第37話
まさか俺の我儘で出る事になっただけなのに、ハルさんにカッコいい所を見せるチャンスが訪れるとは。
闘えるし、カッコいい所を見せれる、まさしく一石二鳥と言っても良いくらい俺に運が味方してくれてる。
これはもしかしてもしかするかもしれないぞ。
見える、俺には見えるこのウエディングロードが!
今までに無いくらい今回ははっきりと見えてるぞ!
式場はどこにしようかな?
そもそもこの世界って結婚式っていう概念はあるのだろうか?
まぁ無くても勝手にやっちゃえば良いか。
さてと、サクッと勝って優勝しちゃいますか。
***
『皆さん大変お待たせしました。第59回グラナミ最強トーナメントの第1回戦第1試合です』
え、俺が第1試合なの?
あんな飛び込み参加の奴が第1試合ってどういう試合の決め方してんだよ。
『第1試合は優勝候補のトーン選手と飛び込み参加で初出場のレン選手です』
最初から優勝候補の奴と戦うのかよ。
これはちょっと俺のテンションが上がってこないな。
『本当はトーン選手の相手ががいきなり逃げ出してしまったので不戦勝のところをレン選手が飛び込み参加しましたのでこの第1試合が成立しました』
優勝候補にビビって逃げ出したのかよ、逃げ出すくらいなら出ようと思うなよ。
勝っていったらいつかは当たるんだから。
だが、逃げ出してくれたおかげで俺が出れる事になったからそれは感謝しておく。
当たり前だけど俺の歓声が一つも無いな。
「その命知らずをやっちまえぇ!」
「2秒で終わらせろ!」
「参加してきた事を後悔させてやれぇ!」
物騒なヤジが多いな。
「辞めるなら今のうちにしておいた方が良いぞ」
対戦相手のトーンとかいう奴が俺に話しかけてきた。
「下手したらお前の事殺してしまうかもしれないからな」
そう言って豪快に笑いながら自分の位置に戻って行った。
『位置についてください』
俺とトーンは向き合う。
「おいおいそんな爪楊枝みたいな棒でどうオレと戦うんだよ。それじゃオレに傷一つつかねぇよ」
俺のこんなイカす刀を何が爪楊枝だ、爪楊枝にしてはカッコ良すぎるだろ。
トーンの武器はめっちゃデカい斧だから爪楊枝って言われても仕方ないか。
「本当に良いのか?殺しても文句言うなよ。死んだら文句は言えねぇか」
ムカつく奴だな。
『では、…始め!』
瞬間、俺にトーンが突っ込んできた。
「死ねぇぇ!」
あれだけ言っておいて殺す気なのかよ。
トーンはでっかい斧を振り押した。
これは普通の奴だったら受け止めても武器がもたないな。
こいつが優勝候補なのも納得した。
振り降ろしてきた斧をギリギリまで引きつけて当たる寸前で横にかわした。
そして振り降ろしてきたおかげで上半身が前のめりになって急所を外しやすくなったから俺が刀を抜いてトーンに振り抜いた。
「グゥワァ!?」
その瞬間グラナミ闘技場が静まり返った。
まぁ俺が勝ってもこいつらは嬉しく無いだろうな。
「「「うおおおおおおおおお!!」」」」
声で闘技場が揺れた。
『な、なんと優勝候補を一撃で!これは分からなくなってきましたよ!』
おお、何だこれは。
俺が世界の中心にいるような感覚だ。
「すげぇぞお前!」
「次も期待してるぞ!」
「良いもの見れたわ!」
「今のでお前のファンになった!」
観客から次々と俺への歓声が聞こえてくる。
これはちょっと嬉しいかも。
あ、そんな事よりハルさんの所に行って感想聞かないと。
***
「ハルさん。観てました?」
「うん。観てたよ!」
「どうでした?」
「カッコ良かったよ。こう、横にかわして、そこをドーンって」
俺がさっきやった戦いを可愛く再現してくれた。
「次も観ててください。絶対に勝つので」
「うん。絶対に観ておくね」
これは優勝したらあるかもしれないぞ。




