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ジェネラリーナイト  作者: 星芽龍英
第1章 始まりの竜
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第2話 ソヒィスティア王立学院

第2話をお楽しみください。



 




 ソヒスティア王立学院とは、今から約8年前に創立された王立学院のことである。王立ともあって学院の敷地は広く、設備も最先端。貴族子息も多く在籍しており、また、才ある者は見つけ、生み出すものと言う王の意向もあり。平民、異種族の入学も可能であり、学院長がジェネラリーナイト第4位の「結界のアルメリア」であることから彼女の協力を得て、学院全体を覆う結界が完成し、その結界の強度確認のため大型魔物(全長100メートル前後)を100体を相手に傷一つ残さずに結界に付与(エンチャント)されたカウンター魔法で魔物を全滅した。その結界が常時発動しているため学院内に入れば危険はほぼなく、親も安心して通わせられると言うことから他国からも入学希望者が集まり、多くの生徒が在籍している。




 そんな学院の学院長室で長机を挟んで男女二人がお互いの近況報告をしている、女性の方は笑顔で話しているが少年の方は怪訝な表情をして女性の……アルメリアの話を聞いていた。



「報告ご苦労様、エドバ君がお願いを達成してくれて助かったわ」

「道中色々な意味で疲れましたけどね……それで、アルメリア学院長。何故私を手紙まで送ってきて学院に呼んだのですか?」



 ティーカップに入っている紅茶を飲みながらエドバはアルメリアに何故自分を学院に呼んだのかと問いかけた。



「予想は付いているでしょう?エドバ君を呼んだのは神殺しの噂がソヒィスティア王国で広まっているからよ 」

「それはついででしょう?そうでなければ私を学院の中、それも学院長室に入れなくても良かった筈です」

「流石の統率力ね。でも神殺しの噂もあながちエドバ君以外に頼めないのよ」

「わかっていますよ。だからこそ足を運んだ訳ですし」



 エドバは肩をすくめながらため息を吐いた、そして本題の話を聞こうとアルメリアの方を見て話すよう促す。



「エドバ君を学院に呼んだ理由はあなたをこの学院に…「却下」最後まで聞いて⁉︎」

「断るのは当たり前なのでは?」



 話の腰を折るエドバの言葉にアルメリアはすかさずツッコミを入れるがエドバはさも当然かのようにアルメリアに向けて言った。



「予想出来たからって即刻却下はないでしょう、せめて最後まで聞きなさいよ……」

「そうですね、人の話は最後まで聞いた方がいいですよ」

「今エドバ君がそれを言うの?」



 ジト目でエドバを見るアルメリアだがエドバは悠々と紅茶を楽しんでいた。



「それで私に何をさせる気だったんですか?」

剪定騎士大会(プルーニングトーナメント)に出場して欲しいの……あわよくば……」



 最後の方は小さくエドバには聞こえ無かったようでそれを気にした素振りも見せないが、怪訝な表情でアルメリアに聞いた。



「……王命ですか?」

「違うわ、これは私の独断」

「ふむ……まぁ団体戦だけなら良いですよ」



 問いの答えを聞いたエドバは少し思案した後アルメリアに了承の意を示した。



「だ、団体戦だけ……まぁ当然よね。それより団体戦に出るって事はここに入学するって事で良いのね」

「ええ、良いですよ。ところでアルメリア学院長。弁明はありますか?」

「え?べ、弁明?な、なんの?」



 アルメリアは了承を得た事に小さくガッツポーズを取るが続きの言葉でピタッっと体が静止して、目を泳がせながらとぼけた。



「身に覚えが無い……なるほど。なら秘蔵の魔道書をいくつか燃ゃ……」

「すみませんごめんなさい許してください私が悪かったです謝りますからどうかそれだけはやめてくださいっ!」



 アルメリアはそれはそれは綺麗な土下座でエドバに謝った。



