其の九十五「幽霊の足跡」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
今回は、とても短いお話です。
友人からこの話を聞いた私は、その内容の裏側に潜む、
背筋がゾゾゾとする“別の想像”が浮かび上がってしまいました。
幽霊の足跡――そんな話を聞いたことはありますか?
これは、私の友人が語った短い怪談です。
◇◆◇
市内にある〇〇〇アパート(場所については控えさせていただきます)。
その一室、一〇五号室の玄関前には、何年も前から――
まるで誰かが“そこに立ち続けていた”かのように、整然と揃った足跡が残っているという。
その部屋は事故物件というわけではない。
しかし、この薄くぼやけた足跡の不気味さのせいなのか、
いつしか「一〇五号室の前には幽霊が立っている」という噂が囁かれ始めた。
噂は瞬く間に広まり、〇〇〇アパートはいつしか
“幽霊アパート”と呼ばれるようになっていた。
だが、この話……どこか引っかかる。
幽霊の足跡?
そもそも幽霊が足跡を残せるのか?
いや、幽霊に“足”などあるのだろうか?
では――
あの玄関前に、何年も前から残り続けている足跡は、
一体“何者”が、“何のため”に刻んだものなのか。
この話、あなたは――どう思いますか。
◇◆◇
友人からこの怪談話を聞いて、私の頭に真っ先に浮かんだのは、
話の中にもあった「幽霊に足はあるのか?」という疑問でした。
それは、日本の幽霊像を思い浮かべるせいかもしれません。
それはそれとして、何年も消えないあの足跡は……何なのか。
そのとき、私の脳裏に“幽霊ではない姿”がよぎり、背筋がゾゾゾとしました。
――幽霊の足跡だと噂されているが、実は、人間が足跡を残しているのではないか?
幽霊だと思われていたものが、実は“生きた人間”の残した足跡だったとしたら。
では、その足跡の主は、なぜ毎回、同じ場所に足跡を残し続けているのか。
理由の分からない“生きた人間”の行動の方が、幽霊よりよほど恐ろしい――
私は、そんなことを思ってしまったのです。
あなたの身近にも、説明のつかない“サイン”が残されていることはありませんか。
この話、本当なんです。




