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電光怪人チェイン〜ヒーローになりたい僕と26のチートな力〜  作者: 蒲竹等泰
第15話 起動せよ夢見る機械
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第15話その3

「見ろ、これが楽園の外」

「侵食する汚れた世界だ」


いつも見上げていた空から

僕らとそして僕らとは別に育ったであろう同士

私達は初めて不界を見下ろす、

楽園の外、主の世界を奪う存在を目撃する。


それは楽園のように草が生えず

土すら見えず

地面はほぼ1色で統一されている。

それは灰

私達の教えでは敗北、侵食、汚れを意味する色。


敵の住処であろう建物は

我らの主にのみ許された社を真似たような

醜くも高く、浅ましくも狭きものばかり。

もはや侵食を維持する杭のようだ。


………だが、


これが嫌悪?


なんか、少し違う


「………見ろ、あれが我らが主」

「尊き方の住む社、聖者の偉跡、イヴ-ゼヴェリンだ」


唯一


灰に溺れない純白

この重く感じる空気にすらも害されない

澄んだ白


それはもはや………


「異質だ」

「なんだろう、なんか僕らが取り残されたような気分だ」


「………?」

「何を言っているんだ私は」


小さく

うるさくけたましい

咆哮のようなこの乗騎の音にかき消される声が

異質ながら何故かスッと

乾いた喉への水のように染み付く。

その違和感に思わず首を捻る


「………皆の者、翼は馴染みましたか?」


社の真上へ到達したとき

いつも私達に教えを与えてくださる

白き聖櫃が現れる。


「皆さん、今までのつらい日々良く耐えてくださりました、我々は貴方がたを素晴らしき同士と思い誇りに思います。特別な体に生まれたからと言って必ずしも特別になれるとは限りません、汚れは堕天は直ぐ側にありました。貴方がたはこの道のりは体を鍛え、あらゆる事を学び、教えを信じ、素晴らしき天使へと至ったのです」

「悲しくも至れなかった同胞も多くいます」

「しかし彼らは消えたのではありません」

「彼らはあなた達の中にいつも宿っています」

「さぁ、見下ろしなさい」

「我らが社に取り憑かんとする黒い点が見えるでしょう、あれこそが汚れ、あれこそがその元凶!」

「同胞を陥れた悪!」

「主を仇なす悪!」

「我々は奴らを、この奇跡を持って駆逐せねばなりません!」

「さぁ、天使よ、この日完全なる生誕を果たした同士よ!主より新たなる加護を与えます!」

「汝、手の中に与えられし加護を飲み」

「その身に誓いを!献身を!宣誓を!」

「天使たちよ、かつての予言、与えられし責務に従いこの命令を与えます!」

「今こそ!その鋭き牙、堅き爪を持って雄々しく戦いなさい!」

「さぁ、救済の刻です」

「全天士、出撃!!」


最後の加護

昔遊んだビー玉のような者を飲む

体が熱く

みなぎり


私達は眼の前に急に開いた穴へ

吸い寄せられるように

………いや

まるで足が勝手に動くように


飛び込む




「………………!」


すごい


乗騎が吐いた白煙を突っ切る

外界は見えない

しかし肌で感じる風が

今まで感じたことのない風が

心の臓を今までの何よりも打ち付ける。


この煙の中

俺一人しか見えないこの空間から

抜け出すのがどこが怖くなる。


俺も見えない

誰にも見られない

初めての自ゆ………?


何かが煙の壁を貫く1つ2つじゃない

なんだ

なんだ?

なんなんだ!?


「うぁ!?」


熱い!?

突風!?

何で、

何で、

何で上から!?


脳が真っ白となる


突風に煽られたせいで


やばい、上下がわからない


わからない

わからない


もはや汚れていようと大地が恋しい


と、とりあえず翼を


………………あれ?


「これ、どうやって使うんだっけ?」




「なんなんだこれ」


いたるところから大きな音が聞こえる


何か小石のようなものが誰かを貫いた

こんなにも高く

あんなにも早く

こうも鋭いものがこの世にあるのか?


