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ep.8
朝。窓の外は、泣き声が耳にこびり付くような静かな混沌に満ちていた。泣き喚く子供。目を掻き、目から血を流す男。吐血し動かなくなっている皮膚が鈍色になった女。私はただ、それらを見ていた。
気づくと私は笑っていた。彼が私の表情を伺うように覗き込む。
「本当、政府も惨いことをしますよね」
「政府はこれでも『人助けだ』、と喚いている。馬鹿馬鹿しい」
「ねぇ、渚さん」「なんだ」
「向こうには、僕らが望むような正常な未来があるんでしょうか、」
「………あると、良いな、」
表情が崩れそうになったのを、どうにか持ちこたえる。彼はそれに気づいているのかいないのか分からないが、やはり笑っていた。
「ねぇ、渚さん」
「今度はなんだ」
「……僕も、綺麗な世界を見てみたかったなぁ…。」
その言葉に、私は、ちゃんと笑えていたのだろうか。




