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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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其の参十八「負のパワースポット」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。

これは、私の友人から聞いた話です。


それは彼女と友人A、Bの三人で、某県某所(場所は伏せさせていただきます)のパワースポットへ日帰り旅行に行った帰りの車の中での会話でした。


友人Aは若い頃、仲間たちと月に一回心霊スポット巡りをしていたという、生粋のオカルト好き。友人BもAほどではないにせよ、怖い話や都市伝説が好きなのだそうです。私の友人自身も、怖い話を聞くのは好きな方で、帰りの車内はちょっとした怪談談義の場になっていたそうです。


そこで、友人Aがこんな話をしたのだといいます。


「今日行ったのはパワースポットだけど、“負のパワースポット”もあるんだって。」


彼女はその言葉に首をかしげました。聞き慣れない言葉だったからです。


パワースポットといえば、訪れることで心や体が元気になれる「特別な場所」。では、負のパワースポットとは?単純に真逆と考えれば、訪れることで心や体が元気をなくす「特別な場所」ということになるの?と彼女が尋ねると、友人Aは「そうそう、大体合ってる!」と頷いてこう言いました。


「行くと元気をなくす場所で、大体あってるよ。行ってみる?」


「今からわざわざ元気をなくす場所に行きたくないよー」


「それもそうだねー」


車内は三人の笑い声に包まれ、そのまま帰宅したそうです。


その話を聞いた私は、友人に「負のパワースポット」はどこにあるのか尋ねました。でも、彼女はその場所を教えてくれませんでした。そして、にやりと笑ってこう言ったのです。


「きっと、行ったことあると思うよ。負のパワースポット。」


私は首を傾げました。そんな場所に好んで行った記憶など全くないのだから。怪訝な顔をする私に、彼女はにんまりと微笑んで「すぐに気づくと思うよ」と言い、その日は別れました。


そして次の日。


私は仕事でクライアントと会うため、ある会社へ向かっていました。普段はオンラインで打ち合わせをしているのですが、その日は重要な内容ということで、直接会議室で行うことになったのです。私は車を運転しながら、どこか気が重いと感じていました。


本音を言うと、できれば私は、人と対面で仕事の話はしたくないタイプです。だからこそ、今向かっている先はまさに、負のパワースポッ……


「あ……」


その瞬間、私の頭に、にんまりと微笑んで「すぐ気づくと思うよ」と言った彼女の顔が浮かびました。こういうことか、と。


負のパワースポットは、遠くの山奥や廃墟にあるのではなく、私たちの日常のすぐそばに潜んでいる。行くと心が重くなり、体がだるくなる。理由は分からないけれど、そこに足を踏み入れるだけで、何かを吸い取られるような感覚になる。


負のパワースポットは、特別な場所ではなく、誰もが日常で訪れている場所なのだと。学校、職場、病院、人によって違いはあっても、必ず「行くと元気をなくす場所」がある。


そこは、顔は笑いながらも心の奥では避けたいと思っている場所。

なるほど。友人の言葉が、じわじわと、私の現実に重なっていきました。


負のパワースポットは、身近な存在。誰もが一度は足を踏み入れている。気づかないうちに、私たちはそこに吸い寄せられ、力を奪われている、かもしれません。


これは、私の友人から聞いた話。負のパワースポットは、確かに存在するのです。


どうです、この話。本当だと思いませんか?



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