に部長さんの方は慌てて言葉を取り繕う。


「いえ、その……まさか専務の紹介だったとは。いや、素晴らしいお嬢さんで」


 嘘つけ! 何言ってやがる。小娘扱いしたのを忘れたとは言わせねぇぞ!


「手切れ金がどうとか聞こえたが」


 竹田のおじちゃんの追及は止まらない。いつもと違ってすごく……怖い。


「いや、あの、それは彼女の方が金を出せば彼と別れると……」


 ふざけんな! そんなこと言うわけねえだろ! 文句を言ってやろうと思ったけど先を越される。


「彼女はそんな女性ではありません。その発言、撤回してください」


 鮫島さんがわたしの代わりに言ってくれた。言葉は丁寧だけど半端ない威圧感。鮫島さんとおじちゃんの追及にあたふたしている部長さん。しかし山本さんはまだ怯まない。


「彼女を悪く言ったことは謝ります。でも課長、彼女は課長にふさわしくありません。わたし、課長が好きなんです。わたしを選んでいただけるなら、絶対課長のお役に立つことができます」


 すごい、この人。この状況で告白できるなんて。肝が据わっているのか、はたまた空気が読めないのか……。


 鮫島さんは山本さんに言った。


「せっかくだが私は出世のために結婚するつもりはない。私に相応しい相手は私が選ぶ。他人にとやかく言われたくない。彼女は私が選んだ人だ」


 この状況で何だけど、ちょっと胸キュン。『私が選んだ人』だって。めちゃくちゃ嬉しいんだけど。


「ということだ。人事部長、もしこの件を理由に人事を私的に操作しようとは、無論思わないね? 鮫島君と君、どちらが今後の我が社に必要かはわかるだろうが。君はあの一件で私に借りがあるだろう?」


 部長さんの顔、暗くてはっきり見えないけどかなり怯えている。おじちゃん、かっこいいぞ。悪役っぽいけど。


「それから山本君。君はもっとTPOに合った振る舞いをすることだな。取引先からも苦情がきていてね。このままではお父上の力をもってしてもどうにもならないよ」


 遠回しに“お前らこれ以上問題起こすと、飛ばすかクビにするぞ”って聞こえる。悪役っぽいおじちゃん、すごく似合う。いつものニコニコなおじちゃんと正反対だ。


「こちらの彼女にもきちんと謝罪すべきだ。聞いていて気分が悪かった」


 ちょっと! いつから聞いてたの、おじちゃん。もしかして鮫島さんも聞いてた?


 ふと周囲に目を向ければ、人だかりができていた。恥ずかしい。見世物じゃないんですけど……。


「あと、これは内密だけど……」


 そう前置きをして、おじちゃんは部長さんに耳打ちする。何か言っているようだ。すると見る見るうちに表情を強張らせ、明らかに動揺した部長さんがいきなりその場で土下座した。


「この度は失礼なことを申しまして、大変申し訳ございません!」


 えっ!? いきなり何? 土下座まですることなくない?


「パパ!? そこまでしなくても……」


 山本さんもびっくりしている。そりゃそうだよね。しかし部長さんは山本さんの腕を引っ張り、「お前も謝りなさい! さあ!」と無理矢理地面に座らせて山本さんに頭を下げさせた。


「あ、あの、そこまでしていただかなくても結構ですから……」


 いたたまれなくて頭を上げるように言っても、部長さんは一向にやめる気配はない。おじちゃんに視線を送るとニッコリ微笑まれた。絶対余計なこと言ったよね?


 何度か「もういいですから」と言って山本親子を立たせた。二人はペコペコと頭を下げながら帰って行った。


 おじちゃんは「部下が悪かったね。デートを楽しんできて」と言い残して、周囲の人だかり(おそらく社員さん)を追い払って、車に乗って行ってしまった。


 辺りはわたしと鮫島さんの二人きりになった。






“鬼の竹田”の本領発揮!


結局ラナは自分の言いたかったことを言っただけでした。


反撃…といえたでしょうか??

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