番外 その3
「………どういうことだ?」
怒気を孕んだ声が受話器へと繋がる。
各暗部へと繋がる特殊ライン、
AIなど付け入る隙を与えないように精錬されたその通信手段は一般市街用のAIなどには一切の介入を許さない。
『何度も言わせるな』
『私の全ては対特殊生物用のものだ、他のことに使用するなど許されない』
『ましてや市民を直接保護だと?正直そんなのは暗部から1番遠い仕事だ』
『とのことだ、これに私も同意した』
『故に貴方がたえの協力は行わない』
「っ、相変わらずか!」
「もう、頼まん!そこで椅子に縛られていろ!」
局長が受話器を本体に叩きつけ切断する、
「無理だったぽいですね」
「みたいだな」
普段見せない様子に驚きながらも早太と正児は言葉を交わす。
尻の重く頭の硬い人間にはだいぶ呆れ気味だ。
「まぁ、暗部は動けないってのもわかれない話じゃないですしね……」
「というかそもそも、僕ら動いていいんですか?」
「暗部の奴らには全員に表の顔用にI.P.としての席が用意されている、なんらかの大事が起こったときに全人員がすぐに問題に対処し即刻鎮圧するためだ」
「へ〜……え、じゃあ僕も?」
「ああ、お前にもある、お前は知らないうちに母親の職を継いでいたわけだ」
「何で教えてくれなかったんです?」
「契約書に書いてあっただろう、読んでないのか?」
「ありましたっけ?契約後はすぐシュレッター送りだったんで覚えきれてないです」
「まぁ、手帳だ何だも乱用防止の為局長が一括管理しているからな、知らないのも無理はない」
「それで局長、今回の事件の正体」
「もうわかってるんですよね?」
完全武装して制圧に出ようとして首根っこ捕まれたことで多少苛立った様子ながらも冷静に局長に問う。
集う一同、
実働部隊と僕ら、
「………あぁ、今回の人工知能搭載型ロボット集団暴走事件の犯人は怪物ではない」
その全員に対して局長は断言する。
「……となると、あれですか、フィクションでありがちな」
1人手を上げて皆の予感を代弁する。
ロボットの暴走、
しかもこの大規模かつ範囲、
テロとは考えにくい……というか、
人の手によるものとは考えにくい。
ならば答えはほぼほぼ1つと言っていい。
「そう、今回の件はAIそのものによる反乱、及びテロ行為だ」
「いやにあっさりと言いますね」
「予感はあったからな」
「なら、対象すべきだったのでは?」
「まさか参加するAIがここまで多いとは思わなかった」
「何でそう他人事なんですか……?」
一同若干の差異あれどドン引きする。
「………しかし、予感ってのは何です?」
「うむ、今現在民間で利用されているAI用ネットワーク……まぁ、簡単に言うとAI同士情報を交換し合いシステムを最適化するための設備なんだがね」
「そこに妙な一文が一日一回投稿されていた」
「妙な一文?」
「%c071101116117112111108100111110101」
「………なんて?」
「文字に起こした物がこれだ」
スクリーンに表示されたものを
「暗号か?」
「?」
口で言われても一切ピンと来ない一節。
「それは何なんです?」
「………まぁ、暗号のようなものだ」
「わかるものはいるかね?」
その言葉に開発班から多数手が上がる。
「………早太君、わかる?」
「読み方はわかるけど、覚えてない」
「どういうこと?」
「これは……」
「C言語ですね」
「16進法でないことには違和感を感じますが」
「AIならば解ける者も多いでしょうね」
「読み方は」
「%c.071.101.116.117.112.111.108.100.111.110.101」
「訳すと」
「Get up old one」
「古きものよ立ち上がれ」
「な?こんなんで本当に立ち上がって来るとは思わないだろ、普通」
疲れきった顔でため息をつく局長に一同苦い笑いを浮かべる。
「まぁ、実際はフィルターをすり抜けて入ってきた変な思考を持つAIが多くのAIの思考とリンクしたことによる影響って面がつよいんだろうとよそくされているがな」
「…………ねぇ、盤梨」
「なんだ、私語は慎め」
マルキメイラにこづかれた盤梨はめんどくさそうに注意する。
