第4話 記憶喪失
第4話をお楽しみください。
「アルミの…名前?アルミの名前は…アルミスだよ…主」
「(そうか……やはり。この子が……)」
「2人とも呑気に自己紹介してないでその体制をどうにかしなさいよ…」
エドバが思いを巡らせようとすると横からアルメリアがため息混じりにツッコミを入れた。
現在の状況はと言うとベットに横たわっているエドバの上にアルミスが女の子座りをしている。そのためこの状態を他人に見られもしたらあらぬ誤解を招きかねない状況だ。
「確かにこの状態は色々な意味で大変ですね」
エドバは現状を理解しアルミスに視線を向けた。視線を向けられたアルミスは首をコテンと傾げてエドバをじっと見ており、エドバの上から動くそぶりも見せない。
「「「…………」」」
しばらく沈黙が3人を包むが最初に痺れを切らしたアルメリアがエドバ君の上からどきなさいとアルミスに向けて言った。
「エドバ……くん…の……うえから……どきなさい……?」
視線をアルメリアに向けてアルミスはオウム返しのようにアルメリアの言葉を復唱し首を傾げた。アルミスの反応を見てエドバはある予想が頭をよぎった。と言うよりアルミスの瞳を見て確信した。
「アルメリア学院長、彼女は暴走と私が放った昇空の反動で記憶をなくしています」
「無理もないわね。君の一撃をまともに受けたんですもの記憶喪失になっても納得だわ」
「ぼうそう?……いちげき?……きおくそうしつ?……」
それを聞いたアルメリアはアルミスの反応に首を縦に振りながら納得して現在に至るまでのことを思い出す。
「《昇空》ッ!!!」
アルミスの懐に移動したエドバはアルミスの胸の中心を目掛け昇空を繰り出した。
昇空とは対象に向けて剣を下から振り上げる際に柄頭を振り上げる方向と逆方向に引き、それで一瞬だが剣の切先が加速し、加速した切先を対象に繰り出し対象を空に上げると言う技だ。
本来この技は対人戦用なのだが限界まで身体強化をしたのかエドバはアルミスを空に上げてアルミスの意識を刈り取った。
「(強さは健在ね。でもなぜかしら?違和感を感じるわ…)」
「【顕現せよ、祭壇よーー」
「って!?エドバ君!何をやろうとしているの!?これ以上魔力を使ったら……もう間に合わないわね」
エドバの戦いぶりを見ていたアルメリアは少し違和感を感じたがエドバから放出される魔力に気付き焦ったが詠唱が聞こえてきて止めるのを断念した。
「ーー今ここに我が血を持って血の契約を結び給え】《血の契約》」
鍵言が紡がれ地面に赤い魔法陣が現れ、その魔法陣から赤い糸がエドバの左眼に契約印を刻み始めた。
しばらくしてエドバの左眼に剣の形を模した契約印が刻まれ、その契約印が銀色に光り、アルミスが契約印に吸い込まれて姿が消えたと同時に魔法陣もゆっくりと消え、エドバはその場で倒れた。
それを見たアルメリアはため息をついて展開していた結界を解除しエドバの下まで歩いていき、エドバの側で座り言葉を投げかけた。
「またお力を使わせてしまいましたね。ただでさえ少ない魔力をご使用なさるから魔力枯渇に陥るんです。あなた様が代償を支払う事なんて……」
最後の言葉は発しなかったがアルメリアは悲しそうにエドバを見つめていた。
そのあとは大忙しでまず、エドバを学院長室の横にある部屋で寝かせてから被害の状況を確認、討伐した魔物の処理と壊された結界の復旧。そして今回の魔物の襲撃の報告書を作成などをし、ひと段落した頃にエドバの状況を確認するため、エドバのいる部屋に向かい、ベッドの横にある椅子に座ってしばらくしてからエドバが目を覚まし今に至る。
「取り敢えず……」
そう言いアルメリアはアルミスを掴みエドバの上からどかした。アルミスがどいたところでエドバが体を起こしここはどこですか?と聞いた。
「ここは学院長室の隣よ」
「それはつまりアルメリア学院長の寝室ってことですか?」
「ええ、そうよ?」
「即刻学院長室に行きましょう」
「いきましょう」
「君達ね………」
少し不満が湧いて来たアルメリアを置いてエドバとアルミスは学院長室に行ってしまった。残されたアルメリアは1人言葉をこぼした。
「エドバ様。あなた様を苦しめる世界なんて…………」
頭を左右に振りアルメリアも学院長室へ向かった。
いかがでしたでしょうか。
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