【第3話 森の家をもっと住みやすくする】
【第3話 森の家をもっと住みやすくする】
朝の光が家の隙間から入り込み、ユウは目を覚ました。
まだ床は土のままだが、雨風をしのげるだけでも十分だった。
今日もやることはたくさんある。
「おはよう。さて、続きをやろう」
家の外に出ると、森の空気がひんやりしていて気持ちよかった。
鳥の声がいくつも重なり、森全体がゆっくり動き出すように感じる。
「まずは窓だな。家の中が暗いし、風も通したい」
ユウは家の壁に手を当て、魔力を軽く流した。
木の壁が静かに動き、丸い穴が開いた。
穴の周りには自然と窓枠ができていく。
「お、いい感じにできたな。形もきれいだ」
反対側にも窓を作る。
同じように手をかざすと、壁がなめらかに変化し、
光がまっすぐ家の中へ入るようになった。
家の中は一気に明るくなり、風も気持ちよく通り抜ける。
「これでずいぶん住みやすくなるな」
次は床だ。
土のままでは落ち着かず、掃除もしにくい。
ユウは森を歩き、使えそうな木を探した。
生きている木をむやみに減らしたくなかったので、
倒木や折れた枝を中心に集める。
「このあたりの木なら問題ないな」
倒木の表面に手を当て、魔力を少し流す。
すると木は細かい粒に分かれ、
すぐにまっすぐな板へと形を整えていった。
「魔法でこれだけできるの、すごいよな」
板を数十枚作り、家の中に運ぶ。
そして床に向かって手をかざした。
魔力が板に触れると、ゆっくりと動き出し、
ぴったり重なり合うように位置が調整されていく。
板同士の隙間も自然と埋まり、
滑らかな木の床が広がっていった。
歩いてみると、軽く音が響き、木の香りが心地いい。
「これならゆっくり眠れそうだ」
床が完成すると、家の中が一気に“家らしく”なった。
次はベッドを作りたい。
「ずっと土の上に寝るのはさすがに厳しいしな」
再び森へ向かい、まっすぐ伸びた木を探す。
ベッドの枠に使うためだ。
程よい太さの木を見つけ、手を当てる。
木がゆっくり形を変え、長い板四枚と、
支えになる短い板がいくつもできた。
「これで枠は大丈夫だな」
問題は寝る部分だ。
木の上に直接寝るのはさすがに硬い。
ユウは森の中を見渡し、
柔らかい草が生えている場所を見つけた。
手で触るとふわふわしていて、枕にも使えそうだ。
「これ、いけるな」
草に両手を向けて魔力を流すと、
草はまとまり、厚みのある布のように変化した。
背中が沈みすぎない程度に固まり、
触ると優しい弾力がある。
「マットレスも完成っと。魔法って本当に便利だ」
家に戻り、ベッドの枠を組み立てる。
魔力で固定すると、しっかりと安定した家具になった。
マットレスを敷き、草で作った枕を置く。
ユウは試しに横になった。
「……おお、思ったよりいいな」
柔らかすぎず、硬すぎない。
木と草の香りが混ざって、落ち着く空間になった。
「ここで寝るの、楽しみだな」
ユウはベッドから起き上がり、
次はどんな家具を作ろうか考えた。
「机とか棚があれば便利だよな。
本もないけど、とりあえず置く場所くらいは作りたいし」
そう考えながら、家の前で腰を下ろした。
森の風がゆっくり吹き抜けていく。
鳥が枝から枝へ飛び移り、葉が静かに揺れる。
「ここ、本当に気持ちいい場所だ」
ユウの胸の中に、じんわりと落ち着いた感情が広がった。
自分の家を作り、自分の手で整えていく。
そんな生活が、こんなに楽しいとは思っていなかった。
「もっと作業したいけど……今日はこれくらいにしておくか」
焦らなくていい。
森での生活は始まったばかりだ。
家の中に入り、窓から入る光を眺める。
風がカーテンのように木の葉を揺らし、
小さな影が床に映っていた。
「明日は机と棚を作るかな。
もっと暮らしやすくなるぞ」
ユウは軽く伸びをして、木の床に座り込んだ。
静かで穏やかな時間が流れていく。
こうしてユウの森の生活は、
またひとつ前に進んだ。




