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ep.2
私は五年前まで、明瞭で善良な微生物研究所で働いていた。だがしかし、その研究所の所長夫妻が亡くなった直後、その研究所の指揮権が即座に胡散臭い首相へと渡り、その研究所は穢れに関することを行う研究所へと無理矢理変貌させられていってしまった。それに伴い、その研究所自体も穢れていってしまったのだ。
自分で言うのもアレだが、私は色んな意味で名の知れた微生物研究者だった。それもあって、私の能力を見込んで研究所の指揮権を無理矢理奪ったヤツが、嫌だと反抗する私の手綱を放すことも無かった。
そんな研究所もこの前の三月に解散した。やっと、解放されたかと思いきや、政府は穢れのせいで死んでゆく教員の補充として、私と最年少の同僚だけを高校に派遣させた。私ともう一人は、まだ呪縛から解放されないんだと悟り、意気消沈した。しかし、多少は私たち二人よりマシな余生を歩めたであろう同僚達は、次々と死んでいった。
高校に派遣された私たち二人と特に深い交流のあった一人の同僚の死姿は凄惨だった。体は刻まれ、脳は政府にとって使い勝手の良い辞書にされたのだ。あの時からずっと、その報告を聞いた時の事を夢に見る。胃酸で溶けた自身の歯と今でも口の中に幻覚のように残る不快感。あれが現実だったことを忘れさせてはくれないようだ。




