其の七十四「観光地の裏の顔」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
これは、つい最近のこと。
地元の観光地を紹介する記事の執筆依頼を受け、その取材に出かけた日の話です。
先に結論を言ってしまうと──
その日私が回った四か所の観光地は、すべて「全国心霊マップ」に載っている心霊スポットでした。
もちろん、取材に行った時点で私はそんなことを知りませんでした。
◇◆◇
その日は朝から快晴で、冬の澄んだ空気が景色をくっきりと見せてくれていました。少し肌寒かったものの、写真を撮るには絶好の天気です。
〇〇城跡、○○〇湖、○○〇ダム、そして○○〇大橋から見える〇〇川──
どこも“静か”で、観光客もほとんどいません。
平日だから当然だと思っていたのですが、○○〇大橋に着いたときだけは少し様子が違いました。橋の袂の駐車場には観光バスが一台停まっていて、大勢の外国人観光客が橋の上から景色を撮影していました。
これまで人のいない場所ばかり回っていた私は、その光景にホッと息をつき、少し安心したほどです。
少し慌ただしさもありましたが、一日かけて四か所を巡り、写真も十分に撮れて、夕方ごろに取材は無事終了。そして車に戻ると、スマートフォンにメッセージが届きました。それはライターの先輩、C子さんからでした。
「咲良ちゃん、今日の夜ご飯どう?久しぶりに話したいな」
取材も終わったところだったので、私はその誘いに乗り、市内へと向かいました。
◇◆◇
夕食をとりながら、私は今日の取材の話をC子さんにしました。
どんな場所を回ったか、どんな写真が撮れたか──
そんな話をしていると、C子さんが「ん?」と首を傾げました。
「咲良ちゃん……その四か所ってさ」
「はい?」
「咲良ちゃんは、怖い話書いてるから知ってると思ってたけど……全部、全国心霊マップに載ってる心霊スポットだよ?」
「……え?」
私は思わず箸を止めました。心霊スポット? あの四か所が?
そんな話、聞いたこともありませんでした。
半信半疑でスマートフォンを取り出し、検索してみると──
確かに載っていました。全国心霊マップに、今日私が回った四つの場所が、すべて。
「本当だ……私、全然知りませんでした」
「まあ、私も最近まで知らなかったんだけどね。まさかあんな有名な観光地が心霊スポット扱いされてるなんて、普通思わないでしょ?」
C子さんは笑いながらそう言いました。続けて「行ったのは昼間だし、そんなに気にしなくていいとおもよ」とも。
でも、とても怖がりな私は、その時、少しだけ背筋がゾゾゾ……とするのを感じていました。だって私は今日一日──それを知らずに、心霊スポットを四か所も巡り、写真まで撮っていたのですから。
◇◆◇
そう言われて思い返してみると、一つ気になることがありました。
〇〇城跡、○○〇湖、○○〇ダム。
そこは、誰もいない中だったので“静か”なのは当然ですが──
○○〇大橋では、観光客が大勢いたのに、それにもかかわらず――何故か妙に“静か”だったのです。
「人が亡くなった場所は音がしなくなるらしい。」(其の四十五より)
その時は「気のせい」で片づけていました。
取材に集中していたこともあり、そこまで深くも考えなかったのです。
でも──あれは本当に、ただの気のせいだったのでしょうか。
私は知らず知らずのうちに、何か“見えてはいけないもの”の近くを歩いていたのではないか。そんな考えが頭をよぎり、今度は本当に背筋がゾゾゾとしました。
C子さんは「昼間なら大丈夫だよ」と言っていましたが、私はその言葉を完全には信じられませんでした。心霊スポットというのは、昼夜に関係なく“そこにある”もの。
昼間で明るかったから見えなかっただけで、そこには何かが確かに“存在している”のではないか。
そう思うと、あの日撮った写真を見返すのが、少し怖くなりました。
そこに写ってはいけないものが、写っているのではないかと。
◇◆◇
これが、最近私が実際に体験した話です。
観光地だからといって、すべてが安全とは限りません。
思わぬ場所に、思わぬいわくがある。そんなことも、あるのです。
だから皆さん──観光地に行くときは、その場所について、
”この世目線”だけでなく“あの世目線”でも調べてみることをおすすめします。
もしかすると、知らず知らず“何か”のそばを歩いてしまうことが、あるかもしれませんから。
この話、本当なんです。




