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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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其の八十弐「後先」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



これは心理学に興味を持っている私の友人から聞いた話。


彼女は話を終えたあと、私にひとつ質問しました。

あなたにもそれを一緒に考えてほしいと思い、今これを書いています。


彼女の話──それは、ある事件の話でした。


◇◆◇


女性の幽霊が出るという噂の場所で、女性の遺体が見つかった。

遺体が見つかった場所が心霊スポットと呼ばれることはよくあるが、

この場所では“幽霊が出るという噂”が、遺体の発見につながった。


これを知るまで彼女は、心霊スポットとは「人間の認知バイアスから生まれた特定の場所」だと思っていたと言います。


例えば、確証バイアス。


「ここで事件があって被害者の幽霊が出るらしい」と聞いた瞬間、人は“幽霊がいる証拠”を探し始める傾向があります。

コツコツという小さな物音や、ゆらりと風で揺れただけの影など、普通なら気にしないものを“やっぱり何かいる!あれは幽霊だ”と解釈してしまう現象。


または、プライミング効果。


事前に「この場所で事件があって被害者女性の霊が出る」と聞くと、脳はその情報に引っ張られ、

その場所で女性の影や声を“見た気がする・聞いた気がする”状態になりやすくなる現象。


しかしです。


その場所で、そういった噂が囁かれる前に「ここで幽霊を見た」という目撃者が現れ、

何のいわくもないただの場所のはずが、実は事件現場だったことがわかったケースでは、

彼女の考える心霊スポットの分析は崩れます。


事件があった場所だから幽霊が出るという噂になり心霊スポットとして広まったのではなく、

幽霊が目撃されたという噂が広まったことで、その場所が事件現場だったと判明し、遺体が発見される。


順序が真逆なのです。


◇◆◇


「霊感少女風間さん。これ、どう思う? 心霊スポットと言われる前から幽霊が出る、この場所のこと。」


「ちょっと、そんな昔の話を。」


思わず笑ってしまったのですが、内心、私の背筋はゾゾゾとしていました。


彼女の話しているのは、多分「秩父貯水槽殺人事件」のことだと思います。

この話を初めて聞いたとき、私は本当に怖く思いました。


世の中にはたくさんの心霊スポットがあります。

それぞれに様々ないわくがありますが、幽霊が出ると言われた場所が実は死体遺棄現場だったという話を聞いたのは、これが初めてだった記憶です。


そして思ったのです。


心霊スポットではない場所、心霊スポットと思えないような場所で幽霊を見たとき、そこはもしかすると事件現場なのかもしれない? と。


◇◆◇


あなたはこの話、どう考えますか。


ちなみにこの「秩父貯水槽殺人事件」は、本当にあった話です。

詳しくは、検索してみてください……



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