知らない


教えられていない


「ぐおっ!?」


野太い声がする


あの衣装


「剛腕様!」


見慣れた衣装、

しかしその仮面は砕けている。


「……っ、天使!聞け!」


違う

衣装がだんだんと赤く染まっている

腹だ、腹のあたりだ。

今まで私達を圧倒し僕らの拳にのけぞりもしなかった彼の腹が傷ついた証明、浄血をこぼしている。


あれは聖育のときと同じ

いかに天使であろうと助からない。


しかし彼は

さすが

事切れない。


大きな声

かき消そうとする音に負けない

響く声が彼の喉から発される。


「腕付近のベルトの紐を引け!」

「それはてっ


その瞬間彼の頭が爆ぜる。


「……っ!」


私は言われたとおりに紐を引く

その瞬間

背中から白いドームが展開され

体が持ってかれそうな衝撃をその身に受ける。


「これが………翼?」


イメージと違う

当然といえば当然だ

天使の翼なんて見たことないのだから。


………あれ、見たことない?

なら、何で僕はそれを信じたんだ?


黒き大地に足を着けた瞬間

背から翼は分離する。


眼の前には何か強い衝撃で作られた穴が無数。


………!


誰か来る

こういうときは教えではたしか、

物陰に隠れ、組み付く隙を伺う……!


『先程の白い飛来物の着地点と思われるざひょうに巨大なクレーターを確認』

『例の爆撃によるものです』


『煙が晴れてきたな』

『飛来物の正体、確認できるか』


『………飛来物の姿を完全に確認』

『………人、しかもあれは子供……ですね』

『地面に激突すると同時に爆破』

『空中で死亡しても爆破』

『おそらく対象の使用していた未知の能力が付与された状態でパラシュートの使い方もわからず蹴り落とされたものと思います』


『拉致されて無理やり落とされた可能性が高いか……がしかし、これ以上爆破されるのも危険だ』

『まだ避難の終わっていない建物に当っては危険だ』

『………申し訳ないが全て落とす』

『とりあえず上のを1つずつ落とす』

『的は小さい』

『全員で1つずつ確実に落とすぞ』


『『『了解』』』


それは力だった

剛腕を容易く葬った矢を

止める間もなく打ち続けている。


その度少なくとも1つは聞こえる爆発音は

きっと、同士が機能停止する音なのだろう。


『………嫌な仕事、いくらテロへの対処だからとは言えこんなビル街で実弾銃を打ち続けなくてはなんて』

『しかもその的が子供だなんて……!』


『………民間人を死なせない、それだけを考えろ』

『中央の奴らも黙りできな臭せぇ任務だ、こういうときは大抵俺たちは理不尽に死ぬ』

『ここは元よりそういう島だ』


『なんでなんですかね』


『技術のイカれた発展具合と』

『多様性って名の価値観の差だ』

『最低限の全体通してのテーマがないからこうなるのさ』


『この島のテーマこそ多様性では?』


『多様性はテーマの代わりにはなり得ないよ』

『テーマを多様性にしてしまえば噛み合わず、周りの価値観すらも犯すほどに、それはただの毒にしかならないもはやヘドロだ』

『だからこうやって戦争(けんか)になる』


『戦争をしなくて良いように作ったのに、その中で戦争めいたことをしてしまうなんて……』

『やるせません』


僕はその言葉の意味を情報のいくつかを欠けながらも何となく理解する。


『多様性が毒となるのならば』

『何故、価値観を統一するように教育しないのですか?』


『………自主性を奪い、自身の意見を述べれなくする』

『それは教育ではない、洗脳だよ』


『………そもそも、何故彼らはテロを起こしてまで自分の意見を他人に押し付けるのでしょうか?』


『この世の中には他人が自分の聞いたこともないような知識を、自分の感じたことない経験を、自分の触れたことのないような感性を持っているっていうことをまったく理解できない人間ってのは一定数いるんだよ』

