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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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其の四十九「信じるものは救われる」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。



信じるものは救われる。 あなたはこの言葉を信じますか?


これは私が先日、あるECサイトで偶然見つけたものについてのお話です。


その日、あるECサイトで探し物をしていたとき、ふと私の目に留まったのは、いかにも怪しげなグッズでした。分かりやすい例えを言うなら、それは雑誌の最後に載っている「幸運のブレスレット」のようなもの。 ただ、それには異様なほど高い評価とたくさんのレビューがついていたのです。


「これを身につけてから仕事がうまくいくようになった」


「病気が治った」


「家族が幸せになった」


信じている人がレビューしているから評価が高いのか。それとも、本当に効果があるのか。


その内容が、あまりに好意的、いえ、どこか狂信的にも見えたことから

私はどこか冷めた目でそれを見ながら、呆れたように笑っていました。


そしてその夜。私は、こんな夢を見ました。


夢の中で、私はそのブレスレットを手にしていました。

冷たい金属の感触。 腕に巻いた瞬間、視界が暗くなり、耳鳴りが響きました。


「信じるものはー救われるー」


そっと誰かが囁いたのです。 声は優しく、しかし、どこか底知れぬ不気味な響きを持っていました。

私は必死にブレスレットを外そうとしましたが外れない。

それどころか腕に食い込むように締め付けられ、ギリギリと皮膚に跡を刻んでいきます。


「信じるものはー救われるー」


再びその囁きが聞こえました。 その声は、私の頭の中に直接響いているようでした。


目が覚めたとき、私は汗びっしょりになっていました。

夢だと分かっていても、腕にはギリギリと締め付けられたあの感触が

残っているような気がするほどでした。


私は慌てて昨日見たECサイトを開きました。

しかし、そこには、昨日見たはずのブレスレットのページがありませんでした。

まるで最初から存在していなかったかのように、検索しても出てきません。


その時、私はあの「信じるものはー救われるー」という言葉を思い出し

ゾゾゾと背筋が冷たくなりました。


私はこれを、本当は信じるものへの「救い」ではなく、

信じるものへの「呪い」なのではないかと思ったのです。


信じることで救われるのではなく、信じることで縛られる。

信じることで、見えない何かに惹かれ、抜け出せない沼に取り込まれてしまう。


レビュー欄に並ぶ「喜びの声」は、果たして本当に喜びだったのでしょうか。

それとも、もしかするとこれは、信じることで、そこから逃れられなくなった人々の

これに手を出してはいけないという「静かな警告」だったのではないでしょうか。


「信じるものは救われる」


その言葉は、人を逃がすことなく縛りつける呪文なのかもしれません。


そしてこう思うのです。


レビュー欄に並んでいた人々は、「救われた」のではなく「取り込まれた」のではないかと。

信じることで、彼らはそのブレスレットに魂を捧げてしまったのではないかと。

だからこそ、彼らは「幸せになった」としか書き込めなかった。


あのレビュー。それは本当の幸せの声ではなく、

逃れられない「呪いの中での静かな抵抗」だったのかもしれません。


「信じるものはー救われるー」


その言葉は、その声は、今も時々、私の頭の中に響くことがあります。


あなたはその言葉を信じますか?

信じれば救われるのか。 それとも、信じた瞬間に呪われるのか。


私には、どちらが正しいのか分かりません。


ただ一つ言えるのは……


あのブレスレットのページは、今探しても見つからないということです。

いえ、もしかするとそれは、今もそれを信じている者にだけ、辿り着ける場所にあるのかもしれません。


信じるものは救われる。 あなたはそれを信じますか?


そしてこの話、本当だと思いますか?

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