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こわいもりのおおかみ

作者: PinkBird


たかしくんは、おかあさんともりへきていました。


「このみちをぬけたところに、おばあちゃんのいえがあるわ」

おかあさんはいいました。


やまおくにたったひとりですんでいるおばあちゃんから、こしをわるくしてしまったとでんわがあったのが、とおくのやまへのおでかけのはじまりでした。

おばあちゃんのおせわをしてあげたいとたかしくんのおかあさんがいったので、たかしくんはおかあさんといっしょにとかいからはるばるとおくのやままでやってきたのでした。


ほそうされていないやまみちはくるまがとおれないため、ふたりはとちゅうでくるまをとめて、きぎのおいしげるみちをあるいていました。


しゅっぱつしてからだいぶじかんがたっていましたので、だいだいいろのひがしずみかけ、つちをふみしめてあるくあしもとはくらくなってきていました。


「おかあさんのてをはなさないでね。

 そうしないとまいごになるわ。

 このもりには、オオカミがでるといわれているの。

 とてもこわいオオカミがね」

おかあさんのことばに、たかしくんはぞっとしました。

こわいオオカミになんてであいたくありません。

もしもであったら、たかしくんはするどいきばでのどもとにかみつかれ、たべられてしまうかもしれないのです。

たかしくんは、「ぜったいにつないだてをはなさないぞ」とおもいました。


ちょうどそのときです。

ちゃいろのふわふわした''のうさぎ''が、ぴょこんとめのまえにあらわれました。

たかしくんがしっているうさぎのはんぶんくらいのおおきさです。

きっとまだこうさぎでしょう。


たかしくんは、さっきてをはなさないとつよくおもったこともわすれ、こどもののうさぎにかけよりました。

すると、こどもののうさぎはたかしくんにせをむけ、しげみのほうににげだしてしまいました。


「まって!うさぎさん!」

たかしくんはうさぎをおいかけしげみのなかにはいっていきました。


「たかし!」

おかあさんがよびとめましたが、たかしくんはこどもののうさぎにむちゅうでした。


こどもののうさぎをすっかりみうしなってしまったたかしくんは、じぶんがひとりぼっちになってしまったことにきがつきました。

「あれ?おかあさん?どこ?おかあさーん」

たかしくんがよんでもおかあさんのへんじはありません。

きっとたかしくんのこえがとどかないくらいとおくにはなれてしまったのです。


あたりはゆうやみにつつまれ、そらのうえでからすがないていました。

「おかあさん・・・」

たかしくんはこころぼそくて、さみしくて、なきそうになりました。


そのときです。

しげみからがさがさとおとをたてて、なにかがすがたをあらわしました。

ちゃいろとくろのまだらもようのたてがみ。

くちからのぞくしろいきば。

まちがいありません。

たかしくんのめのまえにあらわれたそれは、オオカミでした。


しかし、なんだかたかしくんがそうぞうしていたおおかみとはようすがちがっていました。

そうぞうしていたよりもずいぶんとちいさいこどものおおかみです。

たてがみはよくみるとよれよれになっていて、どろだらけ。

しっぽはたれさがり、そのめはどことなくさみしそう。


「おかあさん・・・」

こどものおおかみはかすれたこえでつぶやきました。


「どうしたの」

たかしくんはたずねました。


「ぼく、おかあさんとはぐれちゃったんだ」

そういうと、こどものおおかみからおおつぶのなみだがあふれだし、おいおいとなきだしてしまいました。

「きみも、まいごなの」


たかしくんは、じぶんもまいごになってしまったことをはなしました。

そして、たかしくんとこどものおおかみは、おかあさんをいっしょにさがすことにしました。

てをつないで、もりのなかをあるいてゆきます。



なんだかふしぎなきぶんです。

あれほどこわいとおもっていたおおかみとてをつないであるいているなんて。

てからつたわってくるぬくもりが、たかしくんのさみしさをけしさり、なんだかこそばゆいような、くすぐったいようなきもちにさせました。


あるきながら、ふたりはいろんなはなしをしました。

どこからやってきたの。

すきなたべものはなあに。

おきにいりのおもちゃはあるかい。


「ぼく、まいごになっちゃったけど、たかしくんといっしょならぜんぜんさみしくないや」

「ぼくもだよ」たかしくんはこたえました。

ふたりはすっかりなかのよいともだちになっていたのです。


そして、つきがりんかくをあらわしはじめたころ。

がけのほうがくから、おおかみのとおぼえがきこえました。

とおぼえは、まるでだれかをよんでいるかのようにこだましています。

「おかあさんのこえだ!」

おおかみはうれしそうにかけだしました。


「よかったね」

とたかしくんがいうと、

「うん。

 たかしくんも、おかあさんにはやくあえるといいね」

とおおかみはかえしました。


そうしておおかみとわかれたたかしくんは、ふたたびひとりで歩きはじめました。

すると、

「たかしー」と、たかしくんをよぶおかあさんのこえがきこえました。


「おかあさん。ここだよ」

「まあ!たかし。やっとみつけた」

おかあさんはたかしくんにかけよって、ぎゅっとだきしめました。


「ひとりでこわかったでしょう」

おかあさんがそうたずねると、

たかしくんはくびをよこにふりました。

「ううん。

 ぜんぜんこわくなかったよ。

 それからね、おおかみもこわくなかったよ。

 おおかみは、とってもやさしいんだ」


☆おしまい☆

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