第3話 白竜の少女 アルミス
第3話をお楽しみください。
サイド [エドバ]
目を開ければ。そこは一面の青い花の草原だった。
風に吹かれ、腰まで伸びたエメラルドの髪が揺れて視界に入った。
上を見上げれば雲一つない青空が広がっていて、全長200メートルはある竜と背中に白鳥の翼を生やした天使達が飛んでいた。
そこで俺は誰かの夢を見ていることに……記憶を見ていることに気付いた。
その誰かが背後から肩を叩かれて、見上げていた視線を背後に向けた。
そこには2人の女の子が立っていた、肩を叩いた女の子はまるで宝石のタンザナイトの様な青紫色の髪をしていて、その子の半歩後ろにいる女の子は白銀の髪をしていた。
彼女達は俺に話しかけてきた。だが俺には彼女達の声も、風に揺られる草花の音も、聞こえない。顔の輪郭も靄がかかった様にはっきりとは見えない、がかろうじて笑い合っているのは風域で分かった。
会話の内容は気にならなかった。何故ならこれが誰かの記憶であることは確定している。であれば俺はこの記憶から覚めれば全てを知らされるのだから……
少し間話し合っていた3人の所に1体の子竜が走ってくるのが見えた。その子竜の鱗と瞳は白銀だった、そこで俺は疑問に思った。なぜこの子竜だけがはっきり見えるのだろうかと。それに加えてまだ距離があるが子竜の声まで聞こえる。
少々思案しようとしたが意識が浮上するのを感じる。そろそろ目が覚めるようだ。意識が浮上する中子竜が白銀の女の子に飛び付き、その女の子が子竜に向けて言葉を発した。その時はなぜか鮮明に声を聞き取れた。
「走っては危ないですよ。アルミス」
白銀の髪をした女の子は慈愛に満ちた表情で子竜の名前を呼んだ。その声は誰かに似ていて懐かしくなったと同時に俺の意識はそこで途切れた。
✳︎✳︎✳︎
目を開ければ白い空が見える。そう思った直後隣から声をかけられた。
「おはよう、エドバ君」
「おは……っ!」
金髪の人の青い瞳を見た瞬間頭に激痛がした。
「…………」
エルフの女性。アルメリアは私を不安そうに見つめている、だから私は彼女を安心させるように話した。
「大丈夫ですよ。アルメリア学院長」
そう言って私はアルメリア学院長に笑いかけた。そうするとアルメリア学院長は深く、それはもう深く溜め息をこぼした。
「何度見ても不安になるのよ……この瞬間を慣れているのはネモフィラ様ぐらいよ。アイリス様だって君が起きるまでそわそわしているんだからね?」
「分かっていますよ、ですがあの時はあの選択が最善でした」
そう私が言うとアルメリア学院長はまた深く溜め息をこぼした。
「何時間くらい寝てたんですか?」
そう聞くとアルメリア学院長は分って聞かないのねと言いつつ教えてくれた。
「5時間よ」
「ふむ、妥当ですね」
「妥当って、いつも思うのだけど君のその平均はなんでそうも的確なのか気になるわ」
気持ちはわかりますがどうしろとと言いつつ私は気になっていたことを聞いた。
「アルメリア学院長、試験の方は?」
「し、け、ん?」
私の言葉にアルメリア学院長は首をコテンと傾けた。
「(ああ、ダメだ。完全に忘れている)」
しばらくの沈黙の後。あっ。とアルメリア学院長が言った。
「忘れていましたね、アルメリア学院長」
「い、いや〜なんのことか。さ、さっぱりわからないな〜」
とぼけるアルメリア学院長、だが嘘は明白だ。
「まぁ、いいです。それでアルメリア学院長、試験の結果は?」
私の言葉で我に返ったアルメリア学院長は態度を改めて私の目を見た。
「試験合格よ、討伐はしなかったとは言え、あの竜を一撃で戦闘不能にした。この事実だけで何も文句はいわせないわよ」
ただならぬ黒いオーラを醸し出したアルメリア学院長を横目で見つつ私は左眼の状態を確かめる。
「(視力は失われていない、精霊は……見えるか……左右非対称に慣れるまで時間がかかりそうだ)」
ぶつぶつと呪言のようなものを呟いていたアルメリア学院長が左眼の状態を確認する私に気付いて問いかけてきた。
「契約したのね」
小難しい表情をしてアルメリア学院長は重苦しく言った。それに私ははいと一言言って左目を触った。
「聞かせてくれる?あの竜がなんなのか」
「分かりました」
そう言って私はアルメリア学院長に知っていることを話し始めようとした直後左眼に刻まれた契約印が光出した。
光が収まると横になっている私の上に15歳前後の少女が寝ていた。その少女は白い竜の角と尻尾があり、髪は白銀でカーテンの隙間から差し込む木漏れ日でキラキラと輝いていた。
突然現れた竜人の少女に私とアルメリア学院長は唖然とする。
「この竜人があの竜なの?」
アルメリア学院長は不思議そうに聞いてきた。それに私はおそらくと返し、少女を見つめた。
「(白銀の髪に白い竜の角と尻尾……まさか人化できるなんてな…)」
「う、う〜っん……あるじが…アルミの主?」
そう思っていると竜人の少女が起き上がり背伸びをした。まだ眠たいのか目を擦りながらキョロキョロとゆったり辺りを見渡して、私に気付いたのか彼女は髪と同じ色の瞳を私に向け、首をコテンと傾けて私が主か確かめてきた。
「ええ、私が君の主になった者、名前をエドバ。君の名前は?」
少し戸惑いながら自分の名前を言いい、続いて少女の名前を聞いた。
「アルミの…名前?アルミの名前は…アルミスだよ…主」
いかがでしたでしょうか。
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