第12話 その3
「なぁ、お前の親について聞きたいことがあるんだが」
本部に顔を出した早太に正児は切り出した。
なおアルドナープは陣内とクリスマスプレゼントを買いに行っているため不在、
「またですか」
呆れたような彼の顔に正児は驚く。
「またって何だ、神座市にでも聞かれたか?」
「いえ、ちょっと学校で」
「それで、何で今更そんなこと聞くんですか?」
「報告書づくりだ」
「それこそなんで今更」
「いいから、いいから」
「家とかでどんな人だったのかなって思ってな」
「う〜ん……改めて聞かれても困るんですよね」
「端的に言えば家庭愛好家?」
「母も僕も溺愛してる人です、外の顔はあまり知りませんが……別段悪いことをしでかしたりはしてないと思いますが、オカルト雑誌のライターだからですかね?なんか都市伝説じみた噂話は多い人ですよ」
「まぁ、取材のために平気で無法地区にだって潜入)るような人ですからね、クラスじゃ本当はヤクザ何じゃないかって噂になったぐらいです」
呆れたように彼は肩をすくめる。
「父親の評価とは思えないな」
正児は苦笑いを浮かべながら質問する。
「ただ甘やかすような人なのか?」
それに対して彼は少し斜め上を見つめて少し考えてから、
「いいえ、間違えたら叱ってくれる」
「困ってたらおちょくりながらも話を聞いてくれる」
「ピンチのときはいつもどこからともなく現れる…」
「感謝はしてます、10数年1人で僕を育ててくれたわけだし……」
「まぁ、自分の夢を捨ててしまうほど僕を第一に考えすぎていることは偶にうざいなと思うことはありますけど……まぁ、尊敬はしてます」
「反抗期か?」
「そこまでじゃ、ありません」
「ふむ……」
「よし、オーケーありがとな」
「………?」
「母さんのことはいいんですか?」
立ち上がり去ろうとする正児の背中に彼は問う。
「……あ〜、うん、そうだな、聞いとかないとな」
「母親は5歳のとき亡くなったと聞いたが覚えているか?」
「顔は……どうでしょう、もういろんな頃の記憶がごちゃごちゃでどれが最後の頃の顔かもわかりません」
「………でも、母の生き方は良く覚えています」
「最期まで、変わらなかったから」
「生き方?」
「僕にとってあの人こそが正義の味方でした」
「それはI.P.だったからか?」
「どうでしょうね」
「そういう職業だから……そういうのもあったかもしれません」
「……でも、彼女は生来そういう人だったそうです」
「どんな危険な場所でも助けたいからと自ら飛び込むのでそれを防いだり手伝ったり、手伝ったりする父は5度は死にかけたと笑ってました」
彼はそう言って肩をすくめる。
「すごい家系だな……いや、保存されていたお前の母親が解決した事件の資料は目を通してはいたが無茶な事例がいくつもあった、まさに命がけってのもな」
「ついでに言うとお前の父親の入院時期がちょくちょく事件と重なっている……」
「まぁ、父親の方はお前が生まれてからはなりを潜めたようだが……」
興味深げに正児は頷き、そして最後に
「なるほど、お前の正義感は親譲りだったんだな」
何気ない言葉を正児が告げた。
ピキッ
その瞬間目に見えて青年の笑みが凍る、
「………な、何か気に触ったか?」
あまりにもあからさまだったので
恐る恐る正児が問うと早太は緊張したような口調で
「い、いえ、なんかまるで父が島の外で正義感を暴走させてなんかやらかしたかのような口調だったので」
そう答えた。
「ん?あ!いや、そういうわけじゃねぇよ?」
「父親の動向はこっちにも逐一報告が来るようになっている、今のところは何かやらかしたという話は聞いてない」
それを聞いてほっ、と彼はため息をつく。
よほど心配だったのだろう。
(こいつ、父親を守るためになら何でもやってやる!ってタイプじゃねぇよな……?)