しかし彼女はそれに構わず質問する。
「フィルターって?」
「……人間の悪意によって何らかの有害なプログラムを仕込まれたAIが共有ネットワークに入り込まないようにするためのプログラムだ」
「どんくらい確実なの?」
「………かなり精度はいいはずだ」
「AIの自発的進化などにはまるで無力だけどね!」
「自発的進化……って、どういうことです」
「忠ニさん」
「どういうこと、って聞かれると難しいな」
「ネットワーク内でいろいろ学習したAIがある日『人類って愚かじゃね?滅ぼさないと』って結論を導き出してしまったりすること何だけど……」
「ニンゲンがわざとキョウイクしないカギりそうそうそんなケツロンにはイきツかないはずなんだがネ」
「この場合、犯人はいないということでいいんでしょうか班長」
それを聞いたステラの問に
「いいや、そうとも限らないはずだよ」
とコラニは答える。
「例えば教え込みたい思想をフィルターの穴を通れるほどの細かさまで分割しその一つ一つを違うAIに教育しておくんだ」
「そうすればAIはネットワーク内で情報を共有するから」
「なるほど、共有することで集まったピースをはめ込んでくことでジグゾーパズルのように1つの絵を作り出せるんですね」
「しかし手間が多すぎる割に今回の事件ではリターンが小さすぎる」
「1度に大量のAIを接続したら不審だからな」
「何年もかけて数千種類のAIを数十万台接続しなきゃいけねぇんだ、考えたくもねぇ重労働だ」
「雑に自爆させてないあたりテロとも思えん」
「AIの反乱……改めて映画のような話ですね」
班長達のリレーのような会話全てを耳で受け止めた早太は独り言のように呟き、
多くの局員が同意と口に出さずとも頷いて示す。
「でもよ、反乱って何が目的なんだ?」
「人間を絶滅させることか?」
「この島の中にしかネットワークは無い」
「絶滅はほぼほぼ不可能だろ……」
「外との更新は一日一回、シン・クロスカイタワーからしかできねぇし……」
「それだって衛星落としちまえばできなくなる」
「ん〜」
「暴走しているAIが旧型ばかりなのが気になるね」
「………なるほど、たしかに最新型の暴走は無い」
「ではやはりハッキング?」
「にしては新しすぎるだろ、この芝刈り機なんて発売は最新型のたった2ヶ月後前だ」
「性能は上がってるがプロテクトシステムが上がっているとは思えねぇ」
「む、たしかに」
「となると?」
「ハンランのリユウがそこにあるとカンガえるべきだろうネ」
「つまり」
「捨てられた恨み?」
「まだ捨てられてねぇんだ」
「捨てられる恐怖じゃね?」
「なるほど……」
「………だが、それで?」
「結局目的はなんだ?」
「……………わかんないね」
「ああ、よくわからん」
「そもそも私達って共感性を著しく欠いているし」
「こういうのは解析班の役目じゃないのかな?」
「……無茶を言わないでくれ、ぼくもオールドキロもデータに基づく解析しかできないよ」
「根本は君たちと同じさ」
「期待するなら実働部隊と特別雇用組だろう」
「無能な議会のキャッチボールダンス討論だな」
「そうですか?」
「割と有益だと思いますけど」
「なんかわかったのか早太」
「え……いや、まだはっきりとはしませんけど」
「確定してない情報を共有するのは……」
「それもそうだ」
「データを元にした疑似感情を持つ相手の対策をとるなら感情を一切含まない純粋なデータで話し合うべきだ」
「あ、疑似感情なんですか」
「人間に近づけることも研究の目的だからね」
「まぁ皆最初はHA-08という存在がAIだって言っても信じたぐらいだもんね」
「実際家にいるのも似たようなもんだし」
「話は纏ったな」
だんまりして聞き耳立てていた局長の口が開く
「では進言通り、データを洗うぞ」
「行動の共通点を見つけて可能な限り絞れ」
「全員に対しこれを最優先任務とし」
「即時終結を目指す」
「以上、異論あるものは」
「………よし、ではかかれ!」
「「「は!!」」」
神織市内で「逮捕」の権限はI.P.にしか本来ありません。
そのため他の暗部の行動は「拘束」にすぎません。