「なぜ入学式の後になって呼んだのかは後で聞きます。だから土下座はやめてください。仮にもアルメリア学院長はここの学院長なんですから」

「あはは……つい昔の癖で……」



 嘆息しつつエドバは話を再開する。



「……この学院にも入学試験があるのでしょう?」

「もちろんあるわ。でもエドバ君は特待生として手続きしてあるから筆記試験は免除、あとは実技試験があるのだけど……」

「…………色々と言いたいですが……勿体振らないで教えてください」

「わかったわ、試験達成条件は教師2人以上の前、あるいは学院長である私の前で受験者1人でDランク以上の魔物を倒すこと」

「噂通り珍しい試験ですね」

「現在の実力と技量を見定め適切な教育をするのがこの学園のモットーですから」



 胸を張って自慢気にアルメリアはエドバに話した。



「それは建前で本当は受験者の実践慣れと技量などを見て他国のスパイかどうか見極める。そう言う意図もあるのでしょう?この実技試験には」

「あはは……知ってて当然か。それじゃあ試験の話はここまでとして神殺しの噂に移りましょうか」



 アルメリアは苦笑いをしつつ言葉を切り真剣な面持ちで情報をエドバに話し出した。



「現時点で入ってきている情報は3つ。1つ目は正体不明の何者かが神を殺し、その力を奪った。2つ目はウリエル聖団と名乗る団体が天使と契約し神を殺そうとしている。そして3つ目はその身に天使の力を宿す者がいて、その者の力は神域に届くと言われていて、それでその者を仲間に引き入れようと血眼になって探している輩がいる。この3つよ」



「1つ目と2つ目の情報は大体予想が付きますが……」



 そう言ってエドバは言葉を切り、次の瞬間空気が張り詰めた。



「3つ目の情報……()()()じゃないだろうな()()()()()



 エドバの纏う空気が一変し、アルメリアはゴクリと喉を鳴らして質問に答えた。



「はい、彼女ではありません、そのことは御身自身がご存知なのでは?」

「…………()()()()()()()()と国王に」

「承知いたしました。国王陛下にお伝えしておきます」



 アルメリアの一言に納得したのか、張り詰めていた空気は霧散してアルメリアはホッとしたが次の瞬間エドバの顔がこわばったことに気が付いた。



「どうしたの?顔をこわばらせて」

「東、西、南方向それぞれ50キロ!それからこれは…学院上空からこの学院に迫ってくる4つの魔力反応を検知しまし…ッ!!!」



 話を途中で切ったエドバの顔は驚きと困惑で染まっていた。



「 今度はどうし…ッ!!!何この北方向から来る尋常じゃない魔力と並々ならない存在感を持った魔力反応はっ!ジェネラリーナイト級が最低でも3人いないと太刀打ち出来ないわね……」

「アルメリア学院長、この事を連絡を」

「ええ、今してるわ」



 学院長室に置いてある放送機器を使って連絡をし終わったアルメリアにエドバは質問した。



「…………アルメリア学院長。北方向から来る魔物、試験の相手に出来ますか?」

「え?…えぇ、出来るけれど、エドバ君は病み上がりだし荷が重いんじゃないの?」

「大丈夫ですよ、それに病み上がりでもたまには戦っておかなくては腕が鈍ってしまいますから」



 そう言ってエドバはソファーから立ち上がりアルメリアと共に高位の魔力反応が迫って来ている北の方向へと向かった。




 ✳︎✳︎✳︎






 サイド [アルメリア・フォレスト]




 バリィイイン!!!

「「「「ガアアアァァァァァ!!!」」」」



 私とエドバ君が北の裏門に着いたと同時に何かが割れるような音の後に雄叫びが響いた。



「どうやら他の所が先に姿を見せたようですね」



 エドバ君は南の方向を見ながら言った、彼には今私達が対峙する化け物より他の魔物が気になるらしいが。私は結界が地面の下から食い破られて、結界全体が消失したことに戦慄していた。学院(ここ)の結界は並大抵のモンスターや魔法師などの攻撃は通じない筈なのだが……



