プロローグ
みな様初めまして星芽龍英です。
誤字、脱字がありましたのならご指摘頂けますようお願いします。
初心者なのでご不快に思われる方もいるかもしれませんが温かい目で見てくれると嬉しいです。
それでは本作、ジェネラリーナイトをどうぞよろしくお願いします。
聖歴、3613年、5月1日。
ここはとある王国、今この国は突如現れた邪竜の群れによって火の海と化していた。
そんな中1人の少年が地面に手を着き静かに泣いていた。少年の周りには少年を邪竜から庇って深手を負った者達が倒れている。
「あぁ……あぁぁっ……なんて、なんて僕は無力なんだろう……」
少年は大粒の涙を流し自身の無力を呪っている。
「人の子よ。力を欲するか?」
ふと、少年の耳に無機質で冷淡な声が聞こえた。
「ぼ…くは……僕は力が欲しい、もう誰も死なせたくない……大切な人を守れる力が欲しい!」
大切な人達を失って気が動転しているのかもしれないが、少年は力を欲した。
「例えその力が世界を滅ぼす力でもか?」
少年の心情を知ってか知らずか声の主は少年に確認するように問いかけた。
「ああ……例えその力が世界を滅ぼす力でも僕はその力が欲しい」
だが少年には知った事ではない、力が手に入るのなら、今の少年には世界を滅ぼす事なんて些細な事だ。
「そうか……ならば名を名乗れ、さすれば我が力を与えよう。人の子よ、名はなんと言う?」
声の主は考えぶかげに少年を眺めて少年の名前を聞いた。
「僕の名前は……」
少年が名を聞かれ、名を言おうと顔を上げ、そこに居たのはーー
✳︎✳︎✳︎
聖歴、3618年、12月17日、アムーセル王国、王都レクイエム、中央コロシアム。
「はああぁぁっ!」
「ふっ!」
半径300メートルはある円形の舞台上で耳をつん裂く様な激しい剣戟と魔法が相殺した時に生まれる爆音がコロシアム中に響き渡っている、その爆音の中心で漆黒の全身鎧を着ている騎士と禍々しい魔剣と神々しい聖剣を両手に持った少女が戦っていた。
「頑張りますね~、あの子」
そう言って観客席から前屈みになって舞台を眺めるオレンジ髪の獣人の少女。
「そりゃそうでしょう、だって今日負けたら少なくとも5年は会えないんだから」
その右隣に座る金髪のエルフの女性が不満げに言った。
「あの子、あの方に勝てる秘策とかあるのかな?」
獣人の少女の左隣に座る黄緑の髪の少女が不思議そうに首を傾げた。
「あるんじゃないですか?あの方に勝てる秘策が。まぁ僕は秘策があったとしても戦いたくは無いですが」
黄緑の髪の少女の前に座る白髪の少年が呆れ気味に言った。
「同感です、仮に秘策が成功してもあのお方はそれすら物ともしないで打ち破ってきそうですね」
エルフの女性の前に座る水色の髪の鬼人の少女が白髪の少年と同調する様に言った。
「大丈夫の筈です!秘策は絶対に成功する、癖も熟知してる、これで絶対勝てる!ってお姉ちゃんが言ってましたっ!」
白髪の少年と鬼人の少女の間に座るどこか舞台で戦っている少女に顔立ちが似ている金髪に紫が混じった髪の少女が元気よく言った。
「なんか私、不安になってきました。癖を熟知していても普段の癖はわざとでやっていてあのお方には癖は無いのに……」
エルフの女性の後ろに座る黒髪の女性が頭を両手で抱えながら言った。
「なんにせよ私達は最後まで見届けましょう」
そう言ってその場にいた者達を宥める、黒髪の女性の左隣に座る灰色の髪の竜人の女性。
そう言われてその場にいた8人は舞台へと視線を向けた。
舞台上は激しさを増し、観客はその戦いに魅入られていた。剣と剣。魔法と魔法。それぞれがぶつかり合い轟音が響き渡る。まさに一進一退の攻防を繰り広げていた。
「《デュアルスラッシュ》っ!!!」
「《ブレイクスラッシュ》!」
