第39話
「ごめんなさい」
は?急に謝られたんだけど。
「何が?」
「ここまで勝ち上がってきたのに、私が決勝で」
「いえいえ、あなたみたいな綺麗な人と戦えるなんて嬉しい限りですよ。安心してください、手加減なんかしないから」
メンヘラになってたらから分からなかったけどこいつ女かよ。
こいつの顔を見たらなんか懐かしい気持ちになるのはどうしてだろう。
「そういう意味じゃないから、私強いから優勝しちゃったらごめんね」
カッチーン。
完全に頭にきちゃったよ。
「はーい、聞いてくださーい。俺こいつムカつくのでボコボコにするけど怒らないでねぇ」
俺は大声で観客を煽る。
普段ムカついてもこんな事絶対にやらないけど名前がレンだから遠慮なくできる。
「テメェがボコボコにされろ!」
「さっさとタカハシに謝れ!」
「死ねぇ!」
「お前の優勝なんか見たくねぇんだよ!」
俺は耳に手を当ててさらに観客どもを煽り散らかす。
『あー!やめてください!ゴミを投げ込まないでください!レン選手も煽るのは程々にしてください』
最初に煽ってきたのタカハシの方だからこれでおあいこさまだろ。
『もう収拾がつかないので始めてください!』
そんな始め方があるかよ…。
「スズラン」
タカハシは白いオーラを纏いながら俺に突っ込んできた。
確かにそれだったら俺以外の奴らはこれで終わりなんだろうな。
ギンッ
俺はそれを弾き返す。
「…嘘」
この大会で初めて攻撃を防がれたタカハシは動揺した。
やっとこいつの仏頂面を崩せて満足だ。
「手加減するなって言ってんだろ」
「分かった。今から全力でいく」
そうで無くちゃ面白くない。
「ハナミズキ」
タカハシの剣から白い斬撃が放たれる。
それを垂直斬りで防ぐが手応えがまるでない。
「とった!」
白い斬撃は囮で俺の背後に行く事が目的だったらしい。
「ヴゥッ!」
それを俺の長〜い脚で放つバックキックでまた防ぐ。
「どうした?俺はまだ一歩も動いてないぞ?」
こいつはまだ本気を出していない。
だから俺はこいつの本気を引き出そうと煽ってみせる。
「死んでも後で文句言わないでよ」
「言わねぇから全力で来い」
とは言ったものの今まで戦ってきた中ではかなり強い方になるな。
こいつの戦いを見てるとまだまだ強い能力に振り回されてるな、これが使いこなせれるようになったら怖い事になるぞ。
「ロベリア!ハルジオン!サクラソウ!」
タカハシは次々と攻撃を仕掛けてくるが全部一歩も動かずに防ぐ。
こいつの技名は全部花の名前で統一されてるな、綺麗で可愛いしかっこいい。
俺も必殺技が欲しいけど魔なしだからなぁ。
俺にも魔力があったらまず必殺技の名前から決める。
俺だったらそうだなぁ…、まぁ、今は思いつかないけど絶対にかっこいい名前にするな。
「はぁ…、はぁ…、はぁ…」
あれから30分くらい攻撃を続けたタカハシは肩で息をしている。
これがキツいところは体力じゃなくてメンタルの方だ、俺も師匠に攻撃を仕掛けるけど防がれ続けると心が折れてくる。
だけど、タカハシの眼はまだ死んでなかった。
「…これを使うつもりはなかったけど」
お、何か最終奥義が来そうだな。
タカハシは上に跳んだ。
「グラジオラス」
その瞬間無数の突きが俺に襲ってきた。
タカハシの鋭い突きはまるでフィールドに雨が降っているようだった。
すごい、まだこの世界にも強い奴がいるんだな。
俺は刀を振り下ろした。
「キャッ!」
俺の攻撃でタカハシを撃ち落とす。
落ちたタカハシの元に行って刀を突きつけた。
「まだ戦う?」
「いいえ、私の負けです」
タカハシは降参、と両手を挙げた。
『試合終りょ〜!第59回グラナミ最強トーナメント優勝はレン選手〜!』
アナウンスが流れた瞬間俺へのブーイングが止まらなかった。
「お前の優勝なんか見たくねぇんだよ!」
「卑怯者!」
「この嘘つき魔なし!」
最後はどうしてバレてるんだよ…。
「ありがとう。全力で戦ってくれて」
俺は尻もちをついてるタカハシに手を差し出す。
「こちらこそ」
タカハシは俺の手をとって立ち上がる。
「ねぇ、あなたってもしかして転s」
「あー!ごめん!俺行くところあるから」
早くハルさんの所に行って褒めてもらわないと。
…タカハシはなんて言おうとしたんだ?てん…?
…てんs。
…てんs
はっ!天才!




