第42話
初めての感覚だった、刀を振って当たったのに手応えが無かったのは。
転生して初めての出来事だ。
これまでは絶対に手応えがあるはずなのに…、急に現れた男はまるで効いてない様子だ。
男はニヤリと笑う。
「何だ?その程度か?」
そう言って男は俺が刀を当てた場所をボリボリと掻く。
…こいつは化け物か?
「ハルさんから離れろ!」
こいつはヤバいからさっさとハルさんから距離を取らせないと!
俺はさっきよりも刀に力を込める。
ガッ!!
当てた瞬間切れない事を悟った。
だからとりあえず距離を取りたいからこいつを飛ばす事した。
「おっ」
バシャーンッ!
近くの海に筋肉だらけの巨漢野郎を打ち飛ばした。
痛ってぇ!
手が痺れる。
何だ?俺は今、巨大な鉄球を打ったのか?
こんな手応えではあいつには傷一つ付かないのを刀が当たった瞬間から感じたから俺は急いでこの場から離れたかった。
「逃げましょう!ハルさん」
俺は本気である事をハルさんに表情で伝える。
「…うん」
俺の本気が伝わったのかは分からないけどハルさんもこの状況が異常だということは察してくれたようだ。
後のことなんか考えずにとりあえずこの場から離れないとまたあいつがやってくる。
「ハルさん!」
早くこっちに引き寄せて一緒に逃げようとして、俺は手を差し出す。
「…」
ハルさんは俺の手を取る事を躊躇う。
「おいおい、逃げようとするんじゃねぇよ」
もう戻ってきたのかよ…。
大男は濡れた体でこちらに歩み寄ってくる。
「お前の目的は何だ!」
もしかしたらこいつの目的がハルさんじゃ無いかもしれない。
俺はただの勘違いを願い大男に目的を問う。
「その女だよ。リーダーが探してたからよ」
やっぱりこいつの目的はハルさんで間違いはないらしい。
「お前は何者だ!なぜハルさんを狙う!」
「知ってるくせに白々しいなぁ」
「何をだ!」
「そいつを狙う理由をだよ」
「…まさか」
「そう、ファントムだからだ」
…嘘だろ。
「…どうして」
ハルさんは信じられない、と手で口を抑える。
「俺はあっちの方に興味が無かったからなぁ。俺はこっちのグラナミ闘技場最強トーナメント戦の方が興味をそそられた」
こいつは団体行動をせずに単独でこっちに来たのか。
だったら他の奴らはオズマサール学園の学園祭の方に行ってるのか。
ここに来てるのがこいつ1人だけなのを知れてちょっとだけ安心する。
「なのによぉ来てみたらもう終わってるじゃねぇか!ガッカリしたぜ」
こいつは脳筋なのか?日にちを分からずに来たのか?
「だが、ターゲットの女がこっちに来てたのラッキーだったな」
そう言って大男はハルさんを見る。
ハルさんは大男に見られた事が怖かったらしく俺の後ろに隠れる。
「まさかこっち目的がバレてこんな遠くに身を隠してるとはなぁ」
こいつただの脳筋じゃない。
俺たちがこっちにいる事であっちの目的がバレてる事を考察して当ててやがる…。
クソッ、どうすればこの状況を打破できる。
「お前邪魔だな」
瞬間、俺の目の前に拳が飛んできた。
「…死んだな」
「嘘…。嘘だよね、ジン」
「安心しろ、ちゃんと一発で殺したから」
「嘘!嘘嘘!こんなのでジンは死なない!」
ハルさんはブンブンと首を振る。
「はぁ〜諦めの悪い女だ。もうそいつは死んでる」
「信じない!ジンは死んでない!」
「うるせぇ女だ。来い、お前をアジトに連れていく」
大男はハルさんの腕を掴もうと手を伸ばす。
「触らないで!」
「じゃあ気絶してもらうしかないな」
大男は拳を振り上げる。
「待て」
俺は痛みに耐えながら立ち上がる。
「ハルさんに触れるな」
「お前良いな」
大男は口角を上げる。
大男は伸ばした手を引っ込めた。
「良いぜ、お前と戦って満足したら見逃してやるよ」
「ぶっ殺してやるよ」