少女が2つの斬撃を放ち、騎士は破壊の斬撃を放った。斬撃がぶつかり合い轟音と共に消滅した。
「《ダークレイン》!《ホーリーレイン》!」
「《エレメンタルブラスト》!《フレアバースト》!」
少女が放った魔槍の雨と聖槍の雨が騎士目掛けて降り注ぎ、それを迎え撃つかの様に騎士が精霊の力を宿した弾丸と炎の波動を少女が放った槍の雨に向かって放ち、爆音と共に消滅した。
「相変わらずバカげた技量ですねっ!」
「貴女の方こそ以前に戦った時より強くなっていますよっ!」
お互いに剣と魔法を駆使して相手に攻撃を入れるため隙を伺いながら言葉を交わす。
しばらく打ち合った後、お互いに間合いを取った。
「そろそろ決着を付けましょうか。不死の精竜騎士!いや、黑王っ!」
「えぇ、そうしましょう。双剣聖魔姫!」
魔法が止んだと同時に詠唱を始めた。
「【聖に生き。聖を制する聖剣よ。魔に生き。魔を制する魔剣よ。求めるは合い入れぬ聖と魔。我が身は器。我が手足は聖と魔を繋ぐ橋。我が身を持って混沌を】」
「【破邪の中の破邪。永遠よりも有限を、無限の時に有限の時を与え。無数の因果を壊し真実を一つに。我は破壊の化身。全てを破壊し世界の摂理おも破壊せよ】」
詠唱が始まると同時に2人の周りに膨大な魔力が集まっていき、少女の魔力は混沌を具現化したかの様な灰色の魔力に、騎士の魔力は漆黒から段々透明になっていきついには肉眼で視認出来なくなった。詠唱が終わると同時に鍵言を紡ぐ。
「《カオス……」
「《プロビデンス……」
お互いの鍵言が紡がれる前にそれは突如としてやって来た。
アムーセル王国を覆い尽くす光がコロシアムの上空に現れ。その場に居た者達は目を瞑った。
しばらくして光が弱まり、その場に居た者達はそれを目にした。
「矮小なる人々よ、世界のために死ぬが良い」
突然取って押しもない事を言い出すそれはこの場に居る者達には何に見えただろうか。否、考える必要すらない。それは紛れもない神だと本能的に解ってしまったから。
その場に居た者達は神が言った死の宣告が瞬時には解らなかったが神は無慈悲にも宣言道理に人々の命を狩り取ろうと魔法を放った。
神が放った魔法は王都を覆い尽くす程の巨大な光剣だった。神の腕が振り下ろされると同時に巨大な光剣達が王都に降り注いだ。
「《マジックブレイク》」
黒王と呼ばれていた騎士が空に手を向け、対魔法とされる魔法を発動して神が放った魔法を全て消し去った。
「神の好きにはさせない!」
そう言って黒王は鎧と似た色の歪な翼を背中から生み出して、神目掛けて空へ舞い上がった。
「抵抗するか、人間。良かろう、かかって来るが良い」
どれ程の時間がたっただろうか。コロシアムに居た者達は誰一人として動こうとはしなかった。否、動けなかった。それ程までに上空で繰り広げられる戦闘は人知を超えた戦闘だった。
王都近隣の山と言う山は跡形もなく消え去り、穏やかで綺麗だった川は水が蒸発して無くなって単なる溝となり。もはやこの状況を地獄と表現しても過言では無い。
「あ、ありえぬ……あってはならぬ……人間ごときが神たる我と互角などあってはならぬのだっ!」
黒王と壮絶な戦闘を繰り広げていた神は黒王と自身の力が互角なことに怒り、最初に放った光剣を今度は王都全域に発動させ、1人でも多くの命を狩り取ろうとしたが………
「【落ちる奇跡。満ちる希望。対価は神の血。光を喰らい、輝ける龍と成れ】《シャイニングイーター》全ての光剣を喰らい尽くせ!ライドラ!」
王国全域に展開された光剣に対抗するように黒王は蛇のような黒い竜を顕現させた。
「グオオオォォォォォォンッ!」
黒王が顕現した竜は咆哮と共に光を求めるかのように神が放った光剣に対して向かって近付いて行き、近付いた光剣を次々と飲み込んで行く。
