目覚めたら鋼の肉体に⁈~異世界転移者と冒険者令嬢~
リリィ・ファルシオンは冒険で名前をはせたファルシオン家の長女。
次女と共に他の仲間と冒険をしていたが、次女達の策略で「悪魔の巣窟」と呼ばれるダンジョンを冒険中に突き落とされてしまう。
激痛で気を失うと、異世界転移してきたという学者の手に寄ってサイボーグへと体を作り替えられていた──
ドンっと突き落とされる瞬間に見たのは。
品のない笑い顔で私が落ちるのを眺めている「仲間」の姿だった。
落下したことによる激痛と、内蔵をやられたのか血を吐いて私は動けなくなり、そのまま意識を失った。
『うん、大丈夫だ、これで目覚めるはずだ』
私は目を開け、自分の体を見る。
「なんですの、これはー⁈」
真っ白な白亜の鋼の体になっていた。
顔も、白く、ウサギの耳が生えたような変わった顔になっていた。
「な、何をしたの貴方⁈」
「ああ、サイボーグ手術さ」
「さいぼーぐ、しゅじゅつ?」
「僕は異世界から転移してきた人間」
「⁈ 異世界人⁈」
聞いた事がある、希に居ると。
「そう、で僕の名前は白銀白鴎。宜しくね」
「で……どうしてそのさいぼーぐしゅじゅつとやらをわたしに?」
「転落してきた君はこのままじゃ確実に死ぬのが見えていた、だから人間の機能を残しつつ、手術をさせて貰った」
「わ、私が悪人だと思いませんの?」
「これでも、僕は人を見る目は確かなんだ、君誰かに突き落とされたね?」
「⁈」
射貫かれるように言われて、私は観念して事情を話した。
「ふむ、それではこの洞窟から出ようじゃか」
「え、でも」
「大丈夫、一瞬さ!」
その方──シロガネ様は私を岩の穴の中に案内した。
何かが動くような音がし、そして開くと外にいた。
「さて、君の話を聞くと君の妹は家と婚約者欲しさに君を落としたのが分かる。ならばそれを先に君の信用できる相手に伝えよう」
「お父様と、お祖父様達です」
「伝える手段は?」
私は魔法で伝書鳥を作り出した。
「はい、紙に事の次第を書きましょう」
「ええ……」
紙に出来事を全て書くと、伝書鳥の足につけて飛ばした。
「これで大丈夫でしょう」
「……」
私が不安げにつるつるな顔を触っていると、シロガネ様はにこりと笑った。
「大丈夫、顔は綺麗に治療しているから、しばらくは正体を隠す為に鎧の女騎士ということにしよう」
「ええ……」
不安な私にシロガネ様はそういうと息をしていた。
「いやはや、百年もこもりっきりだとこの空気は新鮮だねぇ」
「え」
「あ、僕は呼ばれた際の加護で不老長寿なんだ、すごいでしょ」
「ど、どうやって逃げたのです」
「それは持ち前の頭脳を使って逃げました」
シロガネ様はウィンクをしました。
なんだかとんでもない御方とお会いしたことになります。
一方しばらくして──
「ん、この鳥はリリィの魔法伝書鳥。何かあったのかな?」
リリィの父ファルシオン侯爵はその手紙の内容を見て震えさせた。
「なん、だと⁈」
怒りの形相に変えて立ち上がる。
「おい、アラン、リリィから伝書鳥がきたんじゃが」
「ええ、来たのよ」
「父上にもおなじのが?」
「ええ、母親はリコリスに甘いから来なかったのでしょう」
「……」
無言になる三人。
「リコリスが帰って来たら陛下の判断も貰わなければ」
「そうですね、リコリスに罰を与えねば」
「王都に着きましたね」
「視線が痛いです……」
「まぁ、気にせず」
王都の道を歩く二人、リリィは手紙を送った父達の反応が気になった。
返事が返ってきてないのもあって。
それから数日王都に滞在すると、私達は王宮に呼ばれた。
そこで──
「この、ろくでなしめ‼」
聞き慣れたとある声にリリィは走り出す、それをおって白銀も走る。
「リコリス‼ お前という奴は‼」
「貴方止めて!」
「止めるなリアンヌ‼ そもそも、お前がリコリスに甘いのが原因の一つでもあったのだろう」
「お父様!」
「リリィ⁈」
「そ、そんな嘘よ。お姉様はあの高さから突き落とした‼ 死んでるはず!」
私に視線が集中する。
「リリィお嬢様⁈」
侍女のアリアがそう叫ぶと、皆が目を丸くする。
「私の手術で一命を取り留めましたよ」
シロガネ様は何かぽちっと押すと、視界の青さがなくなった。
あのつるんとしたのがなくなり、私の顔があるのを触って確かめる。
「おお! リリィ‼」
「リリィ、無事じゃったんじゃな‼」
「リリィ‼」
お父様達が私に近づき抱きしめる。
リコリスは頬を押さえて呆然としている。
「嘘よ、お姉様は死んだはず、死んだはずなのよぉおおおお!」
ミスリル制のナイフを持って、私に向かってくる。
「雷よ!」
「ぎゃあああああ‼」
リコリスは雷撃を受けて失神しました。
足下からちょろちょろと……げふん、これは淑女としてあまり言いたくありませんね。
「私のリリィを殺そうとした輩に容赦はしない」
低い声でおっしゃったのは、私の婚約者ハリー第二王子。
「リリィ……」
「は、ハリー殿下」
「私の可愛いリリィはどんな姿でも可愛いよ‼」
そう言って私を抱きしめます。
「とりあえず、元の姿に近い姿に戻すための手術したいので場所かりてもいいですか?」
空気を読んでか読まずか白銀はそう言った。
その後、元仲間達とリコリスは投獄、元仲間は犯罪奴隷、リコリスは果ての修道院へ。
お父様はお母様を離縁し、お母様は実家に戻られましたが針のむしろのようです。
そして私は、右腕と右足が駄目になってしまったため、本物そっくりの腕を作って貰いそれを腕代わり──義肢というそうです、として使って行くことになりそうです。
こんな傷だらけになってしまったのに、ハリー殿下は私をべったりと溺愛してくださります。
たまーに、あの白い姿になって欲しいと言われるのが引っかかりますが。
シロガネさんは、私の体の「めんてなんす」の為に王宮に残ることを選択してくれました。
そして今日は結婚式。
ウェディングドレスのデザインがあの白い姿を模したモノですが、中々綺麗で悪くないかなと思いました。
「ハリー愛してます」
「私もだよリリィ」
そう言って誓いのキスをしました──
「王子様はあの姿のリリィさんにも惚れてしまったんだね」
数十年後、再び引きこもった白銀は一人呟く。
「だから、たまに見たくなるんだろう、まぁそれに気づいてたのは本人と王様だけだったけどね」
じじじと機械を接合する。
「リリィちゃんとの子どもは可愛かったなぁ」
「まぁ、二人とも、寿命で僕より先に亡くなったんだけどメンテナンス相手が居ないなら外に出る意味は無いからね」
白銀はそう言って再び引きこもる日々を送り始めていた──
久しぶりの短編です。
最期は白銀の回想録のようになっています。
リリィは妹の目論みと裏切った仲間へ制裁を下すことができ、元の姿に戻れ、愛する王子と幸せな結婚を送ることができました。
ここまで読んでくださり有り難うございました。
次回作も読んでくださると嬉しいです。