其の八十八「写り込んだどちら側かの誰か」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
少し前、プログラマーを仕事にしている友人(M美)に、私のPCの不調を見てもらったときのことです。
原因を探るために彼女があれこれ操作している横で、私たちは何気ない世間話をしていました。
その流れで、ふと彼女がこんなことを語ったのです。
「そういえば咲良。創作怪談のアイデアになるかわからないけど、最近グーグルアースで、ちょっと変なものを見たんだよね。」
彼女が唐突に語り始めた、グーグルアースにまつわる怖い体験談。
最初、私はそれを軽い気持ちで聞いていました。
なぜなら以前、グーグルアースにまつわる怪談を耳にしたことがあったからです。
私が以前聞いたことのあるグーグルアースの怪談は、こんな内容でした。
◇◆◇
グーグルアースに映る人の顔には、プライバシー保護のため自動でぼかしが入る。
しかし、時にただの壁の模様や木の影、窓ガラスの反射──
本来ぼかす必要のない場所に、ぽつんと不自然なモザイクがかかっていることがある。
処理を行っているAIは、時に“顔ではないもの”を顔と誤認してしまうからだ。
しかし、その中には時に、AIが“幽霊の顔”を認識したからぼかされたのでは……という話。
私は、彼女の話もその類だと思っていたのだが――
◇◆◇
「グーグルアースのスクショを撮ったら……そこに“顔”が写ったのよね」
彼女は淡々とした声で言った。
スクリーンショットを撮る直前、モニターに映っていたのはただの風景。
なのに、撮った画像には──“人の顔”が写り込んでいたという。
「最初はバグかと思って、何度も同じ場所を確認したんだよ。
でも、やっぱりグーグルアース上には何もないのに、スクショにははっきりと顔が写り込んでいたの」
怖がる様子もなく肩をすくめる彼女とは対照的に、私は思わず息をごくりと飲んでいました。
スクショにだけ現れる顔。本来存在しないはずのものが、画像として“残る”。
それはいったい何なのだろうか?
◇◆◇
PCの不調の原因を探るため淡々と操作を続ける彼女の横で、私は恐る恐る尋ねました。
「ねえ、M美……その顔って、どんな感じだったの?」
彼女はマウスを動かす手を少し止め、考えるようにしてから答えました。
「うーん……すごく特徴があるとかじゃなくて、本当に普通の人の顔なんだけどね。でも、なんていうか……“こちらを見てる”って感じが強かったかな。何となく“意識”があるような……」
その言葉に、私は背筋がゾゾゾと冷たくなるのを感じました。
撮ったスクショに写り込む“意識のあるような顔”。
グーグルアース上には何もないのに、スクショには映るそれは──
グーグルアースの画像の中に潜んでいるのか。それとも、スクリーンショットを撮った“パソコンの中”に潜んでいるのか。
「M美、そのスクショは……?」
私がそう聞くと、彼女は苦笑しました。
「消したよ。取っておいても気味悪いじゃない。」
彼女は冗談を言うタイプではない。むしろ、理屈と技術で物事を判断する人です。
そんな彼女が“怖い”と言って消したスクショ。
一体それは、何だったのでしょうか。
◇◆◇
スクリーンショットを撮ると、その画像に写り込む幽霊らしきそれ。
それは、グーグルアースの画像の中に潜んでいたものが写ったのか。
それとも、スクリーンショットという“行為”に反応して取り込まれた画像に写り込むのか。
あなたはこれ、どちらだと思いますか。
この話、本当なんです。