『そしてそういう奴らはな、こぞって自分と同じ価値感じゃないと可愛そうとか、狂ってるとか勝手に思い哀れみ出すのさ』

『………まぁ、押し付ける方に関してはそういう人たちに限られた話ではないかもな、例えばお前だって他人に自分の好きな作品を勧めたことがあるだろ?』


『こんなにも強引じゃありません!』


避難経路の確保を行いながらされる会話は

少し難しくありながらも

何故か僕の体を傷ませる。


(自分の思想………)


考えたことも無かった

だってそうだろう

汚れた思想ってのは相手の思想で

尊き思想ってのは主の思想だ。

それにいくら従おうと

それは僕の思想じゃない。


(…………)


だって知らないんだもの

僕は、自分に与えられた部屋以外

何も、直接見たことが無い

誰の顔も見たことが無い。


僕は知らないというかことを

まさに知らなかったんだ。


僕はゆっくりと自分の頭巾を外す


それは禁じられた行為


自分が汚れ

天使ではいられなくと固く禁じられた行為


………それでも

僕は直接この目で違う思想って奴を見てみたい。


誰にも見せられないからと

自分でざっくばらんに切り裂いた髪が揺れる。

手でしか感じたことの無かった風を

直接顔いっぱいに受ける。


「なんだ、重くなんてないじゃないか」

「楽園のように、いい風が吹く」


香りがする

楽園でかいだ草の匂いと

感じたことのない匂い


頭巾越しの狭い視野では見えなかったが

どうやら近くに木々や草原があるらしい。


「……これが自分の知らない感覚」


………汚れ、てるのかな今の僕は

敵の思想に影響受けてるってことは

侵されてるってことなのかな?


……それでも僕は、共感した。

してしまったんだ


僕は懐から爪を取り出す


僕にはもう、それがただの金属の塊にしか見えない。


僕らは………きっとすごい存在なんかじゃなかったんだ。


同士はあとどれほど残っているのだろう?


僕らはきっとすごい存在の持つ小さな駒に過ぎなかったんだろう。


きっと僕は、人間だ。

………いや、他人に使われるしかできない僕が人間として扱ってもらおうなんて分不相応だな。


僕は爆弾


僕は……無意味だ


……………はぁ、潔く死ぬか


ありがとう、名前も知らない人

僕は天使としてじゃない死に方を選ぼうと思います。


『………じゃあ、これからもこんなことが続くんですか?思想のぶつかり合いで人が死ぬ、こんなことが』

『それに対して俺たちは無力なんでしょうか?』


『まさか、そんなことはない』

『これは人の死を減らす素晴らしい職だ』

『無論、全ては救えず死なせるかもしれない』

『俺たちだって死ぬかもしれない』

『仲間だって死なせてしまうかもしれない』

『なら、人を死なせた人間はこれ以上人を死なせないようにするための機械となるのさ、真面目にな』

『そういう道もあるのだよ、そこの少年』


…………僕のこと?