「何ランクだとエドバ君は思う?」

「少なくともSSランク以上だと思います」



 魔物のランクはF、E、D、C、B、A、S、SS、SSS、Zランクの10段階あり、Sランク以上は1国家規模を壊滅させうる力を持っている。



「アルメリア学院長は単独で倒せますか?」



 突然彼がそんな事を聞いて来た。



「倒せるとは思うわ、でも被害が途轍もないことになるのは確実よ」

「倒せはするんですか、流石ですね」

「そう言うエドバ君はどうなーー」

「グアアアアァァァァァ!!!」



 私が次の言葉を言い終わる前に地面が揺れた。


 しばらく揺れ続けていた地面が割れて、割れた地面からは雄叫びと共に竜が這い上がって来た。



 その竜は全身の鱗が白く全長200メートルはあり、目が赤く光っていた。目が赤く光るのは暴走している証拠だ、だがそれだけでは単なる竜の暴走に過ぎない。異常なのはその竜の周囲で様々な武器の刀身部分が作られては消えるを繰り返していることだ。



「この竜は……一体……なに?」



 過去の歴史書に置いてもこんな竜は存在しなかった。



「………まさか……ッ!!アルメリア学院長すぐに全ての結界を!」



 エドバ君には何か分かったのだろう。彼に頷き私が行使できる全ての結界を貼る。



「《全・(フル・)球体結界(スフィア)》」



 魔法が発動し半径500メートルの球体型結界が展開された。



「《エンチャント》」



 そこにエドバ君が重なり合っていない無数の結界をエンチャントと言う形で1つにしていっている。


 その技術に私は流石としか言えない。



「流石はパーフェクトエンチャンターね」

「その呼び方はやめてくださッい!」



 竜がエンチャントしていたエドバ君に目掛け周囲の武器で攻撃したがエドバ君は危なげなくその攻撃を躱して私の近くまで飛んで来た。



「アルメリア学院長、結界は後何分もちますか?」

「この調子だと10分が限度よ……」



 私達が話している間にも竜は暴れ回っている。エドバ君のお蔭で結界の制御が1枚になって楽になったが私の魔力を注ぎ込んでも周囲に危害が及ばないようにするので手一杯だ。



「エドバ君、倒せるの?」



 私は不安気に彼に聞いた。そしたら彼は私に微笑みこう言った。



「私を誰だとお思いで?」



 その微笑みは懐かしく、そしてあのお方が帰ってきたのだと思わずにはいられなかった。


 そう思ったのも束の間、竜が息吹きを吐くために息を吸う音が聞こえて竜の方を見る。そこには息吹きを吐く直前の竜の姿があった。結界は間に合わない。だが…………彼がいる。



「アルメリア学院長、結界の維持を」



 そう言う彼に頷いた私と同時に竜の息吹きが放たれた。近づいてくる息吹きは高熱で辺りの草が灰に変わっていく。そんな中、彼は腰に付けてあった剣を抜いた、その剣はどこにでも売っている鉄で作られた普通の剣だった。その剣に彼はエンチャントと唱え、剣は黄緑色の燐光を纏った。燐光を纏った剣を彼は迫って来る息吹きに剣の先端を突き刺した。


 息吹きに当たった剣は息吹きを斬るのではなく吸収している。そう。これが彼が彼たる所以の1つ、常軌を逸した魔力制御で相手の魔法をエンチャント出来る。そしてエンチャントされた魔法はそのまま相手に返せるが彼の魔力としても使用可能になる。それゆえ魔法を使う魔物や魔法師に対して半永久的に彼は魔法を使える。そのことから彼はこう呼ばれていた。

魔法喰いの(パーフェクト)エンチャンター」と。


 息吹きが止まったと同時に彼は剣にエンチャントした息吹きの魔力を自身の魔力として身体強化魔法を自身に発動させ、竜目掛け一気に加速した。その時に今まで被っていたローブのフード部分が捲れて彼の素顔が見えた、髪の色は白に近い黄緑色をしていて瞳は銀色。


 彼の顔を見て、あぁ、と自分が無意識に言葉を溢したことがわかった。私は多分……安堵したんだろう、私が知る彼が私の目の前にいて、戦っているのだから。


 竜の懐に移動したエドバ君は竜の胸の中心を目掛け剣技を繰り出した。



「《昇空》ッ!!!」





いかがでしたでしょうか。


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