其の八十六「幽職考察(ゆうしょくこうさつ)」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
何だか無性に「焼き鳥をおつまみにビールを飲みたい」気分を満たすため、
私は友人──A子さんとします──を誘い、居酒屋に来ていました。
そんな中、A子さんがふとこんなことを聞いてきました。
「怪談を連載してると、お化けが寄ってくることとかないの?」
言われてみれば──
◇◆◇
創作怪談の連載を始めて三カ月。
元々怖がりな私は、書き始めた頃こそ“何か出そう”と、毎日のように背筋がゾゾゾと怯えながら執筆していました。
でも今は……慣れ、なのでしょうか。
怖い話は好きでも霊感は全くない。そんな私でも、毎日怪談を書いていれば、そのうち霊感が育つかも? なんて淡い期待を抱いたこともありました。
しかし実際はどうしたことでしょう。
怪談を書く側になったことで、霊感が育つどころか、むしろ“怖さ”そのものに鈍くなっている気がします。
最近は、怖い話を聞いても恐怖より先に興味が湧き、気づけばその怖さの構造を分析してしまう始末です。
そんな会話の中、ふと思うことがあった私は、いつものノートに短いメモを取りました。
◇◆◇
一夜明けて、今日の仕事を始める前。
私は昨夜の居酒屋で書いたメモについて、AIを使って調べてみました。
そのメモは──「幽霊が寄ってきやすい職業」。
毎日創作怪談を書いている私は今、幽霊や“怖さ”に対して
どんどん鈍感になっている気がしています。
それはまるで、幽霊や怖さがどんどん離れていくかのように。
では逆に、幽霊が“寄ってきやすい”仕事とは何だろう?
そんな疑問が昨夜、焼き鳥とビールの余韻とともに頭に浮かんだのです。
ノートパソコンを開き、軽いストレッチを終えた後、早速調べてみました。
「幽霊が寄ってきやすい職業は? 5つ挙げてください。」
私の問いにAIはこう答えました。
◇◆◇
面白い問いですね。「幽霊が寄ってきやすい職業」というのはもちろん迷信や物語的な発想ですが、心理的・文化的な背景を踏まえて、よく語られる“幽霊が寄ってくる”とされる職業を5つ挙げてみます。
幽霊が寄ってくる(と噂される)職業
① 看護師・介護士
生と死の境界に日常的に触れる職業。
病院や施設で「霊が寄ってくる」「見える人が多い」と語られることも。
② 葬儀屋・火葬場職員
霊的な存在と“最も近い”仕事とも言われる。
儀式や供養に関わるため、霊が安心して寄ってくるという説も。
③ タクシー運転手
深夜に乗車する“消える乗客”の怪談が多い職業。
特に事故現場近くや心霊スポット周辺での体験談が豊富。
④ 神職・僧侶
霊的な存在を鎮めたり導いたりする役割を持つため、「霊が頼ってくる」とされる。
逆に“守られている”という説もある。
⑤ 清掃員(特に夜勤)
廃墟・病院・学校など、霊的な噂のある場所を掃除することがある。
夜間の静寂と孤独が“霊との遭遇”を語られやすくする。
補足:
これらはあくまで“怪談的な語られ方”であり、実際に幽霊が寄ってくるかどうかは不明です。
ただ、人の生死・孤独・境界領域に関わる職業ほど、物語や噂の中で“霊が寄ってくる”とされやすい傾向があります。
◇◆◇
……なるほど。
物語や噂の中の話であっても、この答えを読むと、どこか腑に落ちる。
特にこの一文。
「人の生死・孤独・境界領域に関わる職業ほど、物語や噂の中で“霊が寄ってくる”とされやすい傾向があります。」
そして、自分の仕事である「作家・ライター」がこの中にないことに、私は少し残念、でもどこか安心してしまう……そんな複雑な気持ちになりました。
それはそれとして。
実はこの中に、過去の雑談や、現在取材で“実際に怖い体験談を語ってくれた方”の職業が含まれています。
だからこそ、AIの返したこの一文──
「これらはあくまで“怪談的な語られ方”であり、実際に幽霊が寄ってくるかどうかは不明です。」
これについて私は思うのです。
「この一文、本当なのか」と。




