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これから広まるかもしれない怖い作り話  作者: 井越歩夢


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19/55

其の十七「幸せアプリ」

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない

いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。


全部で壱百八話。どれも短い物語です。


しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、

時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、

時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。


そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。

これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。


この話、本当なんです。

これは、友人から聞いた、ちょっと怖くて不思議な話。


「幸せアプリ」というスマホゲームがあるらしい。

そのゲームをスマートフォンにインストールして起動すると、

最初に画面に「目を閉じてください」と表示される。

指示に従って目を閉じ、心の中で「幸せ」を強く念じながら画面をタップする。

それだけで、アプリがプレイヤーを「幸せになれる場所」へと導いてくれるという。


導かれる場所。それは人によって違うらしい。

ある人は行きつけのカフェに導かれ、そこで運命の人と出会った。

またある人は今まで行ったことのない街に導かれ、そこで思いがけないチャンスを掴んだ。

どの導きも、その場所に行ったプレイヤーに「幸せ」をもたらしていたという話だ。


ただ、このゲームにはひとつだけ注意点がある。


それは「幸せを念じているときに、一瞬でも不安な想像をしてはならない」ということ。


ほんの一瞬でも、「失敗したらどうしよう」「誰かに笑われたら」「事故に遭ったら」

そんなイメージが頭に浮かんでしまうと、アプリはその「不安の気配」を読み取り、

導く先が「不幸になる場所」に変わってしまうのだという。


実際、ある人は「幸せな未来」を思い描いていたつもりが、

ふと一瞬「でも、そんなの叶うわけない」と思ってしまった。

その結果、アプリがその人を導いた先は、誰もいない廃墟のような場所だったという。

画面をタップした直後に交通事故に遭ったプレイヤーもいるらしい。


導かれた先が「不幸」だったのか、それとも「不幸を引き寄せた」のか。

それは誰にもわからない。


私はその話を聞いて、思わずこう言った。


「引き寄せの法則がゲームになったみたいだね」


すると、友人は少し笑ってこう返した。


「違うよ。ゲームが引き寄せの法則になったのだよ」


その言葉に、私は少しぞくりとした。果たして、これはどちらが先なのか?

人の願いがゲームを動かすのか。ゲームが人の願いを形づくるのか。

それとも、もっと別の何かが人の心の奥にある「想念」を拾い上げて、

現実に反映させているのか。


「幸せアプリ」は、ネット上でも噂になっているらしい。

だが、正式な配信元は不明で、検索しても見つからないことが多いという。

ある人は「深夜にだけダウンロードできる」と言い、

ある人は「誰かから直接送られてくる」と言う。

中には「夢の中でインストールした」と語る人もいるらしい。


本当に存在するのかどうか、それすら曖昧だ。

でも、確かに「使ったことがある」と語る人はいる。

そして、彼らは口を揃えてこう言う。


「使うときは、絶対に不安になっちゃダメだから。」


それは、まるで忠告のようだった。


私はまだそのアプリを見つけていない。

でも、もし見つけたら、そのときは使ってみたい気もする。

目を閉じて、幸せを念じながら、画面をタップする。

でももしその時、頭の中にほんの一瞬でも「不安」がよぎったら…


私の導かれる先は、どこになるのだろう。


この話は本当らしいので、ぜひ、アプリを探してみてください。

ただし、使うときは、くれぐれも気をつけて。


あなたの「幸せ」が、ほんの一瞬の「不安」によって、

不幸になる場所へと導かれてしまうかもしれませんから。



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