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第40話

 俺は走った。


 転生後初めて本気で走った。


「どうでした?」


 見事にグラナミ闘技場最強トーナメント戦に優勝した俺はハルさんの所に行って褒めて貰おうとする。


 観客のアホどもはブーイングしかしなかったけどハルさんならきっと俺を褒めてくれるはずだ。


「感想は後で言うからまず息整えて」


 本気で走った反動で久しぶりに疲れて息を切らしてしまったようだ。


 肩で息をするのは転生前の体育のマラソン以来だ。


 違った、嫌な記憶で思い出さないようにしてたけど、師匠の稽古はそんな優しいものじゃなかった。


 あの人は息をする暇さえ与えなかった。


「どうでした?ちゃんと観てました?優勝しましたよ!」

 

「ちゃんと観てたから。すごかったね、まさかタカハシ選手にも圧勝するなんて」


「あったり前ですよ!あんな奴俺にかかればちょちょいのちょいですよ!」


「もしかしたらジンが負けて、残りの2日間ずっと落ち込んだら嫌だなって思ってたの」


「俺があんなチート使いに負ける訳ないじゃないですか!」


 でも、もし負けてたら2週間は落ち込んでたんだろうなぁ。


 さすがはハルさん、もう俺の性格を理解し始めてる。


「なんか表彰式あるみたいだけど行かなくて良いの?」


「良いんですよ、どうせ俺が行ったところでブーイングの嵐ですから」


 せっかくの晴れ舞台なのにブーイングの嵐は俺の心が折れる。


 しかも表彰されるとしてもレンとして表彰されるのが本当に嫌でならない。


 俺としてはハルさんに良い所を見せれたし、リベンジしに来るとしたらレンの所だから俺はもう大満足だ。


「そんな事より観光しましょう。まだまだ行った事無い所がいっぱいあるんですから」


 ここにいられるのもあと少しだけだから訳分からん人の話なんか聞いてられない。


「ジンがそれで良いなら良いけど…」


「行きましょ行きましょ」


 そして俺とハルさんはグラナミ闘技場を後にした。



 ***



 もうすっかり外も暗くなり少し肌寒い時間になっていた。


 俺とハルさんは海岸に来ていた。


 まさか異世界にこんな綺麗な海があるなんて思ってもみなかった。


 あ〜さざなみの音が心地いぃ。


 ただ歩いてるだけで今日の嫌な思い出が消えていく。

 

 街灯の数がちょうど良いんだよなぁ、このちょっとの明かりがいやらしいんだよ。


「綺麗な場所だね」


「そうですね」


 あなたといるから余計にこの場所が綺麗に思えますよ、は流石に恥ずかしくて言えなかった。


「私こんな外に出て散歩するの久しぶりなの」


「インドア派なんですか?」


 俺はどっちも楽しめれるからどっちを答えようと問題ない。


「外に出る事なんてないから…」


 ハルさんは少し悲しげな表情をした。


「今回はファントムに狙われてるけど普段も悪い奴らに狙われてるの」


「普段…も」


「だから小さい頃から誰かに守られながら生きてきたの」


「…そうなんですね」


 ハルさんはこんな事は今回に始まった事じゃないのか。


「ずっと続けばいいなぁ」


 ハルさんの表情は悲しげだった。


 

 どうして今思ったのかは分からないけど心がそう決めてしまった。


 

 

 最終日、ここで告白をしよう。


 


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