◆SS1 妊娠!?
ちょっと、おまけの話です。
四話ほどになります。毎日投稿していきますね!
「……え?」
クラーラの言葉を聞いて、私は思わず聞き返してしまった。
「おめでとうございます! フランシェ様、お腹に赤ちゃんがいるわ!」
クラーラが満面の笑みで私の手を取り、興奮気味に告げる。
最近は私の呼び名がお嬢様ではなく、フランシェ様になったのだ。あ、いやそっちはどうでも良い!
へ? 赤ちゃんですって!!
「そ、そんな……本当に?」
信じられない気持ちで、お腹に手を当てた。
まだ目立つ変化はない。けれど、確かに、最近は少し体がだるく感じたり、食の好みが変わったりしていた。
「ふふ、私はすぐに気づきましたよ。だって、最近のフランシェ様は、妙にジャガイモばかり食べたがるし、朝に少し気分が悪くなることもあったでしょう?」
「そ、そうかもしれないけど……」
「それに、ターシュエルの医療係の人たちも、同じ診断でしたよ!」
クラーラが胸を張る。
「フランシェ様、本当におめでとうございます!」
「……ありがとう」
じわりと喜びがこみ上げる。
(私、本当に……お母さんになるんだ……!)
「グララド様……」
私は、グララド様の執務室へと向かった。
報告書を確認していた彼は、私の顔を見て微笑む。
「フランシェ、どうした?」
私は少しだけ緊張しながら、彼の前に立つ。
「……あの、実は……」
一呼吸おいて、私は伝えた。
「赤ちゃんが……できたの」
その瞬間——
ガタン!!
グララド様が、立ち上がる勢いで椅子を倒した。
「なっ……!」
「ちょっ、椅子が!」
私は慌てて、彼の倒れた椅子を戻そうとするが、彼はそれどころではない様子だった。
「フランシェ……本当に?」
「ええ、医療係の診断でも、間違いないって」
「そうか……!」
グララド様は、一瞬呆然とした後——
「俺たちの……子供が……!」
そう言って、私の肩を優しく抱きしめた。
「よかった……本当に、よかった……!」
彼の大きな手が震えているのがわかる。
「でも……どうしよう……」
「え?」
「出産経験のある者を呼ぶべきか? いや、それでは、もしもの時に間に合わないかもしれない。ターシュエル領には貴族の出産に詳しい者が少ないし……!」
(あれ、何だか急に不安になってきたみたい……?)
「フランシェ、大丈夫か? 何か気になることは? 体調は? 何か食べたいものは?」
グララド様は、急に私の腕を取って、まるで診察でもするかのように私を見つめた。
「そ、そんなに慌てなくても……」
「いや、これは大問題だ!」
彼は真剣な顔をして続ける。
「出産は命に関わる。ターシュエル領内に専門家が足りないなら、王都から助産婦を呼ぶべきか……いや、待て、誰が信頼できる? 万が一、医療の不手際があったらどうする……?」
「グララド様、少し落ち着いて」
「落ち着いていられるか!」
彼の青い瞳が真剣すぎて、私は少し笑ってしまいそうになった。
「大丈夫よ、ちゃんと準備すれば問題ないわ」
「しかし——」
「だからこそ、王都から母を呼ぶことにしましょう」
その言葉に、グララド様は一瞬固まった。
「お、お義母上を……?」
「ええ、母なら安心だし、貴族の出産経験もあるわ。それに——」
私はくすりと笑う。
「母一人だと不安でしょうから、クラーラのお母様も一緒に来てもらうことにしましょう」
「クラーラの母上?」
「ええ。実は、クラーラのお母様は昔、母の専属侍女だったのよ」
グララド様は、驚いたように目を見開いた。
「そうなのか……?」
「ええ、だから母が妊娠した時も、クラーラのお母様がずっと支えてくれていたの」
「なるほど……」
グララド様は腕を組んで、しばし考え込んだ後、頷いた。
「確かに、それなら安心できそうだな」
「でしょう?」
「すぐに迎えを送る手配をしよう」
数日後、王都に使いを送ったところ、母とクラーラのお母様はすぐに準備を整え、ターシュエル領へ向かうことになった。
「いやぁ、まさかこんなに早く孫の顔を見ることになるとはねぇ!」
母のエレオノールは、馬車の中からにこやかに手を振っていた。
「お母様!」
私は急いで駆け寄る。
「ふふ、フラン、元気そうで何よりだわ」
母は相変わらず優雅な笑顔だった。
そして、その後ろにいたのは——
「本当に、相変わらずですね、エレオノール様」
上品な微笑みを浮かべた女性。
クラーラの母、マルグリット・ド・モントルイユ夫人だった。
「お久しぶりです、マルグリット様」
「お久しぶりです、フランシェ様。おめでとうございますね。でも走ってはいけませんよ。もし、こけたりしたら大変です」
彼女は母と違い、どこか落ち着いた雰囲気の女性だった。そしてさっそく怒られてしまった。
「フラン、あなたの体調管理は、私とマルグリットがしっかり見ますからね」
「ええ、お願いします!」
母が来てくれたことで、私の心はすごく安心した。
(これで、大丈夫……!)
しかし——
「いやぁ、せっかくだから領地の様子も見て回りたいわねぇ」
「エレオノール様、まずはフランシェ様の体調が最優先です」
「え、ええ。そうねぇ、でもまぁ、せっかくの機会だし」
「お義母上……」
グララド様が、なんとも言えない顔をしていた。
(そういえば、お母様がグララド様と会うのは、結婚以来かも……?)
なんだか、これからまたちょっとした騒動が起こりそうな気がする。
——妊娠発覚からの騒動は、まだ始まったばかりだった。
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