其の四十八「正当防衛」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
世の中で言う、「忌み地に手を出すと呪われる」という話。
私はその言葉を聞くたびに、こんなことを思います。
もしかしたら呪いは「そこを住家とする幽霊たちの正当防衛」なのではないかと。
人は土地を整備し、家を建て、道を造り、街を広げていきます。
しかし、時にその土地にはすでに「見えない住人」がいるとしたら。
見えないからといって、そこに誰もいないとは限らない。
人の目には映らなくても、そこを住家とする幽霊たちがいたとしたら。
彼らにとっては、そこが唯一の居場所。
他人の都合で住家を奪われてはたまったものではありません。
だから、幽霊はそこに手を出そうとする者を呪うのではないでしょうか。
昔、私はある土地の話を聞きました。
そこは長い間、誰も近づかない空き地。その理由は簡単で、「あそこに家を建てると必ず不幸が起こる」と言われていたからです。
実際に、そこには過去、何度か家が建てられました。
しかし、そこに住んだ人は皆、病に倒れたり、事故に遭ったり、家族が不幸に見舞われたりして、結局数年で家を手放すことになったのです。
それを見て人々は「あそこは忌み地だ」と言いました。
しかし、私は思うのです。そこは忌み地ではなく「幽霊たちの住家」だったのではないか、と。
幽霊も、ただそこにいるだけではないのです。
勝手に人が踏み込んでくれば、当然抵抗するでしょう。
それは人間で言えば、正当防衛のようなものです。
ほとんどの人には見えないとはいえ、住家を奪われるのは彼らにとっては切実な問題です。
自分たちの住家を奪われないために、彼らは呪いという形で人を追い払う。
「忌み地に手を出すと呪われる」という言葉は、そうした幽霊たちの抵抗を伝えるものなのかもしれません。
人は幽霊を恐れます。 けれど、幽霊からすれば、人間こそ恐ろしい存在なのかもしれません。
見えないことをいいことに、彼らの住家を壊し、奪い、踏み荒らす。
だからこそ、幽霊はそんな人々を呪うのではないか。
それは怨念ではなく、彼らからしてみれば、正当防衛。
「忌み地に手を出すと呪われる」という話は、幽霊たちの必死の抵抗を伝える言葉なのではないかと思うのです。
そして、もしその場所に手を出そうとすれば…… あなたもまた、呪われることになるでしょう。
それは幽霊たちの正当防衛。 彼らにとっては、住家を守るための当然の行為なのだから。
だから、もしあなたが「忌み地」と呼ばれる場所に関わることになったなら。
そこに手を出す前に、よく考えてみてください。
その土地には、すでに住人がいるのかもしれないのです。
そしてその住人は、あなたの目には見えないだけなのです。
この話、本当と思いますか?




