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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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其の九十「本物はその扉を開けない」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



誰もいないはずなのに、まるで誰かが通るかのように開く自動ドア──

そんな話を耳にしたことがある方は、少なくないかもしれません。


しかし、これからお話しする出来事は、そうした噂話とは少し趣が異なります。

これは私が、実際にその体験をした方から聞いた、不思議で、どこか背筋がゾゾゾと冷えるお話です。


◇◆◇


この出来事を語ってくれたのは、Tさんという男性でした。

その日、Tさんは友人のKさんと買い物に出かけていたそうです。


二人はアウトドアが共通の趣味で、キャンプや釣り、登山など、休日にはよく一緒に出かける仲でした。

この日は、Kさんが新しいテントを購入するため、Tさんが車を出して、某市にあるアウトドア用品店へ向かっていました。


その店は開店してまだ二年ほどの新しいお店で、初心者からベテランまで満足できる品揃えを誇るソロキャンプ用品専門店。

Tさんの話を聞きながら、アウトドアが趣味の私も思わず興味をそそられたほどです。


しかし、その店にはひとつ、妙な噂がありました。


──自動ドアが、誰もいないのに開くことがある。


店長は怖い話が好きな方らしく、「幽霊に反応して開くんだよ」と笑いながら話していたそうです。


Tさんはその時、冗談だろうと軽く受け流していました。


ところが、その日。二人が店に近づいたそのとき、明らかにセンサーの範囲外にもかかわらず、自動ドアがスッと開いたのです。


「あ、開いた……K、何か見えた?」


Tさんがそう尋ねると、霊感のあるKさんは首を振りました。


「ん? なにも。偶然か、ただの誤作動じゃねぇ?」


その言葉に、Tさんは少し安心したといいます。やはりあれは店長の冗談だったのだろう、と。


◇◆◇


Kさんがテントを選んでいる間、Tさんは店長と雑談をしていました。

自動ドアの話をすると、店長は「バレたかー」と笑いながらも、ふと真顔でこんなことを口にしたそうです。


「扉を開けずに、そのままスーッと入ってくるからね。本物は。」


「え? 本物の幽霊、来るんですか?」


「信じるか信じないかは、Tさん次第。ハッハッハッハ。」


店長は冗談めかして笑いましたが、その目だけは、どこか笑っていなかったように見えたといいます。


やがてKさんがテントを選び終え、会計を済ませました。


「それじゃあ店長、また来ます。」


二人は店を出ようと、自動ドアへ向かいました。


その時、Kさんが小さく「あ……」と声を漏らしました。

Tさんは「買い忘れでもあったのか」と思いましたが、Kさんは歩みを止めず、そのまま出口へ向かいました。


自動ドアが反応し、扉が開きます。

そして、二人が外へ出た瞬間──Kさんが立ち止まり、静かに言いました。


「いま……何か、扉を抜けてきた。」


Tさんは思わず振り返りました。しかし、そこには誰もいません。

ただ、閉まりかけた自動ドアがあるだけでした。


「……閉まってたよな、今」


「うん。閉まってたけど、何か通っていった。ほら、たまにいるじゃん。扉とか壁とか、関係ないやつ。」


Kさんは淡々とした口調でそう言いました。

その表情は、冗談を言っている人のものではなかったといいます。


そのときTさんは、店長の言葉を思い出しました。


──扉を開けずに、そのままスーッと入ってくるからね。本物は。


その瞬間、Tさんは背筋がゾゾゾと冷たくなるのを感じたそうです。


二人は足早に店を離れ、そのまま帰路につきました。それ以来、Tさんはその店に行っていないといいます。ただ、お店自体は今も変わらず営業しており、ソロキャンパーの間ではちょっとした人気店になっているそうです。


◇◆◇


誰もいないのに開く自動ドア──

私は、それは幽霊に反応して開いているのだと、どこかで聞いたことがありました。


しかし、この話では、本物の幽霊は自動ドアに反応しない。扉を開けず、ただすり抜けていく。


以前、部屋から閉め出された幽霊が、まるで開けてくれと言わんばかりに

激しくインターホンを鳴らし続けたという怪談を聞いたことがあります。


幽霊は壁をすり抜けるのか、すり抜けないのか。


そこで、私はひとつの仮説を立てました。


其の八十七「幽界修行」で書いたように──

キャリアの長い幽霊は、レベルアップして壁をすり抜けられるようになるのでは?


もしそうなら、あの店の自動ドアをすり抜けて入ってきたのは、

もしかすると“レベルの高い幽霊”だったのかもしれません。


店長は言いました。


「扉を開けずに、そのままスーッと入ってくるからね。”本物”は。」


その“本物”とは──いったい何を指す言葉なのでしょう。


◇◆◇


この話、本当らしいので、

興味のある方は様々なお店の自動ドアを観察してみるのも良いかもしれません。


ただし、どうか自己責任で。


私は……怖いので、ご遠慮します。


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