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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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38/55

其の参十六「友熊牛話」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。

これは先日、友人たち四人との食事会での会話から生まれた「怖い?」作り話です。


月に一回、私は長年の付き合いになる友人と四人で食事会をしています。

出会った頃は二十代だった私たちも、今は四十代。

エンジニア、プログラマー、イラストレーター、そして小説家の私。

それぞれの仕事、それぞれの生活がある中で、今もこの時だけは若い頃と変わらない調子で、くだらない話や真面目な話に花を咲かせています。


そんな中、私は最近書いている「怖い作り話」の中で、どうしてもアイデアが浮かばない題材について悩んでいることを打ち明けました。


これまで私が書いてきた怖い話は「幽霊や怪奇現象」を題材にしたものばかり。

そんな中、前々から挑戦したいと思っている「宇宙人や未確認生物」を題材にした怖い話が、どうにも形にならないのです。


「幽霊は書けるのに、宇宙人は難しいんだよね」と私が言うと、友人たちは笑いながらも真剣に考えてくれました。


そして、話し合った結果、こんな奇妙な物語が生まれました。


◇◆◇


【衝撃!宇宙人の侵略か!?街に出没する熊たちは、宇宙人によって洗脳されていた!?】


宇宙人の拠点は富士山。富士山の地下では、日本中の山から捕獲された熊が集められ、宇宙人の技術で洗脳されている。そして、洗脳された熊たちは山から街へと降りて行き、人々を恐怖に陥れる。 それに対抗するため、政府はついに対熊用駆逐兵器「ウシロボット」の開発に着手した!


◇◆◇


「ちょっと待って、これサメ映画のシナリオじゃない?」


私は思わず笑っていました。


しかし、勢いに乗った話は止まりません。熊宇宙人洗脳説はどんどん膨らみ、ウシロボットの細かい設定まで飛び出してきました。牛型の巨大兵器が熊と戦う姿を想像して、私たちは笑いながらも、どこか冷たい視線と空気を感じていました。


それは、全国で実際に熊の被害が出ているからです。ニュースでは連日のように熊の目撃情報や被害が報じられています。実家の近くでも熊が出たという話を聞き、私は心配になっていました。そんな現実の中で、熊が宇宙人に洗脳されているという作り話を語るのは、不謹慎だと言われても仕方がないかもしれません。


それでも、私たちは語り続けました。笑いながらも、どこか冷たい視線を感じながら。


「もし本当に熊が宇宙人に洗脳されていたら?」


「もし富士山の地下に、宇宙人の拠点があったら?」


「もし政府が、密かにウシロボットを開発していたら?」


「というかどうしてロボットは牛なの?」


私たち四人は、若い頃からずっとこうして語り合ってきました。くだらない話も、真剣な話も、そしてこの荒唐無稽な作り話も。


熊の被害が現実にあるからこそ、こんな話が、どこか“怖い話”に変わっていくのかもしれません。


これが、私たち四人の会話の中で生まれた「怖い?」作り話です。

まったく怖い話になっていないかもしれません。

でも、実際に熊が街に出没している今、この話を思い返すと、笑いながらも背筋がぞくりとするのです。


そして私は思いました。こんなふうに語り合える友達がいることに、感謝しなければならないと。

くだらない話を笑い合いながらも、どこかで現実と恐怖を共有できる仲間がいることに。


これは先日の食事会で生まれた「怖い?」作り話。

まったく怖い話にはなっていないのかもしれません。ですが、この話、本当なんです。



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