其の九十九「推定十段」
これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない
いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。
全部で壱百八話。どれも短い物語です。
しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、
時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、
時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。
そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。
これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。
この話、本当なんです。
たぶん皆さんもこの話は有名な怪談、都市伝説なので、どこかで聞いたことがあると思います。
でも、聞きはしても体験したことのある方は、ほとんどいないのではないでしょうか。
この話は、最近私が聞いた「推定十段」という短い怪談話。
それは、こんな内容でした。
◇◆◇
どうも、〇〇〇〇〇〇〇です。
まずこの話、どこにあるどの建物の事か、
場所が特定できそうな部分は伏せさせていただきます。
これは、誰もがよく耳にする、またはしているであろう「階段」の「怪談」であります。
この話に名を付けるのであれば「推定十段」。十段ではありません。推定十段でございます。
もうここまでお聞きになれば、「ああ、知ってる」という方もいるのではないか。
どうですか?知っているという方、右手を斜め33度で上げてください。
……おや、全員角度が違いますので、この話は誰も知らないということと理解します。
では、お話ししましょう。推定十段。
先にもお話したとおり、場所が特定できそうな部分は伏せさせていただきます。
どこにあるどの建物で起きた出来事かは語りません。が――
この世のどこかに「毎回段数が変わる階段」が存在するという話。
残念ながら33度の挙手をされた方がおらず、皆様この話をご存じないようですので、まず“段数の変わる階段”について詳しくお話させていただきます。
登るたびに段数が変わる階段は、学校や古いビルで語られる怪異のひとつであります。
その階段、上るときと下りるときで段数が違ったり、同じ階段なのに毎回数が変わるとされており、
中には特定の段数を踏んだとき“異空間”への扉が開かれるとの噂もあります。
この話の手軽さ――いや、失礼。
この“日常に近い不気味さ”もあって、長年語り継がれる怪談、都市伝説であります。
さて、この話は本当なのか?ただの都市伝説なのか?
あなたがどう思おうと、私の知ったことではありません。
ただ、こんな話があるといいます。
この段数の変わる階段、「十段の階段」らしいというのです。
段数の変わる十段の階段――すなわち「推定十段の階段」というわけです。
さて、ここまでお聞きになった皆さんはお気付きかと思います。
この話、どこにあるどの建物で起きた出来事か、
場所が特定できそうな部分は伏せさせていただいております。
ということは……解りましたね?
以上、〇〇〇〇〇〇〇でした。
ご清聴、ありがとうございました。
◇◆◇
――やられた。
この話を聞いた私は、即座に“ある意味の呪い”をかけられたも同然だと気付きました。
何の呪いか?それは、「推定十段の階段」の呪い。
怪談師さんはこう言っています。
「この話、どこにあるどの建物で起きた出来事か、場所の特定できそうな部分は伏せさせていただいております。」
私は最初、場所が特定されることで怪談マニアが集まらないようにするための配慮だと思っていました。
でも、それは違います。
場所が特定できない「十段の階段」ということは――
これから私が目にするこの世に存在する十段の階段は、すべて……
「お気づきになったようですね。これからあなたが目にするこの世の全ての“十段の階段”が、この“推定十段の階段”なのかもしれないという事であります。」
耳元で怪談師さんがそっと囁いたかのようで、私は背筋がゾゾゾと冷たくなるのを感じました。
この話、本当かどうかはわかりません。
でも、皆さんも今後、十段の階段にはご注意ください。
もしかするとそれは――「推定十段の階段」かもしれません。




