第68話 とある城内の高台にて
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硬質な石材で作られた床。均一に建てられた柱は湾曲した屋根を支え、城内にある庭からの陽光を受け少しの日陰を作っている。
そこに「コツ、コツ」と足音が響く。
「ネモ様〜、ネモ様〜、どこに居られるのですか〜、ネモフィラ様〜」
頭部以外を黒い鎧で固めた騎士。艶やかな長い黒髪は見る者を釘付けるほど綺麗であり、澄んだ空の様な瞳は晴天を思わせる。
「城の中に入ったと報告がありましたが、一体どこにいるのでしょうか、あのお方は…」
城を探しても見当たらない人物に騎士は困り果て、擦れ違う者達に聞いて回り、ようやく居場所がわかった。
「ネモフィラ様ならお帰りになってすぐ、南の高台に向かわれましたよ」
「南の高台ですか、ありがとうございます」
「いえいえ、お安い御用です」
教えてくれたメイドに礼を述べ、南の高台へ向かう。
「……」
南の高台の頂上にその人物はいた。
その人物は高台の縁に手を置き、遥か遠くのものを見るように地平線を静かに眺めていた。
「ここに居られたのですね。ネモ様」
「ええ、ちょっと風に当たりたくて、ここに足を運んでしまったわ」
水色の花と同じ髪色をした少女。ネモフィラは地平線を見つめたまま、騎士に振り返らず、ここに来た理由を話す。それに対する騎士の反応は「左様でございますか」と一言だけ。
それからは静寂が続き、ふとネモフィラが騎士に向けて話始める。
「彼に会ったわ」
「!。そうですか」
「何も聞かないの?」
少し反応した騎士が何か聞いてくるかと思ったネモフィラだったが、騎士はそれ以上聞いて来なかった。
「はい。何故なら、貴女様が私の目の前に居られるということは、大丈夫だった。という何よりの証拠になりますので」
「絶対の信頼かぁ…少し貴女が羨ましいわ。ヘレナ」
ネモフィラは黒鎧の騎士。ヘレナの言葉に気が抜けたのか背伸びをして、ヘレナに振り返った。
「私は王の騎士であり、王の剣。そして王の宝を守る番人でもあります。絶対の信頼なくして、私はここにおりません」
「そう…だったわね」
その言葉には確かな信頼と重みがあった。
「行きましょうか、これ以上ここにいたらお父様を怒らせてしまうわ」
「それくらいで陛下は怒りませんよ」
「そうね」
「あ!お待ちください!ネモ様!」
「フフ」と微笑を浮かべ、ヘレナが止める間もなくネモフィラがヘレナより先に階段を降りて行ってしまった。
高台に残されたヘレナは肩を竦ませ、ネモフィラが眺めていた方向の地平線を見つめて、言葉を溢す。
「私どもは貴方様が心の底から笑っておられるのなら、それ以上は求めません。ですから、どうか、ご無理はなされない事を願っております」
階段の途中でその言葉を聞いていたネモフィラは、届かぬ言葉にも気持ちが乗っている。それは素晴らしい事だと思った。
「愛されてるね」
そう呟きながら。
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次回は5月3日を予定としております。
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