光剣を飲み込んでいる竜の体は少しずつ黒から白に変わって行き、最後の一本を飲み込んだ時には白く輝く竜となっていた。その姿は純白で、太陽の光を受けてより一層白く輝いて見えた。
「な、なんだ……なんだんだその魔法は!」
神は純白の竜を見て驚きの声を上げた。
「竜は神を殺すために作った魔法だ」
意に介した様子もなく黒王は平然と言った。そして……
「だから大人しく死ね!」
「グオオオォォォォォンッ!!!」
黒王は神を喰らえと竜に指示を出し。竜は唸り声を響かせ神に向けて突き進んだ。
「クッ、まだだ!」
神は火、水、風、土、光、闇。計6属性の魔法を展開させ、自身に向かって来ている竜を目掛けて次々と打ち込んだが竜は怯むどころかスピードと輝きを増して行き、後少しの所で追い打ちと言わんばかりに黒王は鍵言を紡いだ。
「跡形も無く消え去れ!《ドレインバースト》!!!」
鍵言に応じて竜の体は黒に戻り、竜の口からは火、水、風、土、光、闇を象徴する6色の光が竜の息吹きのように揺らめいていて、今だ魔法を放っている神の眼前で解き放った。
解き放たれた6色の息吹きは神を燃やし尽くそうとする。
「ぐああぁぁっ!!!終われぬ、この体が尽きる前に!!!」
神は息吹きに燃やされながら魔法を発動させた。その魔法は豆粒程度の光球だがその内に込められた魔力は今までの比では無い。この一粒で広大な王都を平地に出来る威力を持っている。それがアムーセル王国全土に展開され降り注いだ。
「チッ!《永劫結界》!!!」
その魔法を見た黒王は舌打ちをして、王都を丸ごと覆う程の結界を貼り。自身は黒に戻った竜と共に神が放った魔法を迎撃しようと王都の中心に聳え立つ王城の真上に移動しある魔法を自身と竜に付与した。
「《オール・エンチャント》」
魔法を発動したと同時に、虹色に光る燐光が鎧のように1人と1体を包み込んだ。
「何をやろうとこの数を全て防ぐことは貴様には出来まい!」
消えつつある体で神は嘲笑を黒王に向けた。
「いいや、俺は誰1人死なせはしない」
そう言って黒王は竜と共に降り注いで来る光球を迎え討った。
結果は上々。神は消え、王都は守られ、死者も負傷者も無く、まさに神相手に完勝と言って良いだろう。だが神の魔法を迎え討った黒王は重傷で左の横腹が貫かれて血が滴れ落ちている。共に戦って居た竜も重傷ではないがボロボロになっており、光球が全て無くなったと同時にゆっくりと消えていった。
そしてこの日から人々を救った英雄は行方を眩ました。
✳︎✳︎✳︎
サイド [???]
小鳥の囀りが朝を告げている。温かな日差しが目に入り、俺はまだ眠たい体を起こし、顔を洗うために洗面所に向かう。
蛇口をひねり、冷たい水が流れ出て来た。その水を手ですくい取り、顔を洗う。
持って来ていたタオルで顔を拭きながら寝室に戻り窓を開ける。開けた窓からは少し冷たいが気持ちの良い風が入って来た。
「懐かしい夢を見たな。あれから約5年か……ん?」
窓の外に広がる街並みを眺めていると1匹の白い鳥がこちらに向かって来るのが見えた。
しばらくして鳥が俺の肩に降りて来て、バックに入った手紙を器用に出して俺に渡して来た。俺は封を開け中身を見る。
「お願い……か。これをお願いと呼んでいいのか?まぁ、来たからには行くしかないか。それに……神殺しの噂か………」
そう言いながら白紙の紙にそちらに向かう、お願いも了承した。と言う返事の手紙を素早く書き、待っていた鳥に手紙を渡すと、鳥は受け取った手紙を先程と同様器用にバックに入れて飛び立った。
それを見送った俺は支度を済ませ、外に出て目的地のソヒィスティア王国へと足を進めた。
いかがでしたでしょうか。
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