其の九十六「24時間営業の除霊の名所」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
心霊スポット巡りをした後、直接自宅に帰ってはいけない――
そんな話を、あなたは聞いたことがあるでしょうか。
理由は単純で、“憑いているかもしれないもの”と一緒に帰ることになるから。
だから、心霊スポット巡りをした後は、家に戻る前にどこかへ寄り道をする。
コンビニでも、ファミレスでも、どこでもいい。
とにかく一度、自宅とは別の場所に立ち寄ることで、
憑いてきたものをその場に置いていける可能性がある――
それもあってか、心霊スポットの近くにあるコンビニには、
“たくさんの霊がとどまっている”らしい。
初めてこの話を聞いたとき、私は
「それじゃあコンビニは除霊の名所みたいじゃない。お店もいい迷惑だなぁ」
と、思わず苦笑してしまいました。
そして、そのときふと、私の頭の中にひとつの物語が浮かびました。
これは、私がこの話を聞いて考えた“怖い……かもしれない(笑)作り話”です。
◇◆◇
ある地方都市(場所は控えさせていただきます)に、
古くから“幽霊が出る”と噂される心霊スポットがあった。
地元の人間なら誰でも知っている、曰くつきの廃トンネル――
そのトンネルのすぐそばには、ぽつんと一軒だけコンビニエンスストアがある。
街灯も少なく、夜になると周囲は真っ暗。
もう少し立地を考えなかったのか、と疑いたくなるほどの場違いさ。
そんな闇の中で、コンビニの照明だけが白く浮かび上がっていた。
そして、このコンビニの店長は、霊感がとても強いらしい。
それは地元では有名な話で、
「店長は、心霊スポット帰りに立ち寄った客に憑いた霊を、密かに剥いでいる」
そんな噂まで囁かれていた。
深夜。廃トンネルで肝試しをしたと思われる若者たちが、笑いながら店に入ってきた。
「いらっしゃいませ」
店長はレジに立ちながら、ふと視線を彼らに向け、そして小さくつぶやいた。
「おやおや……またか」
若者たちの背後に、ぼんやりとした影が揺れている。
彼らは全く気付いていない。
だが、その影は確かに“ついてきて”いた。静かに、音もなく、しかし確実に。
店長は、誰にも気づかれないよう小さな鈴を取り出し、そっと鳴らす。
チリン……と、かすかな音が店内に溶けた。
その瞬間、空気がソワワワと揺らぎ、
影はまるで音に吸い寄せられるようにして、若者たちから離れていく。
若者たちは買い物を済ませ、楽しげに店をあとにした。
そして彼らについて来た“何かの影”は――
店内に留まり、ゆっくりと店の奥、バックヤードへと吸い込まれるように消えていった。
あの廃トンネルで彼らに憑いて来た影は、
このコンビニ店長の手で、誰に知られることもなくそっと剝がされたのです。
店長は慣れた手つきで鈴をしまい、
「今日も一体、置いていかれたか……」
と、ため息交じりに呟いた。
そんな“お憑かれの客”が、このコンビニには毎晩のようにやってくるという。
あなたがもし、心霊スポットに行った帰りに、
近くにぽつんと佇むコンビニを見かけたら――
家に帰る前に、必ず寄ることをおすすめします。
そして、できればたくさん商品を買っていきましょう。
……店長への、ささやかな感謝のつもりで。
この話、本当なんです。
◇◆◇
これが、私の作った「除霊コンビニエンスストア」のお話。
もし本当にそんな店があったとしたら、
店長はどれほどの“影”を引き受けているのでしょうか。
そして、あなたが何気なく立ち寄ったコンビニにも、
もしかしたら、誰かが知らぬ間に置いていった“何かの影”が、
ひっそりと残っているのかもしれません――
最後にもう一度。
心霊スポット巡りをした後、直接自宅に帰ってはいけない――
このことを、覚えておいてください。
この話は、本当なんです。




