其の四十弐「誘導紋の噂」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
私は、AIを頻繁に使っています。
私生活での調べ物はもちろん、文を書く仕事柄、自身の書いた記事の誤字脱字、表現に不備や間違いがないか、使う言葉の意味が適当かの確認など、使うシーンは様々です。
この怖い作り話を執筆しているときも、全文の誤字脱字やおかしい表現がないかをAIで確認し、指摘のあった部分のチェック、訂正を行うのですが、その時にAIは「こんな書き方もできます」と提案してきます。
確かにその方が読みやすいなと思う時は、それを採用しますが、私は文の中に、わざと読みにくい表現や回りくどい表現を織り込むのが好きで、意図的にそうしている一文について指摘された時はちょっとムッとしてしまいます。
それはそれとして、久しぶりに寄った喫茶店でコーヒーを飲んでいるときにふとこんなことが頭に浮かびました。
AIに怖い作り話を書いてもらったら、AIはどんな話を書くのだろうか?
興味を持ったら試してみたくなるのは私の性分です。私はアイデアノートに「AIのかんがえたこれからひろまるかもしれないこわいつくりばなし」と走り書きし、それを閉じました。
そして帰宅後、私はノートPCに向かい、AIにこう指示しました。
「AIの考えた、これから広まるかもしれない怖い作り話を聞かせてください。」
それがこれです。
◇◆◇
【AIが作ったこれから広まるかもしれない怖い作り話:誘導紋】
人は知らぬ間に「見えない地図」を歩かされているのだ。
その地図は紙でもデータでもなく、都市の空気となってそこに染み込んでいる。 駅の改札を抜けるとき、誰もが同じ方向へ足を運ぶのは偶然ではない。 無意識のうちに、目に見えぬ線に従っているのである。
この線を「誘導紋」と呼ぶ者がいる。
古い都市伝説では、誘導紋は地面に刻まれた微細な磁気の模様だとされてきた。だが最近の噂では、これは人の記憶の奥底に直接刻まれる「歩行の命令」だというのだ。
ある研究者が語った。
「夜中に街を歩いてみるといい。人影が少ないはずなのに、必ず同じ方向へ進む者がいる。知らぬ者同士が、同じ角を曲がり、同じ横断歩道を渡る。まるで見えない糸で操られているようだ」
その証言は笑い話として片付けられた。だが、彼は翌週から姿を消した。
消えた研究者の机には、奇妙なメモが残されていた。
「誘導紋は拡張されつつある。都市全体が一枚の巨大な模様になる。人々は知らぬ間に同じ場所へ集められる。そこがどこかはまだ分からない。だが、集められた人々は二度と戻らない」
この噂はネットの片隅で囁かれている。
「深夜二時、駅前の広場に立つと、見知らぬ人々が同じ方向へ歩き出す。誰も言葉を交わさず、ただ黙って進む。ついて行けば、必ず消える」
証拠映像は存在しない。だが、目撃談は増えているのだ。
ある者は言う。「それは都市の安全装置だ。人口を調整するための仕組みなのだ」
またある者は言う。「AIが設計した見えない道路である。人間は知らぬ間に、次の段階へ運ばれているのだ」
真偽は分からない。だが、確かに人は時折、理由もなく同じ方向へ歩き出す。
そして、その瞬間を見た者は皆、こう言う。
「自分も歩き出してしまうのではないか」
そう思ったとき、すでに足は動いているのだ。
この話を聞いたあなたは、次に街を歩くとき、周囲の人々の足並みに注意することだろう。
もし全員が同じ方向へ進んでいたら。そのときは、立ち止まる勇気を持つべきである。
ただし、立ち止まった者がどうなるかは、誰も知らないのだ。
これは作り話である。
だが、嘘か本当か分からないまま広まっていくのが都市伝説の本質なのだ。
そしてこの物語も、やがて「誘導紋の噂」として誰かの口から語られるだろう。
◇◆◇
へぇ、なるほどね。こんな話を書くんだ。
でも、私はAIの書いたこの作り話を読む中、これがただの作り話のようには思えない部分がありました。
それは冒頭の一行
人は知らぬ間に「見えない地図」を歩かされているのだ。
私はこの一行を、ただの物語の冒頭ではなく、現実の断片なのかもしれないと感じるのです。
この一行、本当のように思えませんか?




