第36話 決戦の夜明け
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王太子アドリアンの裁きが下されると同時に、私とグララド様はすぐさま王都を発った。
「私たちは、ターシュエル領に戻って魔物を抑えます」
「よかろう」
国王陛下は私たちの決意を静かに受け入れた。
宰相も、「王都として正式な支援を検討する」と言っていたが、間に合うかどうかはわからない。
私たちは急ぎ馬を走らせた。
砦に異変が起こっていると、本能が訴えていた。
(間に合って……!)
焦りを抱えながら、私は手綱を強く握りしめる。
王都を出て四日目。
途中の監視塔で、私たちは砦の状況を確認するため立ち寄った。
「ターシュエル砦の状況は?」
グララド様が鋭く尋ねると、監視塔の兵士は顔を青ざめながら答えた。
「現在、砦は持ちこたえております。しかし……」
「しかし?」
「魔物の数が異常に増えています。まるで……暗黒の森が生きているかのようです。」
私は背筋が冷たくなるのを感じた。
「生きている……?」
「ええ。魔物は無尽蔵に現れ、倒しても次々に湧き出ているようです」
「……!」
グララド様と目を合わせる。
(ただのスタンピードではない……!)
「砦に急ぎましょう!」
私たちは再び馬を駆った。
そのころターシュエル砦では――
「くそっ……! 押し返せ!」
ルーカスの叫びが響く。
砦はすでに限界に近かった。
騎士たちは疲れ切り、領民たちも武器を手に取り戦っていた。
砦の防壁はすでに半壊していた。
ジョアンヌとイザベル は短剣を駆使しながら、魔物の弱点を的確に狙う。
「後退しないで! 押し切られるわ!」
「わかってる! でも、こいつら……!」
彼女たちの足元には、倒した魔物の死骸が転がっていた。
しかし、それらの一部が——
ゆっくりと蠢き始める。
「……!? 生きてる……?」
イザベルが驚愕の声を上げる。
「違う! 再生しているのよ!」
ジョアンヌの声と同時に、倒したはずの魔物が再び動き出した。
「再生……!? そんな……!」
「普通の魔物じゃない……!」
砦の騎士たちは、疲弊しながらも必死に持ちこたえていた。
「まだやれる……!」
ダルクスは疲れ切った身体を押しながら、剣を構えていた。
「執事長、もう休んでください!」
近くにいた兵が叫ぶが、彼は首を横に振る。
「ここで私が倒れたら、誰が兵たちをまとめる?」
彼の剣筋は、若い頃に比べれば衰えている。
それでも、動きを封じる一撃はまだ健在 だった。
「さすがは、俺の師匠だ」
ルーカスが苦笑しながら、彼の背を守るように剣を振るった。
「執事なんてやってる場合じゃないな」
「余計なことを言うな、坊主……!」
息を切らしながらも、彼の目には戦士としての誇りが宿っていた。
砦の奥では、村の奥様たちが大鍋で蒸かした芋を配っていた。
クラーラがフランシェと共に王都に行っているので、その間は村の奥様たちが担当していた。
「ほらほら! 食べて元気を出しな!」
疲れた領民や騎士たちが、次々と芋を受け取る。
「……身体が軽くなってきた!」
「痛みが引いていく……」
「やっぱり、癒しの芋だな!」
この不思議な芋の回復力が、砦の士気を支えていた。
「さすが、私のフランシェ様の発明品だよ!」
彼女は誇らしげに言いながら、せっせと芋を配り続けた。
しかし、もはや砦の防衛は限界だった。
——その時。
「砦の門を開けろ!!」
雷のような声が響いた。
砦の門が開かれ、私たちが駆け込む。
「グララド様、フランシェ様!!」
ジョアンヌやイザベル、ルーカスさんが驚きの声を上げる。
「みんな、無事でよかった!」
私たちは馬を降り、すぐに状況を確認する。
「ルーカス、報告を!」
「魔物の数が異常に増加、そして——倒しても復活する個体がいる」
「……!」
やはり、異変は本物だった。
「このままでは、砦が持ちません!」
ルーカスさんの言葉に、私は決断する。
「聖壁を張ります!」
私は砦の中心へと駆けた。
「オーラ・セレスティア!」
私が両手を広げると、黄金の光が砦を包むように広がる。
「う……っ!」
魔力が一気に消耗し、膝が震える。
(持ちこたえなくちゃ……!)
「フランシェ!」
グララド様が隣に立ち、支えるように私の肩を抱く。
「俺が前に出る。お前は聖壁の維持に集中しろ」
「……はい!」
私は砦を覆う光の壁に全神経を集中させた。
私は砦の中心で、「聖壁」を張ることに全神経を集中していた。
(……この魔物の数、尋常じゃない……!)
体力の消耗が激しく、額に汗が滲む。
しかし、ここで聖壁を解くわけにはいかない。
——その時。
「フランシェ様!!」
砦の見張りの兵士が、悲鳴のような声を上げた。
「なに……?」
私は顔を上げ、見張り台の方を見た。
「森が……森が動いています!!」
「森が……動いている?」
私は目を凝らしたが、ここからでは見えない。
「グララド様!」
「見てくる!」
グララド様はすぐさま砦の前線へと向かった。
ルーカスさんと数人の騎士たちも、武器を構えながら森の方へと走る。
そして——
「これは……!」
砦の前方、暗黒の森。
その奥で、何かが蠢いている。
黒い影のようなものが、地面から浮かび上がり、形を成していく。
「これは……! まるで……森が生きているみたいだ……ただの防衛戦じゃ済まないな」
グララド様の呟きが、砦全体に緊張をもたらした。
――その時、再び魔物の大群が押し寄せ砦を包囲した。
「くそっ……また来やがった。ちっとも数が減らねえ!」
砦の外で迎撃するルーカスさんが、歯を食いしばる。
グララド様が剣を振るい、騎士たちが次々と魔物を斬り伏せる。
しかし、倒しても倒しても、魔物は再生するかのように現れ続けた。
「このままでは……っ!」
ダルクスもイザベルとジョアンヌと共に戦い続けている。
領民たちも剣を持つ者も居れば、農耕具を持って戦う者も居る。
まさに総力戦になっている。
砦を守る「聖壁」は、まだ持ちこたえていたが——
(時間の問題だ……!)
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