そのあまりにあからさまだった態度を思い出しながら何もなく済んでよかったと正児はため息をつく。
「お前の報告書を作るにあたって親の情報をもっと詳細に書かなきゃならなかったから聞いただけだ、他意は無い」
(本当はあるが……今は言わないほうがいいな)
「それで、僕は今日そのために呼ばれたんですか?」
早太の問に正児は首を横にふる。
「いいや、実はお前の意見を聞きたくてな」
「意見?」
「お前の使える武器のリーチをなんとかして伸ばせないかっていう話が出ている」
「リーチ、ですか」
「棍棒とか、槍とかを使おうってことですか?」
「いや、そう単純に長さを伸ばすという話ではないんだが……まぁ、お前は銃を使えないし、そういう形になるかもな」
「となると、何か形状にリクエストはあるか?」
「そうですね……連接剣とか?」
数秒考えて彼は案を口に出す。
「連接剣?連接剣って何だ?」
しかし正児にはピンと来てないらしい。
「知りません?」
「こう剣何だけど振ると鞭になって蛇牙のように刺さり、蠍の尾ように貫くっていう剣なんですけど……」
「剣が鞭……連接、蛇……」
「蛇腹剣?………あぁ、ガリアンソードか」
「ガリアンソード?なんですかそれ」
「知らないのか?」
「じゃあお前のイメージは何なんだよ」
「そりゃあ、フェイスレスの剣ですよ」
皆さんご存知という口調で青年は言う。
しかし、
「白金?」
「あいつ、剣なんか使ってたか?」
「?」
「?」
互いフィクション好みの差か話が噛み合わない。
「境界線の女王の騎士、顔亡き騎士の剣ですよ」
「知らねぇな、何かのアニメのキャラか?」
「作品はアニメ化してますけどそのキャラは出てませんね」
「漫画には?」
「出てませんね」
「じゃあ、俺知らねぇわ」
「そうですか」
この人は小説を読まないらしい。
「まぁ、何にせよ元になる画像があるならやりやすい」
彼はパソコンで画像を検索し始める。
「フェイスレス、連接剣……っと」
「う〜ん、ヒット無しか」
「あぁ、出ないんですよねちょっと貸してください」
「こっちの名前だと……無理か」
「じゃあ作品名で………うん、これです」
「女の子だな」
「普通に顔もあるし、可愛らしい」
「そこはいろいろネタバレになるんでスルーして」
「あ、ほら、持ってるでしょ」
「ん?……あぁ、これか?見切れているな……」
「ふむ……まぁ、俺のイメージとそう相違は無いな」
「よし、頼んでみよう」
「おい、開発班、どこでもいいから送った画像の剣を再現できるかとそれにどれくらいかかるか教えてくれ」
パソコンでボイスを送り、
画像を全班に送信する。
するとものの数秒で
「お、返事が来たな……」
「全班制作自体は可能か……しかもそんな時間もかかんねぇな、早くて1時間、遅くても4時間か」
「早太、今日時間は大丈夫か?できたらお前に実際に持って試してみて欲しいんだが」
「…………えっと、今何時ですか?」
「今か?今は……5時41分だな」
「……あぁ、すいません。今日は6時から予定があって」
「そうか?それならまた今度時間があるときに頼む」
「はい、じゃあ、今日はこれで」
「おう、気をつけて帰れよ」
「失礼します」
「………ふぅ」
明かりの点かない自宅、
まだ自分しかいない静かな自宅。
僕は荷物を無造作にベットに放りだして自分も倒れ込む。
時計の告げる時刻5時58分
「逃げちゃった………な……」
「明日こそは、正直に……」
カーテンのしまった暗い部屋の中で
自分への嫌悪感を抱きながら
彼はまどろみの中へと落ちていった。
初期を読み返したら、
アルドナープ(仕事モード)がイメージ通り元気目な敬語だったので少し驚きました。
なんか最近冷徹な気がするんですよね……
あと、クイーン・ハロウィンは漢字表記がありません僕がデタラメにつけたものです。
調べてもなにかヒットするかわかりませんが
なんのことについて話してるか知りたいときはカタカナ検索をオススメします。




