第41話
告白する場所と時間が決まればもうやる事は決まっている。
ただひたすらにハルさんから好かれる事だ。
だが、それはほとんど達成していると言っても過言ではない。
まず、ガーメルからの危機を救った事だ、あれでハルさんの心を掴んだに違いない。
もうこれで決まったと言っても良い、掴んだものを離さないで有名な俺が言うんだから間違いない。
あと、コミュニケーション能力の高さかな。
ミカンを売ってたおっちゃんに気軽に話しかけてる所を見たハルさんはきっと俺の事を陽キャでカッコいいと思ったはずだ。
極め付けはグラナミ闘技場最強トーナメント戦での優勝だ。
強い男はモテる。
転生前で言ったら足が速い奴がモテる、ように強い奴もモテるに決まってる。
だからハルさんは確実に俺に惚れている。
じゃあ残りの時間は何をするのかって話になるが安心してくれ、ただ一緒の時間を過ごせば良い。
それだけで相手のことを好きになるものさ。
だから最終日までは特に動きを見せずにただ一緒に過ごした。
「もう最終日ですね」
「早いね」
「もうちょっと遊びたかったですね」
「まだ回ってない所あるしね」
「そうですね」
「でも、楽しかったよ」
「もちろん俺も楽しかったですよ」
楽しかった話をしているのに何故かしんみりとした雰囲気になってしまっている。
「あっちは大丈夫なのかな?」
あっち、というのはきっとオズマサール学園の学祭の方だろう。
もしかしたら今頃ファントムが攻め込んできている時かもしれない。
「大丈夫だと思いますよ」
俺はハッキリと言い切った。
「どうして?」
「あっちには師匠がいますから。師匠がいたらファントムかダムダムか知りませんけど余裕ですよ」
「そうだと良いけど…」
やっぱり自分が狙われてるのに他の人が頑張ってるの気が引けるのだろう。
だけどこれはサテライトの人たちが決めた作戦だからハルさんがそんな事を考えるのは違う。
「こっちにファントムが来なかった事を喜びましょうよ。こっちに来てたらせっかくの旅行が台無しですよ」
良かったよ、俺の仕事が無いって事は平和な証だから。
「そうね、…そうね」
それでもハルさんの表情は明るくならない。
そんなハルさんの表情を見て、俺は少し焦ってしまった。
「ハルさん。海岸に行きませんか?」
「良いけど…、どうして?」
「あそこで歩きたくなったので」
「…別に良いけど」
ハルさんがあまりに暗かったから何かしないと思って出した答えがこれだった。
絶対に早いのは分かってるけど止められなかった。
言ってしまったのならもう覚悟を決めるだけだ。
俺はハルさんに告白をする。
***
告白するにしては時間が早すぎるかもしれないけど、ここで決めたらこの後が楽しいから。
ほら、帰りの馬車とかイチャイチャし放題だし。
デメリットを挙げるよりメリットを探した方が良いに決まってるから真似してみてほしい。
「早い時間でもここは綺麗ですね」
「そうね」
こんな綺麗な場所なのに人が1人もいない、だが、それは俺にとっては好都合な事だ。
綺麗な場所、誰もいない2人だけの空間、こんなに良い告白スポットある?
…もう今しかない!
「ハルさん!」
「ん?」
「俺…、俺!ハルさんの事が!」
もうここまで来たら引く訳にはいかない!
イケッ!いってしまえぇぇ!
「ん?この女、リーダーが探してた奴じゃないか?」
「「…?!」」
俺とハルさんの間に急に男が現れた。
…こいつはヤバい。
こいつが一体誰なのか、怪我をさせたらどうしようとか、そんなのを考える前に俺はすぐに刀を抜き、急に現れた男に刀を振り抜く。
「なんかしたか?」
男は無傷だった。