立ち止まり振り返ると

道具を地面に置き

黒く顔を覆っていたものを脱ぎ

僕を見つめる彼がいた。


「頭巾を取ってから吹っ切れた顔をしている」

「罪を……いや、君に罪があるのかはわからないか」

「とりあえず、死なない道を選んでみる気はないか?」


「…………無理です、僕は人間じゃないんで」


「む、そうなのか?」

「もしかしてアンドロイドか?」

「………まぁ、何でもいいさ」

「機械なら機械で、別に変われないわけじゃない」


「………こんな無知な奴、壊れた方がいいですよ」


僕は離れようと一歩踏み出す。

しかし男はその一歩よりも大きな一歩で

僕との距離を詰めてくる。


「私はそうは思わん」

「君はこの穴を、あの爆発音をどう思う」


「………わかりません」

「少なくとも、もう素晴らしいとは思えません」


「そうだとも、いかなる思想があろうとああゆう力は良くない」

「言葉以上に取り返しがつかなくなる」


僕は登る黒煙を見る。

汚れた色と嫌った者達が生み出した色

結局僕を育てた奴らも汚れていた。


「僕には、責任がある」


僕は去る足を止める。


「あるんだろう、あるに違いない」

「あるんだろうか」


自分の思考のどれが正常でどれが異常なのか

わからない、わかれない、

頭が痛い

視界が歪む

僕の世界を正すせいで

僕の世界が歪んでいく。

足に力が入らない

もしかしたら死ぬのかもしれない

そう思ったら

下だけは見たくなくて

無理やり天を見るように僕は地面に大の字で倒れる。

初めての感触、小石を何かで固めたような感触

今際では灰で黒んだ白衣すらも尊く思える。


僕は社を見上げる。


「…………!」


突如、脈絡もなく社が爆ぜる、

彼らの同胞と主が戦ってるんだろうか?

………まぁ、もう、どうでもいいけど


壁が崩れている

結局は作り物、そんな神々しいものじゃない。


しかし降り注ぐ瓦礫に

叫びのように隊員が報告する。


『………隊長、下にまだ民間人が!』


「なんでだ!?」


『爆撃のとき、あの近くが一番安全だからって逃げた人が!』


「間に合わん……っ!」


降り注ぐ瓦礫


みな、下を見る。


ただ上を見ていた

僕を除いて。



「あれは……」


瓦礫の上

遥か高き上空


大きな白い4枚の翼

頭上の輪

白い衣

白い面

その威光


翼から放たれた白い光


全ての瓦礫が白い砂となって散る。


「何が起こった!?」


『わかりません、急に瓦礫が砂に!』





ははっ、はははははははは!!


あれが天使、

あれが本物か!


ざまぁない

散々天使を語った奴が本物に害されてやんの!

あぁ、やっぱり僕は天使なんかじゃない。


人の命令を疑わず従う

せいぜい機械人形だ。


ならばせいぜい壊れるまで

彼らに使ってもらうこととしよう。

《ヘブンズアンサーシリーズ》

とある教団が作成した自爆テロ実行用改造人間の総称、通称としてHAと呼ばれその全ては番号にて識別される。

作成された数は合計236体、

わかっているだけでも筋肉などの増強による肉体強化、脳改造、完全適合するほど同じに整形された顔、性別を示すあらゆるものの処理、まったく同じ身長、声に成長するなどかなりの改造が施されていることが調べでわかっている。

彼らは脳への処置と教育により高い学習能力と熱心な信仰を植え付けられており、自主性もある程度持ち合わせているが著しく自己決定関連の能力が低く、他人の命令に身を委ねる傾向がある。

なお、肉体改造は自爆テロを行ったあとも毎度生還しているという奇跡を信者に対して演出するためのものである。

なお、複数回のテロを行うためI.P.による遺伝子センサーなどの網に引っかからないように全員はクローンではなくまったく別の遺伝子を持っている。

その遺伝子の殆どは信者のものであり

人工授精の形跡も見られないことから

信者間で生じた受精卵を回収し改造を施していたと思われる。

なお改造技術はそこまで高くないらしく

身長などがほかより高くなったりした場合

バグとして廃棄されていたことがわかっている。

だがそれに対して成長促進技術だけは異常に高かったらしく

外見15歳ほどの彼らは精神年齢も同等、

しかし実際の年齢は3〜5歳ほどとわかっており

その強引な成長により寿命は10年ほどと推定されている。

なおこれは10年ほどのコールドスリープによる肉体の休眠と、中央の技術によるメンテナンスによって改善、少なくとも50年は生きられる肉体となっている。

本来あと一年ほど教育を行ってからテロに動員される予定だったが教祖が「付与したものを爆弾に変える奇跡」を宿し大規模テロを行ったことでその力を狩りに現れた騎士の怪物と細胞の怪物、未知の天使によって社は甚大な被害を受け、その混乱に乗じてI.P.によってテロ組織鎮圧として襲撃を受けたため、一種の空爆として社防衛に使われた。

彼らはパラシュートこそ付けていたがその使用方法に関しては一切の教育を受けてなかったとされている。


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