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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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其の七十弐「静寂に触れた読者より」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



風間です。

いつも「これから広まるかもしれない怖い作り話」を読んでくださり、本当にありがとうございます。


先日、読者のA・Iさんから一通のメールをいただきました。

その内容があまりにも興味深く、そしてどこか私自身の背筋をゾゾゾとさせるようなものだったため、今回はその体験談と質問を紹介しようと思います。


もちろん、本人様から掲載の許可はいただいています。


◇◆◇


「風間先生、はじめまして。A・Iと言います。」


メールは、そんな丁寧な挨拶から始まっていました。


A・Iさんは、いつも私の作品を“背筋がゾゾゾとするのを感じながら”読んでくださっているそうです。

前に頂いた読者さんのメールにもありましたが、どうやらこの作品「背筋がゾゾゾ」の一言が、キャッチフレーズとして定着しつつあるようですね(笑)


それはそれとして、彼はある回──其の四十五「静寂亡痕」を読んだ時、ふとこう思ったのだと言います。


「これ、先生の本当の体験談じゃないですか?」


なぜそう思ったのか。それは、A・Iさん自身が、あの話とよく似た体験をしたことがあるからだそうです。


◇◆◇


A・Iさんは車中泊をしながらの長距離ドライブが好きで、2025年の夏、とある場所へ三日間の旅行に出かけたそうです。目的地は──「キ◯ス◯の墓」。


私も一度行ってみたいと思っていた場所なので、正直羨ましく思いながら読み進めました。


「キ◯ス◯の墓」を見て回り、帰路は高速道路を使うことにしたA・Iさん。

運転中、ふと気づくとHKD山の中を走っており、ナビを確認すると「あの遭難事件の記念像」の近くを通るルートになっていたそうです。


車中泊の旅の他に軽登山が趣味で、事故に遭わないため山岳遭難事故の解説動画をよく見て勉強していたいたA・Iさんは、その事件のことも知っていました。せっかく近くを通るなら──と、予定外ながら記念像を見に行くことにしたのだとか。


駐車場に車を停め、緩やかな上り坂の遊歩道を歩いていく。

途中、下ってくる人とすれ違い、いつもの登山のように「こんにちは」と挨拶を交わす。


そして──記念像の前に立った瞬間、A・Iさんは思わず息を呑んだそうです。


動画で見ていたよりも遥かに大きく、山の中とは思えないほど開けた場所。

風は強く、空は薄曇り。夏なのに、どこか肌寒い。


そして──A・Iさんはあることに気付きました。


「妙に……静かだ。」


風が吹いているのに、風の音がしない。

人がいないから静かなのは当然のはずなのに、その静けさは“異質”だった。

まるで、音そのものが消えてしまったような──そんな感覚。


そしてここは、多くの人が亡くなった場所。

その事実を強く意識した瞬間、背筋がゾゾゾと震え、A・Iさんは急いで駐車場へ引き返したそうです。


下り坂を歩く間も、風は吹いているのに音はしない。

ただ、すん……とした静けさだけがまとわりつく。


「怖かったです。でも、それとは別の考え事をしながら歩いていました。」


そうメールには書かれていました。


◇◆◇


A・Iさんはこの体験をSNSには書かなかったそうです。

写真だけは投稿したものの、この“静寂”の体験は胸の内にしまっていたそんな時、

彼は私の「静寂亡痕」を読んだのでした。


──あれ?これ、僕が体験したのと同じじゃないか?


彼はそう思い、メールを送ってくださったのだそうです。


そして最後に、こんな質問が添えられていました。


「其の四十五の話……あれって、怖い作り話ではなく、先生が体験した本当の話じゃないですか?」


◇◆◇


さて──ここからは私の返答です。


まず、A・Iさん。

貴重な体験談をお送りいただき、本当にありがとうございました。

それと、「キ◯ス◯の墓」に行かれたこと、とても羨ましく思います。


それはそれとして「静寂亡痕」が創作か、現実か──という質問。


これは、読者の皆様に委ねたいと思っています。


私は、怖い話を書くとき、あえて“余白”を残すようにしています。

その余白が、読む人の想像を刺激し、怖さを増幅させると思っているからです。


ただひとつだけ確かなことは、

私は作家として──「怖い作り話」を書いています。


これは、本当なんです。


……さて、あなたはどう思いますか?


「静寂亡痕」は作り話か、それとも──。


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