第6話 (S級)冒険者たちに食事を振る舞う
第一異世界人、発見。そいつは鎧的なものを着た、20代後半くらいの青年だった。
その後ろには、魔女っぽい女と、戦士っぽい大男、狩人っぽい女がいた。
……場所は森。そしてこの服装。
冒険者か……! (偏見)
「あの……」
鎧の男がまず私に話しかけてきた。他のメンバーたちは、男の背後に回っているところを見るに、リーダー的な存在かもしれない。
「な、なんでしょう?」
やばい、なんて答えよう。
この人達から見て、私って結構……怪しい人だよね。
背後に謎の物体 (※キャンピー) 。黒猪が謎の破裂現象。
そしてか弱い女が一人。……うん、怪しすぎる。
人と出会ったときの言い訳ちゃんと考えておけばよかったー。
「食料を分けていただけないでしょうか?」
「……え? しょ、食料……?」
「はい。貴女は商人……ですよね? 変わった馬車をお持ちのようですが」
……。
…………。
………………よし。
「はい、商人です」
そういうことにしておこう。
どうやらこの人達から見て、キャンピーは馬車に見えるらしい (ギャグなのか、マジなのかわからないけど) 。
商人なら、たしかに一人で森をふらついていても、問題ない (はず) 。
それに、向こうが商人だって私のことを思ってくれてるなら都合が良い。
物を売れるしね。
「良かった……。あ、挨拶が遅れました。おれ、【リダケン】と言います。この冒険者パーティ【黄昏の竜】のリーダーをやってます」
「リダケンさんね。初めまして、私は……」
なんて名乗ろう。
上高地 澄子、ってそのまま名乗ってもいいのかな。
でも名前の感じから召喚者ってバレちゃうかも。
こっちの世界で、召喚者が異世界人からどう思われてるのかわからないし……。
いちおう偽名使っておくか。
「スミー、と申します。えっと……行商やってます。よろしくです。スミーです」
「……なんで二回名乗ったんです?」
「大事なことなんで。リダケンさんたちは、食料が欲しいんでしたね」
こくん、とリーダーこと、リダケンさんがうなずく。
「すでに食糧が尽きてしまい、みな腹ぺこなんです。なにか食料を譲っていただけないでしょうか」
ちょいと、考える。
パンをKAmizonで買って渡すことも可能だ。
でも、KAmizonでの購入にはお金がかかる。
パンを売ったとしても儲けはない。
ちら、と私は、結界に押しつぶされて息絶えた黒猪を見やる。
「リダケンさん。よろしければ、料理を作ってさしあげましょうか」
「!?」
「やっぱりパンとかのほうがいいです?」
「あ、いや……! 料理のほうがいいに決まってます……! けど、ここは……その、魔物の出る森ですよ? こんなとこで料理を作る暇なんて……ないのでは?」
なるほど、リダケンさんの言うことももっともだ。
料理となると、火を使う。においも出るだろう。魔物を引き寄せることになる。料理どころじゃあない。
リダケンさん達を見る。どうみても、みんなおなか空いてそうだ。やつれている。
この状態で魔物と戦うのは無理ゲーっぽい。
「大丈夫です。料理は、この馬車の中で行いますので」
「は……!? ば、馬車の中で……料理なんてできるのですか!?」
「はい。えっと……」
さて、なんて説明したもんか……。
自分で言ってて、料理のできる馬車、なんて、なんじゃそりゃ案件だし……。
「最新式……その、帝国式の最新、料理もできちゃう馬車なんです!」
……帝国なんてものがあるかしらんけど。とりあえずそれっぽいことを述べてみた。
「……そういえば、帝国で、寝泊まりや調理ができる魔道具の馬車が開発されたって、聞いたことあるような」
と魔女っぽい人がそうつぶやく。マジであるんかいっ。
「なるほど……帝国の魔道具なんですね」
「そうそう。じゃ、調理しますんで、皆さんは馬車でゆっくり休んでてください」
私はリダケンさんたちを連れて、キャンピングカーのもとへ向かう。
通常は私以外入れないが、私の許可があれば、他の人も乗ることができるのだ。
先に中にはいったリダケンさんが「な、なんだこりゃあ……!」と声を張り上げる。
「なか……トンデモなく広いぞ……!?」
「まじだ!」
「どうなってんだこりゃ!?」
そりゃ、ぱっと見ただの馬車 (キャンピー) の中が、まるでホテルかのような内装してたらね。驚くのも無理はない。
「帝国の最新馬車の中で、どうぞおくつろぎくださいな」
もう帝国の最新馬車でごり押ししよう。
料理売って、お金を稼いだら、バイバイする予定だし。
私はキャンピーの前に倒れている、黒猪の死骸の前へとやってきた。
「【素材化】」
ぼんっ、と黒猪が一瞬で、皮と牙、そして……肉に分かれる。
〜〜〜〜〜〜
黒猪の肉(最高品質)
【状態】超新鮮
【情報】余計な臭みもなく、脂がのっていて美味。
〜〜〜〜〜〜
魔物の肉を使った料理を、あの人らに提供しようという魂胆だ。
これなら、KAmizonで買い物しなくていいからね。
長野へ向かう途中、キャンプ用の調味料やお野菜らは、買ってキャンピーの中にいれてあるのだ。
素材化したものをアイテムボックスに収納して、キャンピーのもとへ戻る。
ごめんよ、キャンピー、一人にして。寂しかったかい? なーんてね。
キャンピーに人格なんかないんだけどもさ。
「おまたせしましたー」
リダケンさんと、【黄昏の竜】の面々は、床に座っていた。
ソファやベッドに座れば良いのに。
「しかし……すごいな、帝国最新馬車……。まるで超高級ホテルにでも泊まってるかのようだ」
「超高級……ホテル……?」
普通の内装のような気がするんだけど……。
まあ異世界人からすれば、高級に見えるのかもしれない。
「ちょっと待っててくださいね。パパッと料理作っちゃうんで」
私はキャンピー内のキッチンへと移動。
リダケンさんたちは、その場にしゃがみ込んで動けないようだった。
どうやら相当空腹らしい。
「よし、作るぞっと……」
そのときだった。
「!? た、大変だスミーさん! 外に……魔物が!」
リダケンさんが、キャンピングカーの窓のそとを指さす。
また黒猪だ。
「くそっ、おれたちを追ってきたのかっ。だが……戦う力がもう……」
「あ、大丈夫ですよー」
「いや大丈夫って……! やつの突進は大樹をへし折るほどなんですよ!?」
「だから、大丈夫ですって」
黒猪がキャンピングカーめがけて突進してきた。
だが、この野外活動車に搭載されたスキル、結界が発動する。
ぐしゃあぁ……!
「ま、魔物が……ぶつかって、圧死した!?」
「しんじらんねえ……」
「まるで頑丈な城壁に魔物が突っ込んできたみたいだったわ……」
「すげえ……」
キャンピーは結界で、魔物の侵入を防いでくれたようだ。
「ほら、大丈夫でしょう? だから大人しく座って待っててくださいな」
「…………ああ、すまない。正直もう空腹が限界で……」
リダケンさんはあんま追求してこなかった。
空腹で頭が回っていないのと、これ以上突っ込む余裕もないんだろう。
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