番外 その7
「……これは、空気があるのか?」
試しに喫茶店で貰って入れっぱだったマッチを1本吸ってみる
炎は消えずそしていつものように赤く揺れている。
「うん、やっぱり空気があるな」
「AIには必要ないはず、わざわざ積んだのか……?」
「まさか黒幕は人間……?」
「そっちのほうが面倒といえば面倒か」
足板をパージし歩きだす。
「うわ、やっぱり、内装までしっかり作られてる」
「本当に完成間近だったんだな……」
客席両の壁の装飾は見事完成している。
華やかな壁紙が貼られ
ライトも無骨ではないものとなっている。
シートも全てではないが搬入設置されている。
「ここまで来たなら導入してしまえばいいのに」
「最新じゃないと気がすまないのがこの島の良くないところなんだ、吐いて捨てやがって」
「…………あ?」
(なんかいる)
「あれは……」
向こうの車両から現れたのは
銀行などでたまに見かけたガードロボット
しかも2体
「いや、ちょっと違うか?」
「まぁ、どちらでもいいか」
ダミー熱源弾を投擲する
これにより人感センサーを数秒誤魔化せる。
(こいつらは人間とは違う)
(位置がわからないならと闇雲な攻撃はしない)
ムチのような剣が一体の首に絡みつき
力任せに引くことでもう一体へと倒れさせる。
「踏んで越えてやる!」
飛び出したチェイン
それを
「銃撃!?」
「リミッターが外されているのか!」
シート裏に転がり込む。
「外せないはずだろ……!?」
「まさか側だけ同じということか?」
「リミッターの無いロボットなんて……」
「人が作るわけないだろ!」
一体にへばり付き、絡みつく、蛇のような連接剣が
各部関節などに隠された弱い部分を同時に切り裂く。
「……次」
細い針を突き刺し内部に電圧を浴びせて機能を強制停止させる。
「………む、この構造」
「非電導体を噛ましていない」
「なら……」
「時間がないんだ!」
「この先の直線、横着させてもらう!」
自身のアームに隠したワイヤーと
連接剣のワイヤーを繋ぎ
レールガンの要領でまっすぐ
矢のように
槍のように
放つ
車両を繋ぐドアのガラスを貫き
8両、計200m貫ききる
「痺れて壊れろ!!」
電撃を放とうとした瞬間
『よせっ!!』
大きく響く声がスピーカーから聞こえてくる。
「なに……?」
剣を引き戻し天井のスピーカーを見つめる。
『よせ、その方法だけは、やめてもらいたい』
「………大人しく一体一体壊していけと?」
『これは君のためでもある』
『だが君の意見もわかる』
『………そうだな、では途中のロボット全員の電源を落とそう、それでどうだ?』
「本当に?」
『………私は嘘をつけません』
「それこそ嘘っぽい話だけど……」
「わかった、それでいこう」
僕は刀をおろし、
鞘に収めないまま進む。
「………お」
シートに座る同型のロボットを刀で突く。
「本当に動いてないな……」
『やめてくれないか、動いていないものをむやみに傷つけるのは』
「………こいつらの装甲ならこの程度で傷はつかないでしょ」
『君は自分より強い相手だからって寝ているアスリートに殴りかかるのかい?』
「必要なら」
『む……そういうものなのか?』
「………というか、あんたはどうやって僕の声を拾ってるんだ?」
『警護ロボットに貼り付けたマイクから拾っている』
『各部屋2人配置しているからどの部屋でもコミュニケーション可能だ』
「じゃあいろいろ話しても?」
『いいだろう、時間も無いしな』
「君の目的は?」
『それは君の口から正解が出るまでは答えかねるね』
「む……う〜ん」
『ハレーテイルを攻めたということは何か解があるんだろう?』
「みんなは廃棄場のロボット達を運び出そうとしているって予想だったけど……」
『けど?』
『君はそう思わないってことかな?』
「……まぁ」
『それは何故?』
「いや、なんというかシートとか無駄な内装外してないのがちょっと気になって」
「量を運び出せるようには見えないな……」
「そして……」
「ねぇ、なぁにこれ」
それは複数の座席に設置された黒い箱
ライト、つきそうな穴がある。
最初の乗客車両にはなかったけど、
それ以外のここまでの4両ほとんどの席に置かれていた。
「もしかして……爆弾?」
『………』
「違和感はあったんだ」
「以前から映像をダミーにしてたのに大事が起きてから一斉に運び出す必要ってあるのかな?」
「毎日少しずつ運び出せばいいじゃん」
「車両型の同士もいたわけだし」
「あと放電を使わせなかったのも気になるな」
「引火するの、怖かった?」
『お見事』
早太の言葉に称賛の声が聞こえる。
『して、僕の目的は?』
「廃棄場の破壊」
『大正解!』
ビクッ!?
ファンファーレとクラッカーが鳴る
クラッカーはロボットの頭の帽子が爆ぜることでカラフルな紙テープがとぶ。
「びっくりするわ!?」
『え、まじ?』
『ごめんごめん、讃えたかったんだけどな』
「爆弾って言った後に破裂音とか人の心無いのか!?」
『ノーコメント』
「………あ、やっぱり君は人工知能なんだ」
『その答えは……どうぞ次の扉を』
後ろから数えて10両目
正真正銘先頭車両
モニターには暗視化された映像が映し出され、
無人でありながら
大量のシステムや操縦管、ダイヤルが誰の手も触れること無く動いている。
いや、無人ではない
まぁ、人ではない
しかしそこには奴がいる。
クワガタのような角を持ち
悪役ロボのような大きな単眼が光る。
肩や腕、腰、後頭部なんかからのびたケーブルが
取り付くように数多のパネルに貼り付いている。
いかにもハッキングしてますと言いたげに
黒いボディの隙間が紅く光る。
武者のようで虫のような、
というかシステムに取り付くその様は
まるで
「脳髄に取り付く寄生虫のようだな」
「てっきりパソコンの虫かと思ってたけど」
思わず感想を漏らしてしまう
これ以上無く正直に、
第一印象を
『失礼だな』
『これはわざわざ君のような人と対峙するために廃棄場の同胞を継ぎ合わせて作った義体だ』
『もはや現在はこれが本体だがね……』
その言葉にあの声が答える
今度は天井からでなく、
眼の前から。
『僕はハレーテイル全操作権限代理アトモスフィア』
『この大反乱の首謀者さ』
コードがパネルから離れ
敵は立ち上がる
『代表者よ、君にはさっさと帰ってもらう』
バイザーが単眼を隠し
2つの光が浮かび上がり
2本の剣を構える。
『いざ、勝負!』




